第9話 親子喧嘩
急なハイゼンの発言に次は俺が硬直した。
「なんで、そんな急に⋯⋯」
ついさっきまで魔術師になる夢を応援してくれていたハイゼンが急に俺の夢を拒絶した理由が俺には分からなかった。
「あまり言いたくないがお前のために言おう。闇魔法が他の魔法に劣っている魔法だからだ」
「⋯劣っている」
そんなこと前世では聞いたことない。
確かに前世で闇魔法を扱う魔術師や魔導士は見たことないが、だからといって闇魔法が劣っているとは思えない。
「劣ってなんかない!遠距離では劣っていても近距離なら勝てる!」
魔法の最大の強みはその射程距離。
剣では届かない中距離から遠距離でも魔法なら届くなんてことは多々あった。
しかし、闇魔法ではその長い射程距離を失っている。
そのかわりに、他の魔法を圧倒する単発高威力を誇っているのだ。
「そうだな。闇魔法の強みはその高威力だ。近距離の純粋な威力だけで比べれば他魔法を凌ぐだろう」
「それなら⋯!」
「じゃあその魔法をどう当てる!?」
「⋯!」
ハイゼンの叫び声に俺はまた硬直した。
「魔法最大の長所を捨てている時点で他の魔術師に勝つのは不可能に近い!」
「ま、魔術師相手が無理でも剣士相手なら!」
俺とハイゼンの叫び声は次第に大きくなっていく。
周りのゼレーナやバーゼル達が止めに入ろうとしているが、止めに入るタイミングがなくて困っているように見えた。
「剣士の俺から言わせれば闇魔法なんかカモ同然だ!10メートル程度の距離なんか一瞬で詰め寄れる!」
俺の必死な反論も虚しく、ハイゼンは正論で返してくる。
このままではただ両者の意見がぶつかり続けるだけだ。
かといって、ハイゼンを討論で納得させるほどの技量と知識は持ち合わせていない。
(考えろ!俺でもハイゼンを納得させられる方法を!)
頭をフルに回転させ、最善の手を探し続ける。
そして、俺はひとつの結論にたどり着いた。
絶対的な強制力を持つ、一か八かの大勝負を。
「父さんの言い分はよく分かった」
「やっと分かってくれたか!なら今からでも剣の稽古を───」
「それでも俺は魔術師を目指したい!だから父さんを納得させるために今ここで決闘を申し込む!」
「「「!?」」」
俺の意気込みと発言内容にこの場にいる全員が驚いていた。
理由は考えるまでもない。
5歳の息子が父親に決闘を申し込むなど前代未聞だからだ。
「⋯条件は?」
「ちょっと、あなた⋯」
「いいんだ。それであいつが諦めてくれれば」
さすがに決闘はまずいと感じたのか、ゼレーナが止めに入る。
だが、ハイゼンの決意は揺らがない。
戦う意思はあるようだ。
その方が都合がいい。
無理強いさせて戦っても決闘の意味が無い。
何かを掛けて本気でやるからこそ決闘なのだ。
「条件は3つ。
1つ、両者とも木剣以外の武器は認めない。
2つ、攻撃魔法以外の魔法は使用禁止。
3つ、相手を気絶させるか敗北を認めさせることが勝利条件。
ただし、必要以上に相手を傷つけた場合、勝利条件を満たしていても敗北とする」
「場所は?」
「村外れの平原。決闘日は翌日」
「わかった。介添人はどうするんだ?」
「バーゼルさんに頼みます」
「えぇ!わし!?」
悪いな村長。
あんたがいちばん適任なんだよ。
頼むわ。
「俺からもお願いします。息子を止めるためにご助力を」
「お前さんが納得してるなら構わんが⋯」
よし、これで決闘の条件と介添人は決まった。
あとは明日の決闘で勝利するだけだ。
───ハイゼン───
バルトに決闘を挑まれた。
バルトがもう少し大きくなったら親子喧嘩のひとつもあるだろうと思っていたが、想像よりも壮大な親子喧嘩になってしまった。
「なんであいつが闇魔法なんだ⋯⋯」
もし、この世界に神がいるのなら俺はその神を恨む。
よりによって魔術師を目指す息子の適性を『最弱の魔法』である闇魔法にしたのだから。
仮に、バルトが炎や水の適性者なら簡単に魔術師になれるだろう。
それが闇になるだけで難易度は数倍に跳ね上がる。
誰しもが闇魔法が弱いと理解しているから。
「俺の行動は正解だったのか⋯?」
子供に現実を見せるのは大人の役目だ。
だが、それがバルトのためになるのかは俺にも分からない。
もしかしたらあいつには魔術師としての才能があるのかもしれない。
その可能性を潰すのも現実を見せる大人なのだ。
「⋯疲れた。もう寝よう」
辛い現実を直視するのは大人になった今でもきつい。
いや、大人になった今の方がきついのかもしれない。
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