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第八話

星野高校に入学した杉野凌也すぎもとりょうやと、幼なじみの高橋篤弥たかばしあつやと学園で出会った清水愛梨しみずあいり。危険集団である『獣達ビーストズ』の裏切り者だった瀬堂せどう先生の驚きの過去が明らかに…!?


 抑えても抑えても、瀬堂先生は壁や床、天井などから鉄を出してくる。

 抑えた鉄を、篤弥の『光』の能力や、清水さんの『石化』で食い止めるが、限界はある。こういった戦闘に向いていない明石先生やジシカも努力はしてくれたものの、段々と全員が追い詰められていった。

 大量の鉄がこちらを向いた時、瀬堂先生は口を開いた。

「このまま殺すのもなんだ。俺の昔話でもしよう。」


 瀬堂 鉄(せどう てつ)は16歳の高校二年生だった。15歳の高校一年生の海野 (うみの)シズクと付き合っていた。

 だがある時、シズクの異変に気がついた。学校で一言も話さないこともあれば、遊びに行こうと誘っても無視や、直ぐに断られることもある。

 ある日、遊びに行くのを断られたので、一人で映画に行くことにした。人混みの中歩いていくと、間からシズクの姿が見えた。身長が高い点や、長い黒髪で、ひと目でわかった。そして30代程の男。映画なんて頭から無くなって、急いで追いかけた。

 水族館などで遊んでから二人でホテルに入っていった。吐き気が腹の底から湧いてきた。


 相手の男は俺の父親だ。


 そこからシズク達のことを調べた。四年程経った頃、家の近くで食べ物を乞う五歳の少女がいた。

「食べ物…誰か食べ物をください…」

 片手にカビの生えたパンを持っている。ボロボロの服を見て、家に一旦連れ帰ることにした。

「親は居ないのか?」

「…居ない。」

 恐らく捨て子だ…ご飯を食べさせて、服を上げて育てた。

「ていうか名前は?」

「ミカ。苗字はわかんない。」


 七年が経った時、ミカは12歳の可愛い女子になっていた。

「…なぁ、ミカ。」

「どうしたの?お父さん。」

「今日は一緒に寝ないか?」

「…?いいよ。」


 次の日の昼…

「そういえばね、お父さん。私思い出したことがあるの。」

「?」

「お母さんのこと。」

 ミカを捨てた母親か。少し調べたこともあったが、よく分からなかった。

「どんな人だったんだ?」

「えっとね黒髪で、長かった! 」

「…身長は高かったか?」

「うんっ!で、名前は…」

 嫌な予感は的中した。ミカの口から最も聞きたくない名前だった。

───海野シズク

 怒り、そして俺は憎しみと悔しさに狂い殺した。

 彼女と、間男と、父親と、娘のような人物(彼女)を。

 ミカの死体にまだ残る温もりに触れて、包丁で首を貫いて自殺しようとした。だが、その瞬間に『鉄』の魔法が俺に宿った。そして導いた、星野高校に。


「俺は被害者だ。この世になんで正当防衛なんてものがあると思ってる?確かにな、魔法が普及してから俺よりも悲壮感溢れる過去を持ってるやつもいるかもしれない。だがな…」

 瀬堂先生は額の血管を浮き出させて叫んだ。

「俺の気持ちもあんだよ!!」

「馬鹿じゃないか。」

 遮るようにして俺は言った。

「何のために法律があったと思ってる!父親がしたのは立派な犯罪だ!通報すれば良かっただけじゃないか!それにアンタだって未成年と………寝てるじゃないか!」

 また瀬堂先生の血管が浮き出た。怒りで前が見えなくなって、壁などを殴って暴れだした。

「そんなん知るかぁぁ!!俺は被害者だ!被害者だ!被害者なんだぁぁ!!」

「明石先生!『格闘(ボクシング)』を!」

 こちらに段々と向かってくる瀬堂先生を迎え撃とうと、明石先生に言った。

「いや、無理や。ワイの能力は一人につき一日一回。さっき一瞬あいつに発動してもうた。」

「…む?」

 念写で文字を書いた紙をジシカが見せた。

“明石先生以外と瀬堂先生を入れて発動すれば可能なんじゃないか?例えば俺と瀬堂先生とか。”

「確かに…それはいけるかもしれへん。やってみる価値はあるわ!」

 そう言うと、明石先生はジシカに触れて能力を発動させた。

「『格闘(ボクシング)』!」


 ここはどこだ?…明石先生の『格闘』で連れてきて貰えたのか…

 恐らくあの人の魔法は、二人しか同時に領域に入れられない。目の前に立っていたのは瀬堂先生。


挿絵(By みてみん)


「ほぅ、お前が来るか。飛智ジシカ。俺はビーストズに入ってたんだ。それにお前より狂い人様との関係性も深い。お前の魔法くらい知ってる。『念写』だろ?戦闘向きじゃぁねぇ。時間稼ぎでもするつもりだったのか?馬鹿な野郎だ!」

 走って殴りかかってきた瀬堂先生の右ストレートをかわし、顎に右肘でエルボーを決めた。

「ぅぐぁはぁっ!!」

「…ん」

 叫ぶ瀬堂先生の腹にパンチを入れ、吹き飛ばした。そしてトドメに、右足で蹴りを顔面に入れ、場外に飛ばした。

「ぎゅべべっ…!」

「…ぬ」

 吹き飛ぶ瀬堂先生に上から乗るようにして手に念写した文字を見せた。

“場外リタイアだよ。”

「全く舐めやがって…!」

 リングから、白い何も無い空間に飛び出そうになった瀬堂だったが、リングの回りに張り巡らされているリングロープを掴んで、戻ってきた。

「第二試合だよ!!」

 気づくと、顔面に一発食らって吹き飛んでいた。獣のように叫びながら突っ込んでくる瀬堂先生の、頭に足を乗せ、背後に回った。

「のろいわぁっ!」

 突っ込んだ先のリングロープにぶつかった反動のまま、背後の俺にぶつかってきた。

 流石に大人と子供の体格差、リングロープと瀬堂先生に挟まれて、肋骨がミシミシと音を鳴らした。

 この空間は明石先生の魔法によって作られたリング。その為、本人が死なない限り、このリングロープ含め、全ての物は壊れることがない。

「…ぐぁ…」

 瀬堂先生が離れたあとも痛みは消えなかった。肋骨が完全に折れている。痛みに苦しんでいると、上からジャンプした瀬堂先生が落ちてきた。

「死ねェ!飛智ジシカァ!!」


第八話 完

書き終わってから気づいたんですけど、瀬堂先生の過去必要ないですね。ちょっと思いついた設定だったんで書きたくなっちゃって…

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