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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.2 お嬢様、"聖女再来"の天啓が降りました。

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<第58話> お嬢様、勝利に必要なのは"知る事"です。

当面の目標は『両王子のお人柄を知る』こと。

親睦を深めてから、ロベリア様に相応しい婚約者を決めるのだ。


ーそう息巻いたまでは、良かったのだが。

冷静に考えてみると、その方法までは思い至っていなかった。


なんなら私自身というか、ロベリア様についても、まだまだ知らないことが多い。

…これではまた、「キミは本当にロベリアか」と詰められても仕方がない。

それはまずい。非常に宜しくない。


『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』

これは孫氏の言葉だったか。

相手を研究し、自分の得手不得手を理解すれば、どんな戦にも勝てる

 … みたいな意味だったと思う。


私はこれまで、相手の事ばかり知ろうとしてきた。

あまり自分自身、ロベリア様ご自身にフォーカスしてこなかった気がする。

たぶん知ったつもりになってる部分が、少なからずある。そりゃ推しですし。

ファンディスクも設定本もどれだけ見たことか、分からない。

その知識が少し欠けているらしいのが、ちょっと問題なのだけれど。


そんな訳で。

先ずはロベリア様について、知りましょう!!




「ねぇバトラー?どうしても通してくださらないの?」


「うっす。いくら来ても駄目、お嬢は1階の隅っこがお似合いなんすわ」


私は屋敷内の蔵書室だという場所に訪れていた。

そこは屋敷の2階。

以前と変わらず、「お前は2階に来るな」とバトラーに妨害を受けている次第だ。

しかし今日の私は、()()()()()()()()


「そう、諦めるしかないのかしら」


「あーそうっすよ、だから早く帰って」


「だそうよ。困ってしまうわね、()()()


「左様で御座いますね、お嬢様」


「…はァ?」


私の背後から、カミラがゆったりと歩み出る。

バトラーはカミラの声を聞いた瞬間には、呆けた顔を浮かべていた。



フッフッフ。私も何度も無策で挑むだなんて、そんな阿呆ではないわ。

今日は頼れる味方、カミラを連れてきたのだ!


これまでは仕事の邪魔をしてはと遠慮してきたが、今日は思い切って同行をお願いしてみた。

そんな私に彼女は「その程度でお役に立てるなら」と、その願いを快諾してくれた。

私の見立てでは、これで勝てるに違いないと踏んでいる。



「はて、どう致しましょう。蔵書室が使えませんとは」


「ババッ……カミラ、ソイツと何しに来た」


「何を?御本を読みに来た以外に、何があると言うのです?」


「いや、なんでソイツと…」


「お嬢様は、()()()()()()殿()()()()()()となられるのですよ?教養も必要でしょう?」


「そ、れは…」


「まさか、バトラー殿がご存知ない訳では御座いませんでしょう?」


「…チッ、仕方ないっすね。分かりました、蔵書室に関しては認めます」


「あらまぁ、バトラー殿は物分かりが宜しくて助かりますわ」


「但し部屋ん中は散らかさないでほしいっすね、ソイツの後片付けなんか御免なんで」


「えぇ、そちらはこのカミラめが致します故」


「ケッ、そいつぁ何よりで」


バトラーはその勢いのまま、踵を返し、何処かへと向かって行く。

その場に残されたのは、私とカミラのみ。

他には使用人の姿もない、非常に静かな空間となった。



ーフッ、正に計画通りというもの。

バトラーにはカミラをぶつければ勝てる…

この算段は間違っていなかったようだ。


カミラに伝えたのは「勉学の為に本を読みたい」程度のこと。

その他には特段何も伝えていなかったのだが、バトラーの対応から私の意図を汲み取ってくれたようだ。

その点で既に優秀なのだが、推測するに、カミラはこのお屋敷でかなりの古株。

そんな彼女を無碍には出来ないだろう、そう強気に出られないだろうと踏んだのだが、これは効果覿面といった様子。

というか思いの外、効いたというか…


結果はカミラの完全勝利で終わった。

バトラーはカミラの存在に気付いてからというもの、そちらを見て、呆気に取られていた。

もはや彼の眼中にも居なかった私は、後方腕組みしつつ、会話が終わるのを待っていただけで、勝利を獲得した。


これが相手を知り、己を知るということ…。

なるほど。

この調子で進めば、悪い作戦ではなさそうだ。



この功績をもたらした彼女には、しっかり感謝せねば。

お茶会のお菓子もバレない程度に融通しよう。きっとそうしよう。


「カミラ、ありがとう。貴女のおかげで本が読めるわ」


私の言葉に、彼女はなんでもないという風に返す。


「いえいえ、私はお嬢様に感謝される程の事は何も。至極当然の事を、バトラー殿にお伝えしただけに過ぎませんよ。彼は物分かりが良い方ですから、伝わるのも当然です」


「謙遜だわ」


「フフ、そんな事は。婆を褒めたとて何も出ませぬよ」


彼女は朗らかに笑う。

言葉遣いこそ仰々しい時もあるが、彼女はいつだって朗らかに笑う。

今もその笑顔に、少し気持ちを落ち着かされている自分がいる。

…自分の味方が居るって、ありがたくって、暖かいことなのだなぁと思う。




「それでは許可も貰ったことだし、早速蔵書室にお邪魔しましょう!」


「えぇ、それが良いでしょう。このお屋敷の多くの知識が収められているお部屋に御座います、きっとお探しのものも御座いますよ」


「えっと…()()()()()()って、私何かを探しているって言ったかしら」


「いいえ。それでも減額を求められたお嬢様のお眼鏡に叶う、そんなお部屋だと思いましたもので」


「そうなのね、どんな本があるかしら…楽しみだわ」


私はこのお屋敷の知識の宝庫、蔵書室の扉を引く。

その扉の先には図書室とも言い難い、ただひたすらに、多くの書物が積み置かれている様子があった。

天井まである本棚は満席。

床からも分厚い本が積み上がっており、一部には埃を被っているものまで見受けられる。


…私が入る前から、ちょっと散らかってないかしら?

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