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第十一話

星野高校に入学した杉野凌也すぎもとりょうやと、幼なじみの高橋篤弥たかばしあつやと学園で出会った清水愛梨しみずあいり。清水愛梨の死によって自暴自棄になった凌也と篤弥は星野高校を潰すために狂い人に会いに行って…!?

 数日が経った。二人とも腹の傷が治り『獣達(ビーストズ)』の基地に向かおうとしたが、致命的なことを思い出した。

「前行った時は変なゲートを使ったから、基地の場所わかんねぇな。」

「ジシカに聞くしかないか。」

 俺たち二人は魔法で治せるタイプの傷だったが、ジシカの場合は広範囲かつ、骨折までしていた為、治りが遅かった。なので作戦だけを話して連れてくるのは辞めていた。

「…む?」

 保健室のベッドに座っているジシカに会うと、不思議そうな顔で俺たちを見ていた。

「基地の場所教えてくれないか?昔獣達(ビーストズ)のスパイしてたから。」

「…む」

 少し考えてから、思い出したかのようにカーテンに『念写』した。そこには獣達(ビーストズ)の基地が描かれていた。

「これ…アメリカのニューヨークじゃないか。」

「てか自由の女神!」

 カーテンには自由の女神の美しい姿が念写されていた。その下にはジシカが念写した文章があった。

“部下は全員例の黒いゲートで移動するから、基本場所を知らないんだけど偶々俺は聞いてたから”

「…むっ!」

「行くしかねぇか!」

「えぇ…とは言っても何で?」

「そりゃあ…」

 篤弥がニヤリと笑ってこちらを見てきた。嫌な想像が頭に浮かんだ。



「まじさ!やめようよ!普通に船とか飛行機使おう!」

 波の音にかき消されないようにそう叫んだ。そう、ここは使われなくなった砂浜。目の前には海があった。

「この方法が一番速ぇんだよ!」

 そう言うと篤弥は俺を背負って膝を曲げた。

「ちょ…マジでやめろおおおお!」

「行くぞおおお!」

 篤弥は光の速度で海を走り始めた。とは言っても初めのダッシュの加速で進んでいるだけだ。もうそんなことを考えている暇すらなかった。

「ぎゃあああ!!」

 篤弥の背中と俺の腹を磁力でくっつけているものの、引き剥がされそうで叫ぶしか無かった。

「ぉぉぉぉ…!ブレーーーキィ!」

 壁にぶつかるギリギリの場所でブレーキをかけた。遂にニューヨークの海岸に着いたのだ。

「ぅぅ…おげげええええ」

「たく…こんなんで吐くなんて凌也もまだまだだなぁ。」

「死ぬかと思った…」

 気分が落ち着いてからニューヨークに足を着いた。

「なんてこった………街がほぼ壊滅状態じゃねぇか。」

 そこらじゅうの建物が倒壊して、どこを見ても爆発や火事が起こっている。遠くに自由の女神の像が見えた。何故かその付近だけは切り取ったかのように、綺麗な土地になっている。

「おぅ、ガキ共が来る場所じゃねえぞ?」

 酔った獣達(ビーストズ)の三下が話しかけてきた。

「うわっ…酒臭。」

「凌也、さっさと行くぞ。」

「待ちやがれクソガキ!」

 進もうとした先に足を出して、転ばせようとしてきた。

「お前ら何モンだぁ?しかもここにいるってこたァ基地がある事くれぇ知ってるよなぁ?」

「何、僕たちもただの部下ですよ。今はボスに頼まれて見回りをしているだけです。」

「へぇ、ボスに頼まれるってこたァ相当な幹部ですか。でも一応第何幹部か教えて貰ってもよろしいっすかねぇ?」

 突然聞かれて一瞬戸惑ったものの、冷静を取り戻して言った。

「第三幹部 清水愛梨。」

「コードネームは?」

「……『メドューサ』。」

 そう言うと男は引っかかったように聞いてきた。

「あれ?『ゴルゴン』じゃないっすか?」

 男の口角が上がったように見えた。まずい…バレた…!?今にも何かが起こりそうな空気だったが、頭の中で誰かが呼びかけてきたかのようだった。

───ブラフ

「メドューサですけど。」

 そう言うともっと口角を上げて男は話した。

「いやぁ流石!俺のブラフを見破るなんて流石っすねぇ。でも女って聞いたけど…まぁそういうこともあるか!じゃあ見回りお願いします!」

 そう言うと男は去っていった。見えなくなってからコソコソと自由の女神の近くに向かった。

「おい、凌也。わざわざ嘘つく必要あったか?」

「ここで面倒なことになって狂い人に会えなくなったらそれが一番最悪だ。大丈夫、何とかなるよ。」

 そう言って進むと、自由の女神の目の前に辿り着いた。下から見ると、より綺麗な風に見えた。

「台座がなくねぇか?」

「確かに。てかなんか変形してるね。」

 自由の女神が立っているはずの台座がおかしな黒の建造物に変わっていた。中心あたりの赤色のスイッチを押すと、突然床がパカッと開いて地下に落ちた。

「ぎゃあああ!」

 落ちた先は前見た基地と同じ木で、作られた部屋だった。

 だが何よりも驚いたのは、落ちた目の前に狂い人達獣達(ビーストズ)全員が立っていた事だ。

 なんで───そう思った瞬間に先程の男の発言が頭に浮かんだ。

───流石

 俺の事を本物のメドューサだと思っているなら“流石”なんて言葉は出ないはずだ。

「狂い人…!?」

 狂い人の隣には先程の男が立っていた。

「悪ぃけどこれ全然素顔じゃねぇよ。」

 先程とは全然違う声で男は言った。

「なんでバレたんだ?」

「だってよ、娘が男な訳ねぇだろ?」

「娘…!?」

 すると狂い人が話に割り込んで話し始めた。

「この男は俺の従兄弟(いとこ)に当たる人物だ。そして清水愛梨はこいつの娘。バレるも何も無謀すぎるんだよ。」

「ま、一度も顔を合わせたこともねぇけどな。」

「なんだと…!?自分の娘と顔も合わせないなんてどういう事だ!!」

 そう問い詰めると、男は笑いながら言った。

「あのなぁ、落とし物に愛情注ぐ奴がいるかよ?」

 当然のように嘲笑いながら言う男の態度に怒りが最高潮に達したのか、篤弥が蹴りをかました。

「まぁ待て待て。」

 狂い人が篤弥の体を赤子のようにスっと簡単に持ち上げ言った。

「貴様ら、用があってきたのだろう?時間をかけさせるな。要件を言え。」

 流石に犯罪者相手と言えど礼儀がなってなさすぎた。

「すいません。簡単に言います。俺達は星野高校を壊し…」

()()

 話を理解したのか、最後まで聞かずに狂い人はそういった。重々しい顔つきで。

ジシカの目が見えないという設定を今思い出してしまった…!

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