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僕は何者?

『愛してる』

そんな声がどこからともなく聞こえてくる。

僕は愛されていた。

子は親に愛されるべきであるから。

愛されるのは心地が良い、僕だけを見ているし、僕がそこにいる証明にもなる。何より僕を必要としていると思える。僕は愛されている。

だけどある日、弟が生まれた。

その時の両親が言った。

『あいしてる』

あれは僕ではなく弟に対してであった。

それから僕の日常は変わった。

兄であり続けなければならず、弟を守らなければならない。両親が愛を注ぐのは弟だけ、僕には目もくれずに、ただ僕に弟を愛することを強要した。僕は言われた通りに弟を愛した。誰かを愛した。人を愛した。

『あいしてるよ』

「ゆう…あ、ゆうあ、優愛」

朝、母親の声で目が覚めた。

「何時まで寝てるの、珍しいじゃない」

いつもと違う朝に戸惑ってしまった。

「おはよう母さん、寝すぎたね」

挨拶をして、階段を降りる。顔を洗い、朝ごはんを食べる。出発準備をして、家を出る。これが僕の朝のサイクルだ。

家を出る時には必ずこれを言う

「愛してるよ」

僕はそう言って学校へと向かった。

学校に着くと校門前で1人の生徒が近寄ってきた。

「よっ‼️」

ドンと背中を叩かれる

「やめろよ、瑞希」

こいつはクラスメイトであり、唯一親友と呼べる友達の瑞希だ

「そんなこと言うなよ、あ〜いちゃん」

「その名前で呼ぶなって…」

僕はあいと呼ばれてる、優愛の愛の部分をとってあいちゃんらしい、正直この呼び方は気に入らない、女の子みたいだし…

そんなことを考えていると予鈴がなってしまう。

「まっずい、急ぐぞ‼️」

瑞希が走り出す、下駄箱を突っ切り、階段をかけ登り、何とかチャイムがなる前に着席できた。

学校は退屈だ、好きな人もいないし、勉強はめんどくさいし、友達も瑞希ぐらいしか仲良くないし。そんなこんなで授業を済ませて昼休みに入った。僕は瑞希と昼食を食べながらこんな話をした。

「なあなあ、優愛は好きな人とかいるのか?」

「いや、特に居ないな」

「好きなタイプとかは?」

「特段好みは無い」

そんなことを言っていると、

「お前ってほんと自分の意思持たねぇよな」

そう言われた、僕は確かに僕は教わったことをやり、言われたことだけをこなす、周りの目だけを気にして生きてきた。自分の意思はあまり持たず、他人の意思だけを尊重して生きて来たせいか僕を形作っている情報を僕は何も持っていないのだ。

「僕ってなんだろう」

不意に口から出てしまった。

「何言ってんだよ、お前は姫野優愛でしかないだろ?いきなりどうした」

「ごめんごめん、変なこと言ったね」

口ではこう言ったが、実際僕はなんなのか、その後もずっと考えてしまった。

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