第二十話
そろそろこの作品も最終盤に来てしまった。なんか悲しい
「相当……無知なガキが来てしまったな……」
そう言うと、狂い人は座っている豪華な椅子から腰を上げた。椅子は革のようなものでできていて、明らかに高級品という風な見た目だ。だが、どこか異様な雰囲気も漂わせている。
「無知……?」
「貴様のようなガキが踏み入る場所ではないと言ったのだ!!」
そう言った後に、「『魅了の炎』」と叫ぶと、辺りから炎の弾がこちらを狙ってきていた。
『磁石』で、天井と張り付き、どうにか避けたが、狂い人は飛び跳ねて、こちらに蹴りを入れてきた。
天井を転がるようにして避けたことで、ギリギリ当たらなかったが、服がかすっていた。服はかすった部分から半径十センチ程の焦げた穴が出来ていて、見ただけでゾッとした。こんなものをもろに喰らえば、おそらく皮が……
そんなことを考えている間に、狂い人がもう一度攻撃をしようとしてきた。なので、『磁石』の能力を解除して、地面におりてから、そそくさと距離をとった。
「そんなことをして逃げたつもりか!!」
そう言って狂い人はこちらに突撃してきた。ほぼ地面と垂直になって飛びかかってきた。なので、地面と狂い人を『磁石』の能力でくっつけようとした。だが、何故か狂い人は何もないかのように、そのまま飛んできていた。
寸前で避けることができたが、何故こんなにも自由に動けているのか。注意してみていると、狂い人は少し動きにくそうだった。おそらく、磁力に無理やり反発して立っているのだろう。
そんなことよりも、とにかく『無知』と言われたことが気になった。子供だからって舐められていると思った。それに気がついた狂い人が何やら話し始めた。
「私を生んだのは人間ではない。」
狂い人はこの世界に魔法が流行した頃、この世に生まれた。だが、生みの親は人間ではなかった。俗に言えば、『神』。名は『サン』といった。
元々の話、この世界は七つに別れていた。それも、曜日ごとに月曜の世界、火曜の世界……というように。そのうち、日曜を司っていた神の名がサン。他の曜日にも主が一人ずついる。その主を殺せばその曜日を乗っ取ることが出来る。サンはそのために、金曜日であるこの世界に狂い人を送った。
「私は貴様を殺す……いや、殺さなければならないのだ!」
そう言って狂い人はまた凌也に飛びかかってきた。
一方のコブラは朝日奈によって首元にメスを突きつけられていた。横腹が刺されていて、出血多量なので、自由に動いて反抗することも出来ない。
「終わりよ、コブラ。」
「なんとでも言え……」
瞬間、油断していた朝日奈はナイフを持っている肩をキングコブラに噛まれた。背後からソロリソロリと迫り来るキングコブラの大群に気がついていなかったのだ。コブラは、出血を抑えながら朝日奈の前まで歩いて、一言だけ指示した。
「やれ」
瞬間、キングコブラの大群は朝日奈に飛びかかって牙を向いた。朝日奈は毒が回ったのか、その場に倒れてしまった。
「致死毒じゃねぇ……ただの麻酔みてぇなもんだ……」
そういえば、朝日奈の魔法はなんだったのか。そう思いながら地面に腰を着くと、テープのようなものが床に貼られていることに気がついた。長方形になって囲まれていた。おそらくこの範囲内なら攻撃されないという能力だったのだろう。だが出てしまい、キングコブラに噛まれた。
「はぁ……疲れた……」
そのままコブラはその場で「グーグー」と眠ってしまった。
『保健室の戦い』
【コブラ】VS【朝日奈】
勝者 【コブラ】
事務の教員に足止めされていた羅久司だったが、事務の教員の数も減ってきてしまっていた。
「お前ら、何としてでも羅久司教頭を扉の向こうに行かせるな!!!」
「おおおおおお!!!」
