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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.2 お嬢様、"聖女再来"の天啓が降りました。

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<第53話> お嬢様、僭越ながらご意見差し上げます。

私に今、注がれる目線は3通り。


期待に満ちた、アベルの眼差し。

責務を果たせという、母達の刺すような眼差し。

そして困惑に満ちた、両王子の眼差し。


『聖女候補の婚約者選定』の話題は、私へとお鉢が回ってきたのだった。

ロベリア様の為にも、私はこれを掻い潜らねばならない。

無事に、解決せねばならない。

それがロベリア様として転生した、私の責務というもの。




「僭越ながら、ご意見させて頂きたく存じます」


私はスカートの裾を持ち、膝を交差させ、頭を下げる。

王妃殿下とお母様は、私に目線を向け、思い思いの言葉を投げる。


「…お前の意見など」


「いいじゃないのぉ、ダリア。お話が進まないのも困るわぁ」


「しかし、お姉様…!」


「ロベリア嬢は()()()()()()()()()()()()()()()()わよねぇ?それなら問題ないものぉ」


「…それもそうですわね」


「それに。()()()()()()()()()()も分かっているわぁ。()()()()()()()()()じゃない?」


「…フフッ。そうだったわね、失念していたけれど」


「待たせてごめんなさいねぇ?ロベリア嬢、申してご覧なさぁい?」


短い話し合いを終え、結論が出たようだ。

私の発言が、王妃殿下によって許可される。



「ありがとうございます、それでは申し上げます」


「私にノワゼット様は、釣り合うものとは思えません」



私の言葉を受け、沈黙が訪れる。

頭を下げているので、母達の顔は見えない。

きっと恐ろしい顔だとは思うので、見えなくて良かったとも思う。



婚約者についてだが、私にはハッキリ言って答えが出せない。

聖女再来の天啓と国難も含めて考えた結果だ。

ー というのも、()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。



今回起こる国難だが、生憎と私には、因縁と心当たりがある。


それはまどプリをプレイした記憶によるもの。

ゲーム本編は、魔導学院高等部入学から始まる全5章で構成されている。


第1章:乙女と学院と入学編

第2章:乙女と仲間とスタンピード編

第3章:乙女と修行とダンジョン編

第4章:乙女と悪魔の決別編

エンディング:乙女と祝福と恋の行方


基本的に上記までが、本編として完結している。

ダウンロードコンテンツとして配信された、本編後のストーリーもある。

しかしそれにはほとんど戦闘もなく、日常編のようなもの。


この中で国難・厄災と呼べるものは、たった一つ。

第4章の最後で直面する、悪魔化したロベリア様との戦闘だ。


本編のラスボスであり、敗北すれば国の滅亡が示唆される最難関イベント。

ヒロインのエレナと、攻略対象を始めとした、少数精鋭で討伐しようというもの。

戦闘こそ僻地で行われるものの、敗北時のスチルには、焼け落ちる王城が描かれていた。

僻地から王都、その王城までという被害範囲を考えれば、国難と言わざるを得ない緊急事態。



しかし私は、それを起こさせない為に、今ここに居る。

()()()()()()()()()()()()()()、その未曾有の大災害は起こり得ない。

無論そんな事態を起こさせるつもりは毛頭ない。


それに付け加えるのならば、その事態のトリガーになったと考えられるノワゼットと居るのは危険にも感じる。

そんな人物を「婚約者に選べ」というのは、回避したいのは当然の考え。


私はアベルのように「嫌だ」とは言えない。

だが「釣り合わない」と言うのであれば、また話は別。

最もそう感じているのは、ノワゼットを溺愛する王妃殿下と、私を忌み子だと言うお母様に違いないだろうから。

私が婚約に前向きではないのは、不服に思っていることだろう。

しかし何故そう思うのか。

「忌み子が王子と釣り合わない」という意見へ、どう反応を返せば良いものか?


強引に押し切るか、説得を試みるか。

どちらにせよ、さぞ難しい判断なのだろう。

もはや「釣り合わない」ことを前提に進めるには、アベルの納得は得られないことが容易く想定出来る。

それを踏まえてそれらを試みるには、ある程度私という存在を「釣り合うものだ」許容する必要がある。

彼女らのプライドは、それを許すだろうか?


現在進行形の沈黙が、その最たる答えだと言えるかもしれない。



さて、私が切ったこのカード。

相手はどう切り返してくるだろうか。



「…なぁんだ、そんなことね!ぜ〜んぜん、気にすることないのにぃ!!」


そう口を開いたのは、ヴァイオラ殿下。

明るい声色ではあるが、端々に「手間を掛けさせるな」といった意志を感じる。


「だってぇ、ロベリア嬢は魔力保有量がと〜っても高いじゃない?見れば分かるわぁ〜それは貴族として誉れ高いことなのよ〜?」


なるほど。

あくまで私の()()()()()()()()()()してきたか。

確かにそれは、誰が見ても一目瞭然と言える長所だ。

…ですがそれは悪手ですよ、王妃殿下。


「お言葉を返すようですが、王妃殿下。その魔力も、闇属性の適性です。かつてはその適性を持つだけで、"悪魔"と呼ばれた歴史もあるとお聞きしました」


そう、闇属性には忌むべき歴史がある。

私も詳しくは知らないが、闇属性は悪魔の力だとして、適性者が粛清された時代があったらしい。

まるで()()()()のように。

それ故に、現在では闇魔法の適性持ちは激減したのだという。


「加えて私は、伝承の"災厄の悪魔"のような見目でございます。その様な者が、例え一時であろうと王族のお側に居るのは、王妃殿下やノワゼット様への悪評にも繋がるように思えてしまうのです」


実際問題、次期王太子と名高いノワゼットの未来の伴侶に、そんな悪評が立つ娘を置くべきではない。

聖女の可能性があるとしても、本意ではないだろう。


ノワゼット様をお慕いする少女なら、二つ返事でOKするとでも思ったのでしょう。

しかしそれは、甘いと言わざるを得ない。

私はロベリア様とは違い、ノワゼットにそのような気持ちはない。

ロベリア様のお幸せを願う気持ちの延長線上で、彼との幸せがあればと願いはした。

だがノワゼットとの良好な関係を願えばこそ、彼との婚約は、今するには愚策にしか思えない。

アベルの主張通り、彼が私を悪魔だと思っているならば、それを解消することが必要。

その前に婚約だなんて、彼にとっては迷惑でしかないだろう。


私の言葉に、王妃殿下はお悩みの様子。

お母様はといえば、口を挟む様子はない。



魔力量だけを挙げて、ロベリア様を許容するですって?

随分と馬鹿馬鹿しいことを仰るわ。

私の大切なお人に、随分と舐めた真似をしようというものね。


最低でも、"悪魔のような娘"だなんて評価のままで許すつもりはないわ。

たたでさえ「聖女が現れるまでの繋ぎの駒」だと言われているのよ?

私の推しに、そんな真似は許さない。


さあ早く、「悪魔などではない」とお返事を下さいませ。

続くお言葉がない辺りから察するに、それを認めるのは、相当癪なのでしょうけれど。




「なぁ、随分と面白いことになってるじゃんヴァイオラ」



唐突に、聞き覚えのない少年の声がその場に響く。


アベルやノワゼット、ローレンスの声ではない。一体誰?

それ以前に、王妃殿下を呼び捨て…?


静寂を割くように、楽しげな声で言葉は続いた。



「俺にも一枚噛ませてくれよ、この話にさ」

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