第七話
前回の話で言っていた「平和な空気が長続きしない」みたいなのはまだ今回で出ません。だからまだ今回と次回ぐらいまでは平和です。
四月十九日…あれから二週間が経った土曜日。星野中学校はとある騒ぎに包まれていた。
学校に毒を持ったヘビが数匹も入り込んだというのだ。種類は誰もが知る『キングコブラ』。ジシカを追加した四人の一行は何となくこの事件が誰の仕業か気がついていた。
「…むぅ」
“これは確実にビーストズ幹部の『コブラ』の仕業だな…魔法は蛇を操る能力『スネイクトーキング』だ”
ジシカは目が見えないので、気配を感じる能力が人一倍優れていた。なのでジシカを先頭に四人並んで蛇を追っていた。
「…ん」
教室前の廊下まで来ると、ジシカは「ここだ」という風に床を指さした。だが、周りを見渡しても何も見つからない。
「てか、ここに何匹も集まってんのか?」
「…む」
瞬間、教室の扉から、またその上から、廊下の角の壺から、天井から、足元の扉から、窓の外から、窓の縁から大量の蛇が出てきた。
だが、磁力で全てを地面に落とした。
「全く…こんなもんか。大したことないな…」
地面に張り付いた蛇に清水さんが近づいた。
「ちょっ…愛梨ちゃん!?」
初めは威嚇していた蛇だったが、いずれ清水さんの手に顔を「すりすり」した。
「羨ましい。」
「あぁ。」
「…むっ!?」
「私虫とか動物好きなんです。特に蛇が好きで。」
そんな様子を見ていると遠くの廊下の角からコブラと思わしき人物が現れた。腕や首筋などに蛇の鱗のようなものがある。
「てめぇら舐めやがっシャーッ!!許さないッシャーッ!!」
壁を走り回って、蛇のような動きをした。
「『石化』!」
一瞬石になったがコブラは通用しなかった。
「力の差は大きいシャーッ!差の大きさがあればあるほど魔法は通用しなくなるシャーッ!」
「いえ、狙ったのはあなたではありません。」
石になっている間は視覚情報を取り入れられなくなる。コブラが石になっている間に、廊下の天井にぶら下がる棒状の電気を石化させた。
その重量に耐えきれなくなった電気が、コブラの頭を打ちつけた。
「っあぁ…」
倒れたコブラを縛りつけて壁に立てかけた。
起きてからビーストズについて話を聞いた。
「他に敵はいないのか?」
「…」
「こんなんどうせ答えねぇかぁ…どうすりゃあ…」
「…む!」
ジシカが自分を指さして言った。皆が「?」という表情を浮かべている中、ジシカが紙に念写した。
“俺の『念写』の能力ならこいつの思っていることを書き出せるかもしれない。”
「おいおい、結構万能じゃぁねぇか!その能力。」
「じゃあお願いします、ジシカさん。」
「…ふっ!」
そう言って紙をコブラの頭に擦り付けると、文字が念写された。
“教師の中に裏切り者がいる。”
「何だと!?」
「落ち着け篤弥。…いや落ち着いてられないか。念写しても名前までは出せないってことはこいつも知らされてないんだな。一体誰が…」
「森先生じゃないですか?あんなに朝宮校長先生に攻撃しようとしていたくらいですし…」
「いや、愛梨ちゃん。裏切り者だってんならあそこまで堂々としないはずだ。それに森先生は朝宮校長の飄々とした態度が気に入らないだけで、この学校やほかの教師には誇りを持ってるぞ?」
皆が頭を抱える中、ジシカが念写をした。
“風の噂だが、明石という教師が森を背後で操っていると聞いた。その可能性も考慮した方がいい。”
「そういえば、朝宮校長を襲った後、明石先生と話したら、あの人は凌也達『緋舞割組』の事を知ってた…!!」
「『相手を調べる時と言うのは、相手に興味があるとき』。確かに、教師が俺に興味を持つなんて変な話だな…」
「でも先生なら生徒を調べる機会もあるんじゃないですか?」
清水さんの疑問を一蹴するように篤弥は言った。
「緋舞割組なんて、相当調べなきゃ出てこない。どんなに優れた教師と言えど、凌也一人に絞らなきゃ調べ出すのは無理だ。」
「一回明石先生のところに行くしか…」
「その必要はなさそうやな。」
気づいた時には、ボクシングのリングのような場所に立たされていた。
「『格闘』。ワイの魔法や。他人を一人選んでボクシングのリングに呼べるっちゅう能力や。この空間じゃあ魔法が使えないから殴り合いしか出来へん。」
「あなたが裏切り者なんですか?」
「いや、ちゃうわ。今の話聞いとってな、心当たりある人物がおったねん。だからお前がそいつと戦う実力があるかっちゅう試しや。元からお前の事は見込んでてな、緋舞割組の事も調べとったねん。」
十数分後、明石に実力を認めて貰えた俺は瀬堂先生の前に立っていた。
「ほぅ。明石先生、そして杉野凌也君、高橋篤弥君、清水愛梨さん。私に用でしょうか?」
「お前が裏切り者ってことくらい分かってんねん。猫の皮も剥がれてきたんとちゃうか?」
「…まぁ良いでしょう。あなた達に、朝宮日向に報告されても困る。ここで始末するとしますか…」
そう言うと瀬堂先生は壁の中から鉄パイプやネジなどを勢いよく飛ばしてきた。
「せいぜい足掻き苦しめ。」
その攻撃を全て磁力で地面につけた。
「俺の能力で一旦は安全にすることが出来ます!でも、時間が経てば効果が無くなる!そしたら自分たちで防御してください!」
こうして瀬堂先生と俺たちの勝負は始まったのだった。
第七話 完
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