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第10話 決闘(上)

 翌日、ハイゼンとは別で朝食を食べ、決闘の地である平原へと向かった。


「遅かったな。お前のことだから俺よりも早く来ると思っていたが」

「時刻の指定はしてなかったはずだよ。それに、決闘する両者が集まっても介添人がいないと始まらないからね」


 決闘する際には事前に日時を決める必要がある。

 だが、今回は時間に関して特に指定していない。

 急に介添人に選んでしまったバーゼルに時刻まで指定するのは気が引けたからだ。


「なあ、バルト。今更だが、話し合いじゃダメなのか?」

「⋯⋯本当に今更だね」


 決闘を受けると言ってしまった以上、取りやめることは出来ない。

 それはハイゼンもよくわかっているはずだ。


「実は昨夜、ゼレーナから決闘を辞めて欲しいと懇願されたんだ。俺とお前が傷つけあうのなんか見たくないってな」


 薄々気づいてはいたがやはりゼレーナは反対したらしい。

 まあ、それが当たり前か。

 親子の決闘を見たい母親なんかいるわけないしな。


「お母さんの気持ちもわかるけど、この決闘は俺の将来が掛かっているんだ。そんな易々とやめないよ」


 この世界の決闘のルール上、申し込んだ側が申し込みを取り下げれば決闘をやめることができる。

 しかし、この決闘を辞めてしまえば俺が話し合いで負けるだけだ。

 メリットがない。


「そうだな。お前らしい」


 そう言葉を零すと同時にハイゼンの表情が少し暗くなったように見えた。


──────


「すまんすまん。少し遅くなってしまった」


 ハイゼンと俺が集まってから約20分後、バーゼルが2本の木剣を小脇に挟んでやってきた。

 ただ、一つ気になったことはハイゼンの後ろにおどおどとした若い女性がいることだ。


「いえいえ。ところで後ろの女性は?」


 どうやらハイゼンも疑問に思ったらしく、俺が口を開くよりも先に質問していた。


「ああ、この方はわしの知り合いの魔術師さんで治癒魔法を専攻しておられる方だ」

「よ、よろしくお願いします」

「お前さんらが決闘となると必ずどっちかが負傷すると思ってな。少し無理を言って来てもらった」

「そうですか。気を遣わせて申し訳ございません。そちらの女性の方も急で申し訳ない」


 ハイゼンがバーゼルと若い女性に深深と頭を下げる。


「頭をあげてください!私の治癒魔法なんか底辺中の底辺ですから!」


 ハイゼンに頭を下げられた女性は慌てふためきながらも謙遜的な態度をみせる。

 てか、謙遜しすぎな気がする。


「まあ、顔合わせはそれくらいにして。お前さんら本当に決闘するんだな?」

「「はい」」


 今更決闘を辞退する気なんてない。

 自分の親と戦うのは褒められたことじゃないが、夢を叶えるためにも本気で戦うしかない。


「では、このバーゼル・アルステンドが介添人を務め、バルト・ナーヴァスとハイゼン・ナーヴァスの決闘を行う」


 結構様になってるな、さすが村長。

 選んで正解だったわ。


「改めて条件の確認を行う⋯と、言いたいところだが長くなるから無し!」


 前言撤回。ダメだこのジジイ。


「最後にお互いの望みを述べよ」


 望み?

 ああ、そっか。

 本来は決闘が始まる前に自分が勝利したときの望みを相手に伝えておかないといけないのか。

 前世でやっていた決闘はただただ実力を試したかっただけだから今回みたいに自分の望みを掛けたりはしなかったんだよね。


「俺が勝利した場合。息子であるバルト・ナーヴァスには魔術師の夢を諦めてもらい、剣士として生きてもらうことを望む」

「俺が勝利した場合。剣士としてではなく、魔術師として生きることを望む」


 望みを述べあった後バーゼルから木剣を受け取り、それぞれが開始位置へと着く。


「最後の確認だ。両者ともこの決闘を行う意向でいいな?」


 俺とハイゼンが見つめ合いながら頷く。

 そして、各々の構え方で剣を構える。


「では、決闘⋯始め!」


 バーゼルの宣言により、戦端の火蓋が切って落とされた。

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