第二十一話
クロは降り注ぐ雨の中、シロと肉弾戦を繰り広げていた。
右手のストレートを掴んで、シロがクロを屋上から落とそうとする。だが、クロは落ちる最中に、窓を突き破って、校内に侵入した。そして、天井を突き破って屋上に出た。
「吹き飛ばしても吹き飛ばしても……貴様、何がしたいのだ……!!」
クロはシロの怒りを感じて、思わずニヤニヤしてしまいそうだった。シロは、怒れば怒るほど、どんどん冷静さを乱してしまう性格なのは、知っていた。
「これで最後だ!!!」
そう言ってシロはクロに突っ込んできた。まさに猪突猛進、だが、クロは難なくそれを避けて、シロの足をひっかけて、転ばせた。そのままシロは屋上から落下した。
「この高さじゃてめぇと言えどもう無理だな!!!」
「そうでもない。」
そう言ってシロは校舎の壁に片手で掴まった。そして、ぶら下がる腕をバネのようにし、一階の高さから、屋上までひとっ飛びしてきた。
「ブラフだよ!!」
シロは一度も動かなかった表情筋を使って、ニヤリと笑った。だが、それを遥かに上回る笑みでクロは笑った。雨の中のクロの顔が、シロの目には、まるで悪魔のように映った。
「ブラフをしたのはどっちの方かな?」
屋上まで飛んできたシロは、まだ空中を浮いていた。そのシロが地面に着く前に、クロは走って、勢いをつけてシロの腹に蹴りをぶち込んだ。
「オラァァァァァッ!!!」
「ぁっぁぁぁ……!!」
そしてそのまま屋上から墜落して二人は地面に落下した。
「うはあぁっ!!!」
常人なら体の原型が留まっているかどうかというレベルだが、クロは全身に擦り傷ができる程度ですんだ。
「シロは……」
シロが気になり、クロが歩いて探すと、もう力尽きてただの目玉になってしまっていた。また擦れば復活するので心配は無い。
そんな時、歩いてきた篤也と合流した。
「お、クロ!」
「どうしたガキ。今俺はシロを倒してところだぞ。」
「俺も森先生を倒してきたぞ!!」
「へぇ、あの森を……」
クロは思わず感心してしまった。中学生のガキと侮っていたが、あの森を倒すなんて相当の努力がないといけないだろう。少し篤也のことを見直した。
『屋上の戦い』
【クロ】VS【シロ】
勝者 【クロ】
「あとは……」
「凌也だけだ…!」
狂い人に突っ込んで、『磁石』の能力で腹にパンチをしようしたが、狂い人は手から炎を発射して、能力の範囲外まで避けた。
壁に追い詰められた狂い人にトドメを刺そうと、走って突っ込んでいったが、狂い人は何かの攻撃を構えて、口にいっぱいの息を吸い込んだ。
「!?」
次の瞬間、狂い人の口からはドラゴンのように大量の炎が吐き出された。追い詰めたと思っていたが、追い詰められていたのは自分の方だった。この一本道の『第六廊下』では逃げる場所がない。後ろには廊下から出る扉があるが、絶対に間に合わない。炎が廊下全体に広がりながら凌也に突っ込んできた。
「おらぁぁぁぁああッ!!!」
そう叫びながら、凌也は両壁に触れた。すると、両方の壁が『磁石』の能力でひん曲がって、くっついた。炎がこちらが来る前にくっついて防いでくれたので、凌也に当たらずに済んだ。
「はぁ……はぁ……」
これだけの範囲のものを動かすとなると、相当の魔力と体力を使う。
先程くっつけた壁を壊して、狂い人がこちらへ来た。
「はぁ……」
狂い人も決戦が始まった時からずっと戦っていた。なのでもう体力も魔力も限界だった。
「……これで終わらせよう……!!」
「いいだろう……!」
そう言いつつ、狂い人は凌也ごと『闇ノ穴』で嵐の外に出た。
「『魅了の炎』……!!」
そう叫んだ瞬間、狂い人の背後に、太陽のような球体の炎の塊が浮かんでいた。あまりの巨大な炎に、直視すれば目が焼けてしまいそうだった。
だが、怯まずに凌也は魔法を放った。『磁石』。対象はこの嵐。
嵐の雷雲全てを磁石の能力でくっつけて、ひとつの塊にした。魔力が底を尽きてフラフラしているが、そんなことはどうでもいい。
「終わりだ!!!」
二人がそう叫ぶと共に、炎の塊と雷雲の塊はぶつかりあった。
あまりにも激しい爆発だった。校舎が根こそぎ取られて吹き飛ばされるほどの勢いの爆発で、近くのクロと篤也も吹き飛ばされそうになった。
全ての爆発がやんで、煙も晴れると、狂い人が倒れているのが見えた。
「はぁ……呆気ない終わり方だな……狂い人……」
狂い人は皮膚の皮が焼け焦げて、見るからに痛々しい姿だった。仰向けになってその場に倒れていて、「ヒュー……ヒュー……」と、息をするのがようやくな程だった。
だが狂い人は最後の力を振り絞って凌也の腕を掴んだ。
「私が地面に背をつくのは……死の時だけだ……!!!」
そう言うと、狂い人は力尽きた。それと同時に、凌也の目の前には人ひとり分の大きさのワープゲートのようなものが出現した。『闇ノ穴』かと思ったが、微妙に見た目が違う。
「凌也!狂い人を倒したのか!」
その様子を見て、一瞬で状況を理解した。周りのみんなにはこのゲートは見えていない。そうなれば、この先に続く場所はひとつだ。
「篤也……あとは頼んだ!!!」
そう言って、困惑して叫ぶ篤也を残してゲートに入っていった。
目が覚めると、虚空にいた。言うなれば、星の光がない宇宙。何となく分かっていた。ここは……
☾日曜日へようこそ☽
何者かの声が、耳に直接響いているようだった。目の前を見ると、身長およそ数百メートル程の巨大な人型の怪物がいた。
あまりの温度に頭が働かないどころか、体全体に流れる魔力まで燃やし尽くされてしまいそうな勢いだった。
この怪物こそが『サン』。周りを見渡すと、他の曜日の主達六人が、自分と同じように虚空に浮かんでいた。
「決着をつける時だ!!!サン!!!」
六人全員の声が重なり合った。
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