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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.2 お嬢様、"聖女再来"の天啓が降りました。

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<第65話> お嬢様、これは"聖地巡礼"ですか?

私はガードナーに相談し、神殿への手土産の算段をつけることには成功した。

しかしその場に居たアベルの気まぐれか、その直後にローラと2人取り残される形となってしまった。

取り残されたとは言っても、ローラは庭の荘厳な景色に夢中で、取り残されたことに気付いてすらいない。

そう感じているのは私だけである。


「…もう少しお庭を散歩してから戻ろうかしら?」


「名案ですわ、お嬢様!!」


そんなわけで、少しお散歩してから帰ることに致します。

手土産は持ってきてくれるそうだし、ローラも楽しそうだし…

これはこれで良しとしましょうか。




庭園探索を満喫した私達は、午後のティータイム前に自室へ戻った。

今日突然は迷惑が掛かってしまうけれど、たまには庭園でお茶をしてもいいかもしれない。

それはきっと素敵だ、陽を浴びるのも健康的だ。

ローラとそんな話をしながら、帰路についていた。


部屋の手前で、ローラとは別れることになった。

そろそろお茶菓子の準備が出来ている時間だろうと、そちらへ向かったのだ。

私は一足早く、ティータイムを待つこととする。



ーそう思っていたのだけれど。


私が一旦椅子に落ち着こうとしたところで、ジェシーが部屋に駆け込んで来たのだ。

その勢いに驚いて、椅子には座れないままでいる。


「ジェ、ジェシー…?一体どうしたの、そんなに急いだ様子で」


「お、お嬢様…て、手紙の返信が、届いていまして…っ!」


「も、もう届いたの!?」


「はっ、はい!なんでも、昼食の頃には、届いていた、とかで…!」


私がジェシーに神殿への手紙を出してもらったのは、朝のティータイムの後。

昼食の頃に届いたと言うのであれば、きっと3時間と経たない。


「…随分と早いのね?」


「はい、とっても早いです…」


彼女の口振りと態度から察するに、かなり早い対応なのだろう。

婚約者の件と今回の訪問と、神殿は色々と私に便宜を図ってくれている様に感じる。


「普通、神殿のお方を訪ねるには、数日は掛かると、お聞きしていたんですけど…今回はそうじゃないみたいで…」


「ああ、上の方のご許可が必要なのかしら」


「たぶんそう、です。お祈りだけ、だったら、一般開放されてますが…皆さん、お仕事の建物は、忙しいらしくて…」


お祈り、か。

礼拝堂の様な場所は自由に出入り出来る様子。

言われてみれば、そういう施設はあって当然か。


しかしその奥になると、事前の確認が必要、と。

だからメイド達は揃って手紙を出すことを勧めてきたのね。

そりゃ誰だって、門前払いは避けたいもの。


「それで、返信のお手紙は?」


「こ、こちらです…!」


そう言ってジェシーは、ポケットから手紙を差し出す。

封蝋には…裁ち鋏に紬糸とアヤメの花の紋章。

間違いない、神殿からのものだ。


「ジェシー、ペーパーナイフを」


「あっ、はい…こちらに」


私は彼女からペーパーナイフを受け取り、その封を切る。


…これだけ早い返信だ。

対応する気なんてさらさらない、お断りの可能性がある。

それでも返信を頂けただけありがたいけれど、一抹の不安は感じる。



封を開け、手紙を開く。

そこにはチケットの様なものが1枚と、便箋が入っていた。


…チケット?

入場する際に身分証代わりに、必要なのかしら?

ということは、ご許可をもらえたということ…!?


私は急いで便箋を開く。

そこには端的に、文字が並んでいた。



『ロベリア・レイラ・クロートー公爵令嬢


 我々神殿の者は、貴殿を歓迎する。

 日時は問わず。

 明日にでも参られよ。

 "聖都の鍵"を同封した、移動に使用されたし。

 

 ニュクス・ニマ=メトゥリステ       』



歓迎、日時は問わず明日にでも。

同封されているのはチケットだから、きっとこれが"聖都の鍵"。

最後に綴られているのは、ご返信下さった方のお名前かしら。

神殿の名を持つことが許されているのだから、きっとお偉い方ね。



…というか、()()

私てっきり王都に神殿があるものだとばかり。

ゲームの舞台は学院だったから、地理にはあまり詳しくない。

また別の場所なのかしら。


ついでに「聖都の鍵を移動に使え」って何!?



