第1話 転生と決意
失っていた意識が戻り、俺は知らない天井を見つめていた。
(どこだ?見たことない天井だな?)
頭の中にある記憶の引き出しを片っ端から開けていったが、やはり知らない天井だ。
(どういう状況だ?何故知らない天井を見つめている?)
記憶を遡り、この状況下に置かれている原因を探る。
そして、その答えはいとも簡単に脳裏に浮かぶ。
(そうか、俺は龍に腕を⋯)
原因解明の結果、出来れば思い出したくなかった記憶を掘り起こしたせいで気分が悪くなる。
果敢にも無謀に挑んだ龍に傷を与えるどころか腕を持っていかれる失態。
龍の気まぐれで見逃され、通りすがりの同業に助けられたとかが関の山だろう。
(てことは、俺の左腕はもう⋯⋯⋯え?)
ある、あるのだ。喰われたはずの左腕が。
だが、1つ気になるのがそのサイズ。
赤子の手のように小さいのだ。
(なんでこんなに小さいんだ?⋯⋯!まさか右腕も!?)
予想通り小さかった。大の大人の腕とは到底思えない程小さかった。
(なんで腕が小さくなってるんだ?てか、結局ここはどこなんだ??)
訳の分からない脳が必死に答えを求めるが、考えれば考えるほど答えから遠のいていく気がする。
そして、その答えは1人の女性の手によって導かれる。
「あら。起きたの?よしよし。よく寝ましたねー」
そう言うとその女性は俺のことを抱き抱えてしまった。
(もしかして⋯⋯転生!?)
──────
転生から約半年が経った。
未だに赤子の体躯にはなれないが、それでもいくつかわかったことがある。
まず、俺の転生先について。
何の因果か分からないがどうやら世界自体は前世と同じようだ。
言語を学び直す必要が無いのは非常に有難いな。
だが、前世の国と今世の国は違う。
前世で暮らしていた国はカドルマ王国という国で、小国ながらそれなりに産業の発達している国だ。
対する今世の国、ザルバード皇国は大陸一の土地と人口を誇り、まさに『世界の中心』と言われるにふさわしい大国だ。
まあ、いくら大国といっても端っこの小さな村はただの片田舎だがな。
話は変わり、次は俺の両親について
母親の名前はゼレーナ・ナーヴァス。赤色のロングヘアーと瞳が特徴の女性。
女性にしては比較的高い身長で、スレンダーな印象を与えてくれる。
俺の意識が覚醒して1番最初に出会った女性でもある。
父親の名前はハイゼン・ナーヴァス。金色の髪と瞳が特徴の男性。
父親の方も身長が高い上に、細マッチョのイケメンだ。
多分大モテだっただろうな。
「おっ、どうしたバルト?そんなに父ちゃんのこと見つめて。そういえば、お前もようやくハイハイができるようになったな」
噂をすればなんとやら。父親ことハイゼンが話しかけてきた。
あと、1つ補足しておくと『バルト』は転生後の俺の名前。
つまり本名は『バルト・ナーヴァス』ということだ。
「あうー(父ちゃんのバーカ)」
「そうか、そうか。そんなに父ちゃんのことが好きか。ほらおいで抱っこしてあげよう」
と、このように俺の声帯が成長途中のせいかまともに喋れないので、なんて言っても親が都合よく解釈してくれるのだ。
「あら、あなた。こんなところにいたのね。鍛錬は終わったの?」
「あぁ、一段落したから可愛い息子と遊んでるんだよ。ほら、高いー高いー」
今ハイゼンに話しかけたのが母親のゼレーナやっぱり外見が美しい人は声も美しいな。
てか、やめろハイゼン。
そんな勢いつけるとホントに他界ー他界ーになるぞ。
「バルトも大きくなったわね。まさかオッドアイで産まれてくるとは思ってなかったけど」
そうそう。俺、実はオッドアイなんだ。
左目が赤色で右目が金色。
それぞれハイゼンとぜレーナの目の色を受け継いでいる。
ちなみに髪色は赤らしい。
流石にそこまで半々にはならないようだ。
──────
転生から約2年たった。
簡単な言葉なら喋れるようになり、少しだけ歩けるようになった。
てことで、家の中を冒険してみた。
結論から言うとまあ普通の家だ。
貧しくもなく、金持ちでもない。
でも、これくらいの家庭が1番幸せ説あるからな。 逆に良かったかも。
「バルトー。こっちにおいでー」
ゼレーナに呼ばれ、拙い歩き方で声の方へ向かう。
「何、ママ?」
喋れるようになったとはいえ、まだ声帯が成長途中なため2語ぐらいしか喋れない。
「見てごらん。お父さんが剣を振っているわよ」
そう言ってゼレーナは俺を抱き抱えて窓から外の景色を見せてくれた。
「フン!フン!」
ゼレーナが言った通りハイゼンが剣の素振りをしている。
ハイゼンはこの辺りでは数少ない現役冒険者で、ギルドからの依頼を多く請け負う必要があるため家を空けている日が多いが、どうやら今日は休みらしい。
見ている感じ、太刀筋はいいが少し力みすぎなようにも見えるな。
力が強いのはいいことだが、常に全力で振っていたら体力が持たなくなる。だから場面に合わせ力加減を変えるべきだが⋯
(龍に腕食われた俺が言える立場でもないか)
──────
早いことに転生してから5年たった。
体もみるみる大きくなり、今では立派な男の子といったところだ。
相変わらずハイゼンは毎日鍛錬に明け暮れ、ぜレーナは家事を頑張っている。
いいお嫁さんを娶ったなハイゼン。
俺は独身だったがな。
そんな自虐はさておき、この歳になると、ハイゼンが剣術を教えてくるようになってきた。
指南を始めたての頃は木剣を素振りするだけだったが、俺がなんでもできると気づいたらしく、終いには───
「お前、前世も剣を振ってたんじゃないか?才能あるぞ」
(すげー、当たってる)
珍しくハイゼンの感が当たった瞬間である。
──────
剣の指南が始まってから約半年が経った。
今日も今日とて剣の指南があったのだが、指南を終えて自室に戻った後、ふと俺の頭にひとつの疑問よぎった。
(俺はこのまま剣士の道を歩むべきなのか⋯?)
前世では届くことのなかった名、『剣聖』。
その名を得るために俺は転生したのだと勝手に考えていた。
(でも、また『剣聖』を目指すということは前世とほぼ同じような人生を送るってことだろ?それってどうなんだ?)
一度抱いた夢を実現させるのもいいが、全く新しい人生だからこそできる挑戦もある。
てことで、前世では絶対に歩むことのなかった道をいろいろ考えてみた。
(戦士は肉体的に無理だろうし、アーチャーは⋯なんか地味だし嫌だ)
こんな調子で長考⋯なんかする訳もなく答えはすぐに浮かんだ。
「よし、決めた!俺、魔術師なろう!」
こうして前世含め約23年間追い続けた夢を捨てて、心機一転新しい道を歩むことを決心した。
前回の後書きで書くつもりが忘れていたのでここで付け加えさせていただきますm(*_ _)m
基本的にこの作品の投稿頻度はまばらです
ですが、なるべく高頻度で投稿していくつもりなのでこまめにチェックしてもらえれば幸いです




