<隱ー> 欠陥品
ワタシは長い時の中、この地獄を見てきた。
命を落とす少年少女を。
涙を溢れさせる人々を。
灼かれた王都を、村々を。
誰かは言った、「失敗した」のだと。
失敗した世界は欠陥品。
無用の長物となるのは誰にでも分かろう。
しかし多くが世界を愛した。
どれだけ世界が失敗しようと、嫌いはしなかった。
それ故に、世界は失われなかった。
それに故に、世界の地獄は続いていた。
どうしてこれに、嘆かずいられようか。
ああ、そうだ。
多くの人々が、嘆いたさ。
ワタシ自身を含めて。
しかし同時に、笑う者も多かった。
何時にだったか、言われた覚えがある。
「そういうエンタメでコンテンツなんだよ」
そう、言われた。
…これがエンタメ?コンテンツ?
ワタシには、到底理解出来そうにない。
魔物が跋扈し、面白い展開だと笑う。
他の命を奪い、高揚感に笑う。
家屋が焼かれ、ダイナミックだと笑う。
人を殺し、自分が正しいと笑う。
人が死に、感動さえする。
悲しくはないのか、貴様らは。
人の心がないのか?
ああ、ないか。そうだろうな。
「ある」だなんて、言ってほしくないね。
このワタシだって、泣くというのに。
みんな涙を流しやしないじゃないか。
涙する心も無しに、心を語るんじゃないよ。
痛みもしない心でさ。
…お気楽で羨ましいことだわ。
しかし、歴史というものは繰り返すらしい。
それはどんな世界でも同じなのだとか。
痛みの歴史も、繰り返すのだ。
どれだけ血を流しても、
世代が変われば、
生きる人々が変われば、
その痛みを忘れてしまうのさ。
…ああ、すまなかったね。
貴様らには分からないと思うが、痛むのだよ。ワタシの心は。
存外、見ているだけでも痛むのだ。
もう見たくなどない。
好きで見ているとでも思っているのか馬鹿者が。
あの子らが泣く理由なんて、無かったらいいのに。
無くていいだろうに。
どうして欠陥品の世界は、あの子らを泣かせるのだろうか。
欠陥品だから、か?
ならもういっそ、動かなくなるまでに壊れれば良いのに。
中途半端に動きやがって。
いつまで、繰り返せば良い。
いつになれば、解放される。
なぁ、いつ。いつなんだ。
あの涙を拭いたかった。
けれどワタシにそうされても、あの子は喜びはしない。
見ているしか、出来なかった。
自己満足だな、悲しいことに。
こんなに温い悲しみも、なかなか無いと思うが。
こんなに壊れた世界で愛を謳ったって、
正義を謳えど、
希望を願えど、
ああ
何も変わらない。
そうさ、地獄が続くだけなんだ。
クソみたいな地獄で、一人涙している。
そんなワタシも、きっと、欠陥品なのだろうね。
…卑怯者が。