「…ジェシー、"聖都"って?」


「お嬢様は、ご存知なかったのですね…?王都から北に、馬車を5日ほど。その場所に、聖都があるんです。王都と違って、神殿が管轄の、女神様に感謝を捧げる都で、神聖な場所だと、言われてます」


「馬車で5日…」


お尻がペタンコになってしまいそうな距離。

それにしても王都と別で街まで構えているだなんて、思っていたより神殿の力は強いかもしれない。


「どんな街なのか、もう少し詳しく知ってる?」


「えっと…住んでいるのは、神官様達くらいで、他は巡礼の方だとか、ですか…?」


「巡礼?」


「は、はい。女神様を祀る、神聖な都です、から。聖地として、巡礼される方も、多くいるのだと…」


()()()()…ですって!?



おっと、いけないいけない。

声に出してしまうところでした。


なんと良い響きなのでしょう、私の憧れた言葉です…!!


何を隠そう、私はまどプリ以外のゲームはほとんどプレイしたことがありません。

アニメや漫画も、あまり詳しくありません。


しかしインターネットでまどプリが好きだと言っている方々が、他のアニメや漫画の舞台となった場所を「()()()()しました!」と投稿しているのをよくお見かけしたのです。

正直そのアニメや漫画は然程興味なかったのですけれど、舞台となった地に足を運べることは、とっっっても羨ましくって!


だってまどプリの舞台は異世界、行きたくても行けませんもの。

「ここの風景、このシーンと同じ!」とか、

「同じ空気吸ってる笑」とか。

それを羨ましくないっていう方が嘘でしょう!?


思えば私は今、推しのロベリア様の体で生きています。

そしてその場所は、ロベリア様のご生家。


あれ…?ここ、聖地では…?

私ったら、知らない間に聖地の空気を吸っていた…?

こんなこと他のロベリア様ファンに知られては、妬まれてしまうに決まっています。

今まで気付かないなんて愚か極まりない、なんと幸せなことでしょう…。



そして今度は、()()()()()()()に行ける…!

ロベリア様のご生家のみならず、映えある王宮の次は、信仰の中心地の聖都。

この世界が魔法ファンタジーな由来は、女神:ニマの設定あってこそです。

女神が人々に魔導を授けなければ、その力はなかったと言われているのですから。

これはもう、()()()()()()()()()でしょう!!


こうなっては、私のお尻事情には構っていられません。

ペタンコになろうと行くしかありません、どうか堪えて頂戴な…!




…ああ、そういえば"聖都の鍵"のことも聞いておかねば。

名前通り、これがないと開かない扉がある…とかだった場合、使い方を知らないと困ってしまう。

詰む、とも表現するのでしたっけ。

それは避けたい。ただお尻が痛いだけになってしまう。


「ジェシー、これが"聖都の鍵"?」


私は封筒からチケットの様なものを取り出し、ジェシーに尋ねる。


「そっ、それは…!?」


「それは…?って、ええ!?」


ジェシーはそれを見るなり、倒れてしまいそうな勢いで仰け反り、驚く。

つい私まで驚いてしまったわ。


ジェシーは倒れんばかりの勢いをすんでのところで耐えたと思いきや、部屋を飛び出していく。

開け放たれた扉の先、廊下から彼女の大きな声が響き渡ってくる。


「か、カミラ様ぁ〜!!たっ、たた大変です〜!!!」


え?そんなに大変なことが?

ちょ、ちょっと待ってよ。

このチケットと、聖都の鍵って、一体何…?


「どうしてみんな、走り去ってしまうのかしら…?」


悲しきかな。

私はまたもや、取り残されてしまったのだった。

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