第11話 決闘(下)
バーゼルの宣言が言い放たれた直後、先にハイゼンが仕掛けてきた。
「ハッ!」
10メートル以上の距離を瞬く間に詰め、縦に構えた木剣を振り下ろしてくる。
もちろんそのまま受ける訳にも行かないので体を横にずらして躱す。
ギリギリだが反応できているな。
これならほとんどの攻撃は避けれるだろう。
問題はどうやって勝利条件を達成するかだ。
俺が提示した勝利条件は『相手を気絶させる。
もしくは、相手に敗北を認めさせる』の2つ。
自分から提示しておいてなんだが、正直どちらとも出来ない気がする。
とはいえ、このまま避け続けるだけじゃ勝敗がつかない。
ならば、こっちからも仕掛ける以外に方法は無い。
俺はもう一度木剣を構えハイゼンがいる方へと体を向ける。
どうやらハイゼンも察したようで、こちらを向きながら木剣を構える。
ハイゼンと向き合ってから数秒の沈黙の後、予備動作を最小限に抑えると同時にこの体で出せるほぼ最速で駆け出し剣を振るう。
「ハァッ!」
「甘い!」
「⋯!?」
だが、俺の剣はハイゼンにいとも簡単に流され、そのまま流れるように反撃の一発を食らってしまった。
「⋯クソッ⋯!」
間一髪で急所に当たらないようにしたがそれでもかなりのダメージ。立ち上がるだけでも身体のあちこちが痛む。
「どうした!そんなものか!?」
「まだ⋯まだ!」
多少体に鞭を打つことになるが、動けない訳では無い。
しかし、今出せる最速でも攻撃が防がれてしまっては本当に勝ち目が無くなってくる。
このまま続ければそのうち体がもたなくなり診療所おくり⋯いや、そういえば治癒魔法を専攻している魔術師が来ていたな。
その魔術師に治療されるのか。
(⋯ん?魔術師?⋯⋯そうか!魔法だ!)
決闘に集中しすぎて忘れかけていた。
この決闘では魔法を使える。
俺が唯一まともに扱える魔法『黒影の一閃』
この魔法は前方へと黒い斬撃を出す攻撃魔法。
ある程度射程を犠牲にする代わりにとてつもない威力と切れ味を持っている。
なので人に向かって放つのはあまりよろしくないのだが、上手く威力を調節すれば問題ない⋯はず。
しかし、ここで魔法最大のデメリットが脳裏に浮かんでくる。
(詠唱⋯できるか?)
俺が詠唱を始めればそれを止めるために必ずハイゼンが攻めてくる。
最初のように次の攻撃までのインターバルが長ければ避けるのに問題ないが詠唱を始めてしまえば無数の攻撃が俺を襲うだろう。
そんなハイゼンの猛攻を詠唱を止めることなく躱し続ける作戦はあまり現実的じゃない。
となると答えは一つ。
『黒影の一閃』の詠唱をできるだけ省略した状態で威力の調整をするしかない。
詠唱を省略できれば魔法を発動するまでの時間が短くなり、その分ハイゼンの攻撃を躱し続ける時間が減らせる。
そして、威力調整をすれば治癒魔術で治せるギリギリの傷を与えることも出来る。
と、言うだけなら誰でもできる。
実際、この2つを同時進行するのは簡単な事じゃない。
威力調整するだけでも難しいのに、それに詠唱の省略も加われば難易度は数倍に跳ね上がる。
(それでも⋯やるしかない!)
夢を叶えるためにはそれ相応の覚悟と挑戦が必要だ。
失敗を恐れて挑戦せずに終わるくらいなら失敗を前提としてでも挑戦するべきだ。
俺は覚悟を決め、ハイゼン以外の存在を意識から除外する。
そして、幾度も唱えた魔法文を省略して詠唱する。
「漆黒の───」
「!⋯させるか!」
ハイゼンが言っていた通りこの程度の距離はすぐに詰め寄られる。
「斬撃で───」
「⋯⋯!」
予想通りハイゼンが一気に畳みかけてきたので躱したり、『流し』を織り交ぜて発動のギリギリまで耐え凌ぐ。
そして、残りの魔法文を詠唱すると同時に後方へと飛ぶ。
「切り裂け!黒影の一閃!」
そう唱え終わった瞬間、右手の掌中から放たれた黒い斬撃がハイゼン目掛けて飛んでいく。
咄嗟にハイゼンが木剣を構え防ごうとするが黒影の一閃は木剣を難なく通過し、そのまま左肩から右腰にかけて致命傷と言えるほどの傷を負っていた。
「⋯強くなったなバルト。俺の負けだ」
そう言った直後、ハイゼンは大量に吐血し、地面へと倒れた。
「父さん!」
俺はハイゼンの元へと全力で走った。
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