章頭 1章 百竜の行進篇
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征けよ、征けよ 御伽の隊列
来たるは彼方 征くは果て無く
我等を止めるは 同胞の腑
謳え、謳え 英雄の葬列
聴くは刹那 謳うは永遠
他に術無き 定の最期
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リシェルミアナ=アルクレストをよく知る友人は、晩年に述懐した。
彼女は目の前の困った人間を見過ごせないだけの善性はたしかに持っているが、世界を変えるために自分からその力を振るおうという性質では決してない。
あの一件がなければ彼女はきっと、実家の星爵家に甘やかされながら、各国の要人たちに求められてものらりくらりと交わし、皇都の片隅で幸せに料理や昼寝に勤しんでいたはずだ。
だが、あの一件が彼女の才を白昼の下に晒し、彼女を歴史の表舞台へと引き出した。
そうしてリシェルミアナは、今あなた方が知るように、救世の聖女となっていったのである。
──と。
皇国に住む者であれば、それを訊いて何の事件の話をしているのか、迷うことはないだろう。
衡歴八百三十八年の四の月。花の祝典の直後に起きた皇都の危機。
百竜の行進である。
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1章 百竜の行進篇
1章開始です。
明日から本編です。
いよいよリシェルのお話が動きます。
ちょっとだけストック作りました。
よろしくお願いします!




