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第九話

星野高校に入学した杉野凌也すぎもとりょうやと、幼なじみの高橋篤弥たかばしあつやと学園で出会った清水愛梨しみずあいり。危険集団である『獣達ビーストズ』の裏切り者だった瀬堂せどう先生の驚きの過去が明らかに…!?

 腕をクロスさせて瀬堂先生は上から叫びながら飛び降りてきた。

「終わりだあぁぁぁっ!!」

 だが俺は『念写』を、瀬堂先生の()()に直接放った。そして目を閉じた隙を狙って、右側に転がりながら避けた。

「…ふぅ」

「ぐあぁぁ!目が見えねぇぇえ!」

「…む」

 瀬堂先生は怪獣のように叫びながら暴れた。だが八方塞がりで暴れる男ほど弱いものは無い。俺はジャンプしてから顔面に飛び回し蹴りを食らわせた。


 明石先生が『格闘(ボクシング)』を発動してから数分、ようやくジシカと瀬堂先生が現れた。瀬堂先生の顔は原型が無くなるほどだった。

「勝ったのか、ジシカ。」

「…う!」

 ジシカは喜んでいるようにそういうと、地面に座り込んで何かをし始めた。瞬間、タイミング悪く瀬堂先生が起き上がってジシカに殴りかかった。

「くぞがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 口から血を吐きながら瀬堂先生は襲いかかった。

「危ねぇ!ジシカァッ!」

 篤弥が叫ぶも、ジシカは何もする気がなく床に何かをし続けている。だが次の瞬間、瀬堂先生が横の壁に吹き飛んだ。

「…む」

「まさかジシカ…『進魔法化』したのか?」

 ジシカが何かしていた地面を見ると、先ほどの、瀬堂先生がジシカを襲おうとする様子が念写されていた。そしてその瀬堂先生に横向きに矢印が描かれていた。

 不思議そうにしている俺と篤弥の為にジシカは地面に念写して説明してくれた。

“『進魔法化』した『念写』の能力は二つ。一つ目は元々と同じ能力。そして二つ目はその場の様子を映し出すことが出来る。そして今のように矢印を描いたり何かをかくと、その場に干渉することが出来る。”

「…ぅん」

「やめろおおお!!俺を動かせええええ!!」

 念写の能力を食らった瀬堂先生がジタバタ暴れていたので清水さんが瓦礫を腹にぶつけていた。

「こりゃやべぇぞ、凌也。これは最早『念写』じゃねぇ。言うなら…『写真加工フォト・プロセッシング』だ!」

 そう篤弥が言い切ると、ジシカはもう飽きたのか瀬堂先生にかいてある矢印を擦って消して、下ろした。地面に倒れ込んだ瀬堂先生に、篤弥が近づいた。

「高橋…篤弥…」

「なんだよ。」

「どうしてこんなに…苦しいんだ…?」

 そういうと瀬堂先生は目を閉じた。その後篤弥は同情し、保健室に瀬堂先生を連れていった。

「こんな最悪な先生だったけどよ、こいつもこいつなりに人生を上手くいかせようと頑張ったのかもな。」

「自業自得ですよっ!」

 女の敵というように清水さんは寝ている瀬堂先生に言い放った。「まぁまぁ」と篤弥がなだめていた。だがこんな日々も、もうすぐ終わるのだった。



 四月二十六日、土曜日。俺が学校にやってきても清水さんは居なかった。

「おい、愛梨ちゃんがいねぇぞ?」

「うん。風邪かな?」

「…むぅ」

 いつも清水さんと一緒に居る俺達三人は心配に包まれながら一日を終えた。昼休み、机の中を見ると文字が書かれた石が入っていた。

「なんだこれ?」

“昼休み、校舎の裏に来てください。”

 急いで書いたようなその文字を見て、「告白かな?」なんて馬鹿なことを思って校舎裏に行った。

 するとそこにはパーカーで顔を隠した清水さんが立っていた。

「清水さん!?なんでここに…ていうか休んでたのに…」

「ごめんね、凌也くん。」

 こちらの話なんて耳に入らないかのように、清水さんは話し始めた。フードの下から涙が見えたかのように思えた。

「え?」

「君には…伝えなきゃと思った。でも君は優しいから…伝えられなかったの。」

 そういうとフードを取って顔を見せた。

「私はメドューサの末裔、魔法の名は『メドューサ』。」

 瞬間、横腹の当たりで激痛が走った。蛇に噛まれていた。

「『獣達(ビーストズ)第三幹部 清水愛梨』。君と一緒にいて楽しかった。」

 俺はその場に倒れ込んでしまった。



 昼休みになり、屋上で飯を食おうと凌也を誘おうとしたが机の中の何かを見た途端にどこかへ言ってしまった。

「おっかしいなー。何が起きたんだ?」

 そう思っていた瞬間、窓が割れて何かが飛んできた。

「きゃぁぁぁぁ!」

「何だ何だ?」

「うるせぇなぁ」

「おい、篤弥なんかしたのかよ!」

 その騒ぎが伝わってクラス中の生徒が窓に近寄ってきた。少しするとほかのクラスでも騒ぎが起こった。

 飛んできたものを見ると、葉っぱの形の石だった。他のクラスでの騒ぎを聞くと、「蛇が出た」と言っている。

 そんなはずは無い。蛇使いの『コブラ』なら俺達四人で完全に仕留めた。

 廊下に出た生徒の上を『光』の能力で走った。すると階段に曲がる場所で、髪の毛が蛇になっている誰かを見つけた。

 急いでバレないように隠れたが、その人物はこちらの存在に気がついたようだった。

───まずい

 光の速さで走れば相手の目に映らない。だが、前に敵に指摘された通り、俺はまだ目が追いつかないため、光の速さまでは出せていない。

 甘えるな。高橋篤弥。そう自分に言い聞かせて、目に力を入れた。すると見えてる景色が変わったようだった。

 これなら逃げ切れる。そう思い教室まで走った。だが走っている途中、俺は見た。

 あの人物は愛梨ちゃんだ。


第九話 完

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