第二話
星野高校に入学した杉野凌也と、幼なじみの高橋篤弥。学園で出会った清水愛梨だったが不良たちに絡まれてしまう。だが実は凌也は不良たちのリーダーだった!?
入学式前、思い出したことがある。そういえば朝の爆弾はなんだったんだろう。(序章参照)ま、どうせ『緋舞割組』のだろ。
そう考え入学式に参加していると、隣から篤弥に話しかけられた。
「なあ、朝宮校長結構可愛くねぇか?」
適当にあしらって前を向くと驚いた。朝宮校長が舞台の上のマイクがある場所に立とうとしているのを、三名ほどの教師が遮っている。
その中で朝宮校長が口を開いた。
「何の用ですか?森先生と明石先生、瀬堂先生。」
恐らく「森」と呼ばれている、デブな教師が叫んだ。
「生意気な態度も今日で終わらせてやる!朝宮ァ!てめぇ調子乗ってんじゃねぇぞ!」
バンバン足踏みしながら近づいていく。瀬堂という教師も数歩前に出た。
瞬間、三者の間で火花が散った。森先生の操る『森』、瀬堂先生の操る『鉄』、そして朝宮校長の操る…
「…え?」
思わず声が出てしまった。森先生と瀬堂先生は両手を前に突き出して、魔法を操っている。それが当然の使用方法だ。
なのに朝宮校長は弁慶も立ち退く程の仁王立ちで何もしていない。
「お…おい、凌也見えるか?あれ。」
「どれのこと?」
「右から出てるのが森と瀬堂の攻撃だろ?なのにぶつかりあってる朝宮校長の攻撃も全く同じものなんだよ。」
よく見るとそうだった。右からの攻撃と左からの攻撃はどちらも同じものだった。
ざわついてきた頃に朝宮校長が口を開いた。
「新生徒諸君、この学校にいるからには教えるべきだろう!私のスキルは『再現』。未来、現在、過去。その場で起こった出来事を再現する事が出来る!」
「目には目を歯には歯をってことか…!」
そう、森先生と瀬堂先生の攻撃を再現し、同じものをぶつけたのだ。
そのうち、森先生は憤慨して、また叫び出した。
「てめぇの能力は同じ強さの物をぶつけるだけだろ!?なら再現する相手に押し勝つことは出来ねぇだろぅが!!」
「確かにそうだ。この能力だけならな。」
朝宮校長はそう言うと、周りの攻撃を無視して森先生の腹を殴り飛ばした。そのまま舞台の端まで飛んでいき、森先生は倒れた。
「ぐぅえぇっ!!」
倒れた森先生に向かって朝宮校長は言い放った。
「私のもう一つの能力。その名は『それでも地球は回っている』。単純な目的を決め、それを確実に実行出来る。」
古い書物で読んだことがある。まず発動者は「殴る」、「蹴る」といった単純な目的を決める。その目的を決めると周りの出来事に影響されず、確実に実行することが出来る。
「やべぇな、凌也。俺初めて見たよあれ。」
「今決めた目的は森先生を殴るってとこかな?」
静まり返った空気の中朝宮校長は口を開いた。
「おっと、もう時間になってしまった。入学式はこれにて終了だ。各々気をつけて帰るように。」
そう言うと朝宮校長はスタコラサッサと舞台裏へ帰ってしまった。ざわつきつつも、皆は体育館の外に出ていった。でも俺たちは篤弥の提案で森先生を見てから帰ることにした。
倒れた森先生に近づくと、痛そうに腹を押さえながら、立ち上がった。
「クッソ…朝宮の野郎ォ…!今回こそはやれると思ったんだが…!」
森先生は壊れた舞台を直して言った。舞台は木で出来ていたので、元々修理が可能な設計になっていたのかもしれない。
「んぉ?なんだこのガキども。」
森先生が明石先生に聞いた。
「ガキなんて言い方はやめたれ。こっちのやつは『緋舞割組』の総長やで?」
「ハンッ、とうとう明石も不良を正当化するようになっちまったか?」
まずそうな空気が漂っていたので、さっさと帰ることにした。
帰り校庭に出ると、校舎の上に誰かが立っているのが見えた。
「おいおい、緋舞割組がなんかやってんのか?」
そう言いながら篤弥が目を細めてその誰かを見た。だが、数秒後その場の時間が止まったようだった。
飛び降りた───
【止まれ!!】
何者かが後ろでそう叫んだ。瞬間、落下している女はふわりと浮かんで安全に着地した。
“何者か”は、「またか…」と一言呟くと、運ぶのを俺たちに任せて、保健室に先に行ってしまった。
保健室にて…
ベッドで寝ている女を囲んで四人は座っていた。
その中で清水さんが口を開いた。
「あの…私この人知ってます。井口ハルノちゃん、同じ中学校でした。こんなことする性格じゃなかったと思うんですけど…」
「あぁそうだ。ハルノは今月から突然、飛び降り自殺を試みている。それも四度だ。」
全員が一斉に“何者か”の方向を見た。
「俺の名前は井口来人。こいつの兄だ。さっきのは俺の能力、『浮遊』だ。落下してくるものを浮かせて安全に着地させられる能力…」
来人先輩の説明を遮るように篤弥は話した。
「おいおい、お前二年生だとか先輩だとか知らねぇけどよ、兄ってことは何回も自殺未遂をしてることしってんだろ?どうして理由を聞いたりしねぇんだ?!」
「理由なら聞いたさ。何度もな。でも全て無視。施設に連れてこうにも、その施設が無い。ここ一ヶ月はずっと無言の状態だよ。」
何も返す言葉はなかった。やるせない気持ちで保健室を出ようとした。
その時俺は気づいたのだ。ベッドの下の何かに…
第二話 終
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