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第十話

星野高校に入学した杉野凌也すぎもとりょうやと、幼なじみの高橋篤弥たかばしあつやと学園で出会った清水愛梨しみずあいり。だが、清水愛梨が危険集団である『獣達ビーストズ』の裏切り者だということを篤弥は知ってしまって…!?

 逃げきれた───はずなのに愛梨ちゃんの顔を見たら動きが止まってしまった。

「愛梨…ちゃん…?」

「篤弥君…なんでここに…」

 呼吸が乱れて焦点が合わなくなってきた。窓から飛んできたのは石…『石使い』の魔法を持った愛梨ちゃん…

「なぁ…冗談は辞めてくれよ………そんな髪の毛が蛇の…コスプレはやめて…」

「凌也君はもう少しすれば毒が回って危ない状況になる。助けに行って。」

 凌也がいきなり教室から飛び出したのは、愛梨ちゃんに呼ばれたから…?凌也()()が…?

「や…辞めてくれよ!そんなの…!」

 何も考えずに愛梨ちゃんに近づいていってしまった。

「振り返って凌也君を助けに行って!それ以上近づけば…手を出すしかない…!」

 愛梨ちゃんの言葉が耳に入らず、一歩を踏み出してしまった。すると次の瞬間、蛇が勢いよく突撃して横腹を貫通した。

「愛梨…ちゃん…」

 避けられたのに、思考が停止してしまった。もう視界が段々暗くなっていた。


俺は愛梨ちゃんの事が好きだった───


 視界が完全に暗闇に包まれた。現実はもう見たくなかった。



 愛梨はもう進むしか無かった。奥の教室に進んでいく度悲鳴が聞こえてきた。放たれた魔法は全然効果がない。炎も、草も、何もかも石に変えて突き進んだ。

 だが職員室近くの特別相談室の前を通りかかるとジシカが出てきた。

「…!!」

 瞬時に状況を把握したジシカが肉弾戦を仕掛けた。最初は頭の蛇が自動的に反応していたが、時間が経てば経つほど一匹ずつ意識を失っていった。

「どうして…みんな私を邪魔するのよ…!」

 愛梨は設置された窓から外の石を大量にジシカに向かって飛ばした。拳で一つ一つ打ち砕いていたが、いずれは痛みに耐えきれず、体に石が命中した。

 両足の骨が完全に折れたことでようやくジシカが倒れ、愛梨はまた前に進んだ。

 職員室に通りがかると、教師が流石に黙ってはいなかった。愛梨の姿を目視した瞬間に全員が猛攻をした。

 その全てが防がれ、全員が倒された。

 行き場もなく清水愛梨はその奥へと進んだ。ゴールなどない。

───いや、あったのかもしれない。

 職員室の奥の校長室に佇む朝宮校長に愛梨は出会ってしまった。

「杉野凌也が悲しむぞ。」

「これしか…なかったんです。」

 愛梨は朝宮校長のパンチで一突き、腹に風穴を空けられ、その場で即死した。

「なんという…悲劇だよ……自分の手で生徒を殺すなんて…」

 清水愛梨は満足そうな笑顔でその場に倒れた。朝宮日向は苦しい顔でその場に座り込んだ。


『死して笑う者』と『生きて苦しむ者』───



「───さん…──のさん…───杉野さん」

 うるさいなーもう少し眠らせてくれよ…

「大丈夫ですか!?杉野さん!!」

「清水…さん…?」

 目の前にいる人物に思わずそう声をかけてしまった。目のぼやけが治ると、その人物が保健室の先生だと気がついた。

「ここ…保健室…?」

 寝ているベッドで体を起こそうとすると、ズキンッと横腹が傷んだのでまたベッドに寝そべった。

「清水さんは…?」

「………死にました。」

 ………は?

 思考が停止した。まだ夢の中なのかもしれない。だとしたらなんて悪夢。早く起きないと。そう思って現実逃避している俺に先生は淡々と告げてきた。

「愛梨さんは元々『狂い人』の部下でした。遠い血縁関係だったので一番忠実な部下だったそうです。そして、愛梨さんはあなたを襲ってから学校中の生徒を次々に倒していきました。そして、職員室の先生方も倒して、最期は朝宮校長先生に腹を貫かれて即死でした。」

「“即死でした”じゃねぇよ…!!」

 そう話していると、ベッドの周りのカーテンを無視して篤弥が入ってきた。

「ちょっと篤弥君!まだ動いては…」

「凌也…!」

 篤弥が着ている大きい白の服が血で赤くなっていた。

「なんでお前だけなんだよ!!俺は…なんで…!!お前が…!!」

 俺の胸ぐらを掴んだまま篤弥はその場に膝を着いた。出血が酷くなってきたので、先生が隣のベッドに急いで寝かせた。


 数分後、篤弥が落ち着くと先生達が部屋から出て、俺と篤弥二人だけになった。

「篤弥、清水さんを殺したの朝宮校長らしいよ。」

「…聞いた。」

「あのさぁ一つ提案があるんだよね。」

「…?」

「学校()()()()?」

 俺の提案に篤弥は数秒黙っていた。だが自暴自棄になったように「分かった」と言うと、ゆっくりと体を起こした。

「狂い人に会いに行くぞ。」

 こうして俺たちは星野高校を壊すことになった。全ての判断を誤っていたことに気がつくのはまだ先だった…

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