第十八話
なんか昔より展開のインパクトが無くなっちゃった気が……
「さぁ貴様ら、朝宮日向を殺せ!!!」
狂い人が、『闇ノ穴』で集めた教師全員に叫んだ。だが、誰も動こうとしなかった。
何が起こったのか理解できていない、そんなはずは無い。今までに何度も『闇ノ穴』は使用している。目の前に朝宮校長がいて、それを「殺せ」と言われている。単純な話だ。
なのに誰も足を踏み出せなかった。今まで情が入らないように、朝宮校長と全く関わろうとしなかった教師もいた。だが、結果的には全員が一つの思いを分け合うようになってしまった。
そんな中、森先生が狂い人の方を向いて、叫ぶように言った。
「出来るわけねぇだろ!!!狂い人!!!俺は朝宮校長にてめぇよりよっぽど恩を貰ってる!!!俺は恩を仇で返すことだけは絶対にしねぇ!!!」
森先生に続くように、全員が「そうだ!!」「当たり前だ!!」と叫び始めた。すると狂い人は不服そうに呟いた。
「残念だ。」
すると狂い人は朝宮校長に向けて手をかざした。すると、次の瞬間、朝宮校長の頭上に、『魅了の炎』が生まれた。
瞬間、教師全員は炎を向いて、他の方向を見れなくなった。そして狂い人は一言指示を出した。
「行け。」
すると、教師全員が朝宮校長の炎に向かっていった。
「っ……!?待て、止まれ!!」
突然の事態に朝宮校長も驚きを隠せなかった。先程まで「出来ない」と言っていた教師達が、突然目は虚ろになり、こちらに向かって歩いてきている。
後ろの扉を見ると、気づくと炎の壁で塞がれている。
パニックで動けなくなった。教師に攻撃する手も考えたが、そんなこと朝宮校長には出来なかった。心を通わせた相手に攻撃など出来なかった。
「来るな……止まれ!!!」
だが、朝宮校長に全員が突撃して、朝宮校長は踏み潰されるように倒されてしまった。ドタドタという鈍い足音が辺りに鳴り響く。確実に朝宮校長は押しつぶされた。狂い人はそう確信した。
「くっくっく……『ガリレオ』に憧れた女は、ガリレオになれず人の流れに押しつぶされて死んだか……」
余裕そうに狂い人が言った瞬間、学校全体が、【ゴオオオオオオオオ】という轟音を響かせて揺れ始めた。
「……地震…?」
瞬間、朝宮校長が突然立ち上がった。有り得ない。あそこまで踏み潰されれば、確実に死んでいるはずだ。なのにまだ生きているというのか。まさか……『再現』…!?
「来ッ……来るなァァァァ!!!」
狂い人は叫んで抵抗する間もなく、朝宮校長に顔面を強打されて、数メートル吹き飛んだ。
「はぁ……はぁ……」
そうして狂い人を吹き飛ばした朝宮校長は、立ったままその場で死んだ。
ガリレオに憧れた女、朝宮日向はガリレオとして死したのだった。
『魅了の炎』の能力が解かれた教師全員は死んでいる朝宮校長を見ると、思わず涙を流した。だが、狂い人の指示により、『闇ノ穴』で各々の場所に戻されてしまった。
「くそ……朝宮日向……!!!死せず最後まで……!!!」
狂い人は壁によりかかって立つのがやっとだった。右腕を抑えながら怒り狂う狂い人こそ、正に『狂い人』であった。
「羅久司!!!」
突然どこかに言った羅久司教頭だったが、例の黒い渦で戻ってきた。どこか怒りを孕んだ表情で、羅久司は睨みつけて言った。
「黙れよガキが……!!!」
瞬間、先程発動させようとしていた『重力』を気を取り直してもう一度発動させた。油断していた。正直大したことないと思っていたが、発動した瞬間地面に這いつくばった。重力に逆らって力を入れても、地面がえぐれるのをギリギリ防げる程度だった。
「『磁石』……!!」
『磁石』の能力で、天井にくっついて解こうと思ったが、磁力をゆうに上回る重力によって、より押し付けられてしまった。
「ガキが……調子に乗りすぎなんだよ……!!!」
そう言って背中の中心を踏み潰された。口から血が出てきて、全身に痛みが走る。重力に抗いながら、攻撃にも耐えなければならない。
「お前こそ調子に乗るな!」
誰かが突然そう叫んだ。声の方を向くと、そこには武器を持った事務の先生達が立っていた。
駄目だ、事務の先生達はただの人間で、ほとんど魔法も戦闘なんかに使えたものではない。だがこの地下駐車場にゾロゾロと多くの先生達が集まっきた。
「羅久司教頭!!私達が相手だ!!!」
思わず困惑した羅久司は、能力を解除してしまった。瞬間、事務の先生の一人に引っ張られて、出口まで連れていかれた。
「駄目だ!事務の先生達だけには……」
「男が一度言ったんだ!!凌也君!!」
そのまま扉を閉めて、出口の階段を登っていった。だんだん戦いの音が遠くなっていった。
「凌也君……落ち着いて聞いてくれ……」
「なんですか?」
何となく嫌な予感は感じつつも聞いた。すると、事務の先生はハッキリと一言答えた。
「朝宮校長が死んだ。」
信じられない言葉だった。だが、何故かこういう時にこそ、頭の中ではスッと理解できた。だからこそ、一瞬で狂い人に対する怒りが生まれた。
「狂い人……首でも何でも洗って待っていろ……!!今殺しに行ってやる……!!」
そして、事務の先生を置いて、第六廊下へ走り出したのだった。
第十八話 終
朝宮校長が死んだ時の『再現』っていうのは、狂い人と戦い始めた一番初めの攻撃の再現をしています。一回目は防げた攻撃でしたが、慢心した狂い人は食らっちゃったっていう解釈で大丈夫です。