そう叫びながら教員達は武器を持って羅久司教頭に突撃して行った。倒しても倒しても湧き出てくる教員達に嫌気が刺した瞬間だった。教員の上を飛ぶように跳び越えて、誰かが羅久司に攻撃をした。
あまりの力の勢いに、防御をした羅久司でさえ少し「ズザザ」と背後に下げられた。
「なんでてめぇが……!!!」
そこに立っていたのは一人の男、『タカジマ』だった。前に、担任である明羽に植物状態にされて、病院で意識を取り戻さない状態だった。
「こんな祭りで寝てられるかよ。」
そう叫ぶように言うと、タカジマは羅久司の顔面を強打した。羅久司が吹き飛ばされ、壁に激突する。怒りで叫んで反撃しようとするも、タカジマには追いつけなかった。タカジマは自身の魔法、『怪力』で拳に力を込めた。
「終わりだ、羅久司!!!」
そして強烈すぎる一撃を羅久司の腹の中心にはなった。羅久司は吐血しながら吹き飛んで地下駐車場の壁にめり込むほどの勢いで激突した。
「結局俺もお前も“二番煎じ”なんだよ。」
『地下駐車場の戦い』
【事務の教員&凌也&タカジマ】VS【羅久司教頭】
勝者 【事務の教員&凌也&タカジマ】
意識を失いそうだったジシカは舌を噛んで無理やり意識を保った。腹の感覚がほとんど無い。だが、このまま死ぬ訳には行かない。ジシカは空中に手をかざして、魔法を発動させた。
『写真加工』
口には出さなかったが、周りの三人の教師にはほとんど聞こえたようなものだった。三人がジシカを止めようと、同時にジシカに向かっていった。瞬間、壁が「バキバキバキバキ」という轟音を立てて両方から迫ってきた。逃げようとしたが、ジシカのいる場所以外は全て廊下が潰れるようにして両方から迫ってきている。
そのまま為す術なく三人の教員は壁に潰されて気絶してしまった。
「…むぅ」
ため息のようにジシカはそう言うと、『写真加工』を解除した。そのため息のような言葉に、今までの人生が乗っているのだった。
『廊下の戦い』
【飛智ジシカ】VS【針月&木山&砕斬】
勝者 【飛智ジシカ】
一方、外の森林で激戦を繰り広げている森先生と篤也だったが、少しピンチだった。森先生が生やした大量の木によって視界が遮られる。そのせいでスピードが出せない。
「このままじゃラチがあかん!!!一発で決めるぞォォオオオオ!!!!」
森先生は狂ったように叫ぶと、地面に手を着いた。すると突然地面が【ズズズズズズズ】と音を立てて揺れ始めた。そして驚いて前を向いた時にはもう遅かった。大地が津波のように押し寄せてきていて、今にも潰されそうだった。
「死ね、高橋篤也ァァァァァア!!!」
「このまま死んでたまるかよ!!!!」
そう言うと篤也は今までにないほどに感覚を研ぎ澄まさせた。木の間から見える校舎の窓……空を優雅に飛ぶ鳥の鳴き声……木の揺れる音……
「見えた」
そう呟くと、篤也は体の全神経を足だけに集中させた。そして少しジャンプすると、立っている木をジャンプ台のようにして、横向きに飛んだ。森先生は衝撃で目を見開いた。篤也の飛ぶ方向には木が何本も連続して立っている。自死する気か……そう思った瞬間、篤也はライダーキックのように足を前に突き出した。瞬間、篤也の体は光すらも超える速度で飛んだ。そして木を突き破っていき、森先生の腹に蹴りを入れた。
「何人の犠牲者を払って……今のお前があると思ってる、森!!!!」
篤也はそう叫ぶと足にさらに力を込めて、森先生が豆粒のようになるまで吹き飛ばした。
「これは犠牲者のぶんだよ。」
篤也はそう言うとスタスタと校舎に戻って行った。
『森林の戦い』
【高橋篤也】VS【森】
勝者 【高橋篤也】
「あとは……クロと凌也だけっぽそうだな……」
感覚が過敏になっている篤也は一瞬でそうわかった。残るは二人の敵。
第二十話 終
ライダーキックって言うと雰囲気壊れるかな〜って思って使いたくなかったんですけど、なんかそれしか表現出来なかったです




