プロローグ 若き剣聖
「この依頼受けます」
冒険者ギルドのクエストボードに貼ってある依頼を取り、受付嬢に渡す。
「モンスター討伐ですね。承知しました。念の為冒険者カードを拝見させて頂きます」
携帯している冒険者カードを懐から取り出して受付嬢に手渡す。
「ありがとうご⋯え!このお名前、もしかしてあの『若き剣聖』!?」
俺の冒険者カードを見た受付嬢がオーバーリアクションで尋ねてきた。
そのリアクションと『若き剣聖』のというワードに冒険者ギルド内がざわつき始める。
「えぇ。巷ではそう呼ばれてますね」
自慢では無いが、俺はそれなりに沢山の依頼をこなしてきている。
その結果、世間からは『若き剣聖』と呼ばれるようになった。
正直、少し恥ずかしい気がするがもう慣れた。
「『若き剣聖』様なら問題ありません!モンスターの討伐依頼よろしくお願いします!」
受付嬢から詳しく依頼内容を聞いた後、モンスター討伐へと向かった。
──────
「討伐依頼のモンスターが10匹⋯少し多いな」
依頼の紙には5匹と書いてあったはずだが⋯
まあいい。10匹なら許容範囲だ。
「さあ、片付けるか」
モンスターの目の前に飛び出すと同時に剣を振り、目の前の3匹を倒す。
襲撃に気づいた残りの7匹が怒って攻撃してきたが、間合いに入ってきた奴から順番に倒していく。
「思ったより楽だったな」
初めて倒すモンスターだったため、寝込みを襲ったが、動きが単純で読みやすい。
(これなら明るい時間帯に来た方が良かったな)
倒したモンスターの耳を切り落とし、袋に詰めた後、冒険者ギルドへと向かって歩き始める。
「ん?なんだあれは?」
空になにやら飛んでいる影が見えた。
(あのサイズ⋯鳥じゃなさそうだな、飛竜か?)
幾度か戦ったことのある飛竜を頭に浮かべ、サイズを比較してみるが、にしても大きい気がする。
「マジか、降りてきやがった」
こちらに気づいたであろう飛竜らしきものがほぼ垂直の状態で滑空し、目の前に降りてきた。
羽ばたくときの風圧に耐えながら、その姿を目にした瞬間息を飲んだ。
「黒曜龍!?何故こんなところに!?」
月明かりに照らされ黒く輝く鱗と二対の翼を持つ龍種のモンスター。
飛竜とは比較にならない程の威圧感を放ち、その眼は目の前の獲物以外に一切興味を持たない。
(目をつけられたか、もう逃げれないな)
威圧と恐怖で震えるに体を落ち着かせ、剣を抜く。
「龍種に単体で挑むバカになるつもりはなかったが、お前を討伐すれば今度こそ本物の『剣聖』になれるだろ!」
目の前に聳え立つ生態系のトップを倒し、長らく届くことはなかったその名に一歩でも近づくために俺は全力で剣を振るう。
「オラ!」
全身の筋肉を最大限に活かした文字通りの渾身の斬撃、いくら龍種といえど、これなら刃が通るはず。
『カンッ!』
全力で振った剣先が鱗と衝突し、甲高い金属音を鳴らしたその刹那、空に舞うのは龍の血潮⋯ではなく折れた銀色の刃だった。
対する龍には傷一つ付いておらず。目の前の小さき獲物を目で追うだけであった。
(嘘⋯⋯だろ⋯)
その後、俺は黒曜龍に左腕を噛みちぎられ、大量出血によって徐々に意識を失っていった。
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