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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.2 お嬢様、"聖女再来"の天啓が降りました。

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<第55話> お嬢様へ、道化な枢機卿のご提案。

「ロベリア嬢ちゃんには、王族と婚約する意思がある」


「そんで、王子2人にもその意思がある」


「なら、嬢ちゃんに選んで貰いな。これがボクからの提案だぜ」


ソリーナムは再確認するように、丁寧に言葉を並べる。


「王宮的にも神殿的にも、聖女の問題を些末に扱われては困るんでね」


()()()()、分かるよなぁ?」


そう言って彼は、またケタケタと笑うのだった。




「あーそうそう、アベル坊だったか?」


彼は思い出したかのように、アベルの方へと向き直る。


「坊もこれなら文句無いだろ?だって選ぶのはお姉様だもんなぁ?」


アベルは首を縦に振り、コクコクと頷く。


「うんうん!おねえさまが選んだなら、きっとどんな人でも王子様だもん。イヤな人じゃないよ、イヤって言わないよ!!」


「それがノワゼットでも、ローレンスでもだな?」


「おねえさまが選んだ人なら、ぼく怒ったりしないよ!ノワゼットさまでも仲良くする!だっておねえさまが決めたんだもんね!!」


「そりゃあいいお返事だぜ」


ソリーナムは機嫌良さげに、アベルの頭を撫で回す。

アベルも彼の言葉に納得した様子で、エヘヘと言いながら笑っている。


「嬢ちゃんは良い弟を持ったもんだな」


えぇ。もう、本当に。

お母様の手前、何も言えないけれど、その言葉には頷くばかりだ。

駄々を捏ね出した時はどうなることかと思ったけれど、私の意思であれば、それに従うと言う。


たぶんアベルは、義兄に「悪魔の弟」だと言われるのが嫌だったんじゃない。

単純に、姉を「悪魔」と呼ぶ相手が嫌だったんだ。

それでも姉が選んだ相手であるならば、文句は言わない、と。

本当に姉のことを、ロベリア様のことを慕っているのだろう…。

心底良い子だと思う。

ロベリア様ご自身は、こんなにも慕われていたことをご存知なのだろうか。

…伝わっていたら、いいな。



「ヴァイオラ、ダリア。意義はあるか?ボクは優しいから聞いてやるぜ?」


「じゃあソリーナム。それは宮廷道化師、枢機卿としての神殿側からのご意向とも捉えて宜しいのねぇ?」


「そうだぜ?彼の教皇聖下にも確認済みさ」


「…そぉねえ。それなら従うしかないわねぇ」


「そうは言うが猊下、それはいつ決めるというのです」


「あー、期限てのも必要だな?ダリアの言う通りだぜ」


「そうです、本来は今日のうちに決めるつもりでしたのに…」


「はーん、そうかそうか…そうだな…」



ソリーナムは暫し、考え込む。

そして誰かに言うではなく、何かを1人で呟いている。


そして顔を上げ、その場の全員に言葉を向ける。



「期限はローレンスの10歳になる歳、魔力測定の式だ」


「その間に嬢ちゃんがどう思うかは自由、正式決定はその日とする」


「婚約者選定の口実は『当人らが幼い故、事を慎重に運べ』との神殿側からの要求とせよ、と聖下は仰せだ」



「…さて、質疑応答を受け付けようか?」


彼は椅子に座し、足を組む。



彼の言葉を受け取るなら、今日この日に婚約は決まらない。

それどころか、ノワゼットに決まらない可能性すらある。


そもそも教皇聖下のお言葉?

それが本当ならば、この王国で最も尊ばれる御方からの言葉。


…事前にその話をまとめて、ここに訪れたと言うのだろうか。

それならば母達と違い、神殿側は聖女の問題にかなり慎重そうだ。

私が聖女であるか否かも、神殿側は把握している可能性すら感じる慎重さ。

これは今後、神殿についても、情報を集めたいかもしれない。



「それが神殿側の要求なのね」


「そうだぜダリア。呑むも呑まないも自由だけど…分かってるよなぁ?」


「それは…まぁ婚約発表の日が変わるだけね」


「そうねぇ、そうよねぇ」



ソリーナムはまたも笑う。

しかし何も言葉にはしない。


母達の態度からして、この要求を呑みつつも、裏では今日の案を押し通すつもりなのだろう。

私も問題さえ改善されれば、特に問題ではない。

それよりも…



「嬢ちゃんが選ぶ王子様は誰だろうなぁ?」



…黙っていると思ったら、そんな言葉を投げ掛けられた。

私は適当に微笑みだけ浮かべておく。


それよそれ、問題はそこなの。

私が婚約者を選ばなきゃいけないなんて、一体全体どうなっているやら。

前世の知識で言うなら、ロベリア様にはそんな選択権が与えられそうにもなかった。

というかそもそも論として、ノワゼット様一筋。

何も悩むことも拒否することもない。


しかし今回は私の意見に加え、()殿()()()()()()で、そうもいかなくなった。

わざわざ神殿の名を出して関与してくるなんて、何が目的なのだろう。


さらにそれに加えて、だ。

また王子2人について、考え直さなきゃいけないじゃない!

今日のお茶会への対策も全然だったのに、また…!?


考えることが多すぎる。

変わったことが、大きすぎるから。


このままで大丈夫だろうか、問題ないだろうか。

私は、ロベリア様を、お幸せに出来るだろうか。


私が誰かを、どちらかを選んで。

問題は…無いのだろうか。




ソリーナムは黙り込む私達を気にするでもなく、言葉を投げ掛けてくる。


「さぁさぁ、そろそろお開きにしようじゃねえの。もう日も暮れてくるぜ?」


考え込んでいた私達は、その言葉に空を見やれば、日はかなり傾いていた。

それから軽い挨拶を交わし、本日は解散する運びとなった。


その間も、彼ソリーナムは1人で愉快そうに笑っていた。



「これからが楽しみだぜ。なぁ?」

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