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第13話 限りなく嘘に近い真実

 村へと戻ってきた後、家の玄関横に腕を組みながら立っているバーゼルの姿があった。


「おぉ。お前さんも治療して貰ったのか」

「はい。さっきまでの痛みが嘘のようです」


 実際、治療を受けてから体の調子が良い。

 決闘の疲労や傷はもちろん、日常の疲れも取れた気がする。


「すまんな。治癒魔法を連発するのも大変だったろう」

「いえいえ。私のような底辺の治癒魔法で治って良かったです」


 バーゼルが彼女を労るような声をかけるが、相変わらず彼女は自分を底辺と揶揄し、謙遜的な態度を見せていた。


「お前さんは相変わらず謙遜的だな。リカード魔術学校を卒業しといて底辺な訳あるか」

「は!?リカード!?」


 リカード魔術学校と言えばこの国随一の魔術学校であり、前世で剣にしか興味がなかった俺でも知ってるくらい有名な魔術学校だ。

 毎年多くの志願者がおり、倍率は脅威の10倍越え。

 入学するだけでも魔術師の金の卵と言われ、無事卒業出来れば職に困ることはないと言われている。


(優秀だと思っていたがここまでとは⋯)


 ただ、リカード魔術学校なら先程の治癒魔法のレベルにも納得がいく。

 あの魔術学校は他の魔術学校と違って治癒魔法を専攻する学科があったはずだ。

 恐らく、その学科出身だろう。


「そんなに驚かないで。運良く入学できてそのまま卒業しただけだから」

「いやいや、あの学校は運が良いとかで受かる学校じゃ───」

「お二人さん。お話するのはまた今度にして、バルトは家に戻れ。ハイゼンの奥さんがお前さんを心配しておったぞ」

「母がですか?」

「あぁ。『息子が帰ってこない!』って感嘆しておったわ。今頃ハイゼンが宥めているころだろな」


 それはマズイ。

 一刻も早く戻らなくては。


「じゃあ俺は先に戻ります。バーゼルさんと⋯えっと⋯⋯⋯」

「?⋯そっか!自己紹介してなかったね。私の名前はアトリア・バーネット。今は王国救護兵団の一員ってところかな」

「王国救護兵団!?」

「うん。まだまだ未熟だけどね」


(さも当然のようにえげつない肩書きをポンポン言うな。この人⋯)


 王国救護兵団とは、国内で高度な治癒魔法を扱える魔術師たちが集まる一つの組織のことだ。

 本来、他国との戦争で傷ついた兵士に治療を施すために作られた組織だが、ありがたいことに現在この国は周辺国と友好的な関係のため戦争は行っていない。


 そのため、兵士の治療ではなく王族や貴族を始めとした国内でも位の高い人物の治療であったり、各地に支所を配置することで国民も治療を受けることができる。

 そしてその支所こそがいわゆる診療所ってやつだ。


 ちなみに、俺自身も前世で診療所は何度かお世話になったことがある。

 冒険者という職業上、怪我等は免れないからな。


「何をボサっとしておる。はよ戻らんか」

「⋯あぁ、すみません少し考え事を」


 いかんいかん。早く戻らないといけないのに。


「では改めてバーゼルさんとアトリアさん本日はお世話になりました」

「いえいえ。お構いなく」

「そんなお礼はいいからはよ戻れ」


 各々の返事をしかと受けとり、俺は家の玄関の扉をくぐった。


──────


 扉をくぐってからすぐにリビングに向かってみると言い合いをしているハイゼンとゼレーナがいた。


「あなたが決闘を受けるからバルトが危ない目にあったじゃない!」

「それは謝るよ。だから落ち着いて」


 いや、言い合いって言うより感嘆するゼレーナをハイゼンが落ち着かせようとしてるだけだな。

 バーゼルの言う通りだ。


「ただいま」

「!?」

「!⋯バルト!」


 声をかけてみたらハイゼンが先に気づき、ゼレーナは気づくと同時に俺の元へと駆け寄りそのまま抱擁した。


「良かった。無事で本当に」

「ごめんなさい、心配かけて。俺は大丈夫だから」

「ううん、いいのよ。無事でいてくれたから」


 ゼレーナによる抱擁は治癒魔法を受けた時よりも暖かく、精神的な疲れを取るには十分なものだった。


───バーゼル───


「お前さん、なぜ嘘をついた?」


 自宅への帰り道、隣を歩く女性に疑問を投げかける。


「嘘?なんのことでしょう。私、嘘をついた覚えなんかありませんよ」


 確かに嘘ではなかった。だが、限りなく嘘に近い真実であることに変わりない。


「じゃあ質問を変えよう。なぜ隠した?」

「隠したつもりはありません。ただ打ち明ける必要が無かった。それだけです」

「⋯⋯そうか」


 恐らく嘘は付いていない。本当に言う必要がなかっただけのようだ。


「これが最後。あれを見てどう思う?」

「『あれ』とはバルトくんの魔法のことですか?」

「⋯お前さん、わかって聞いてるだろ」

「確認ですよ。他意はありません」


 会話の調子が狂う。彼女と話す時はいつもそうだ。


「そうですね⋯⋯⋯『最弱の魔法』とまで言われる闇魔法をあのレベルで使えるとなると可能性はあると思います。先生ならより確信に近づくでしょうが、私には可能性の提示が限界です」

「先生ってのは前話していた恩師のことか?」

「えぇ。何年経っても私の師匠はあの人だけですから」


 彼女は尊敬の念と色恋が混じったような表情を見せる。

 彼女と彼女の恩師の関係がどうなっているのかは分からないが、少なくとも好意を寄せているのは目に見えてわかる。


「っと、もう着いたか」


 見慣れた自宅を見上げ、言葉をこぼす。

 話に夢中で気づかなかったが、いつの間にか自宅に帰りついていたようだ。


「じゃあここで解散だな。今回は世話になった」

「ご期待に応えられたようで何よりです。また何かあれば頼ってください」

「あぁ、そうさせてもらうよ。首席卒業の団長さん」

この作品を読んで頂きありがとうございます!!

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