<第51話> お嬢様、これは知らない世界線です。
本エピソードから、新章突入となります。
お楽しみ頂ければ幸いです。
表面では笑顔を取り繕いつつも、内心では愕然とする私。
私の転生・介入で物語に変化が起きた。
果たしてこれは良いことなのか、悪いことなのか。
そんな私をよそに、ヴァイオラ王妃のお話は続く。
「だからねぇ、王族としては、ロベリア嬢との婚約を結びたいの〜!」
両手を揃え、頬の辺りに寄せ、名案だとばかりに彼女は言う。
…全く以って、想定外の事態。
これは私の知らない世界線だ。
「お、お母様…それは本当ですか?」
ノワゼットが面食らった様子で、母に尋ねる。
同じくローレンスも困惑している様で、この話は初耳だった模様。
「えぇ、聖女との婚姻は王族の義務ですもの」
長きに続く王国史上、一度として破られたことのない慣習。
もはやそれは、王族の義務と同義にまでなっているようだ。
「代々聖女を複数輩出した家門は、我がクロートー家とラケシス公爵家のみ。しかしラケシス公爵家には、御息女は居ません。であれば、残るはお前だけでしょう」
ロベリア様の母君、ダリア公爵夫人は、静かにそう語る。
ラケシス家は、まどプリ本編にも登場する家門。
クロートー家同様、聖女を度々輩出している、歴史ある血族。
攻略対象がその家の次男だった。
その一方で、姉や妹の存在は示唆されていなかった。
…なるほど。
有力貴族の中で聖女の可能性があるのは、ロベリア様のみということか。
たとえ見た目がどうであれ、その可能性がある限り、そう簡単に無視出来るものでも無い。
聖女とは。
簡単にそれらしい言葉を挙げるのであれば、
『救世の乙女』 『女神の使徒』
といったところだろう。
従来の魔法適性とは異なる、"神聖魔法"を行使可能な者。
その魔導系統は、女神:ニマからの寵愛の証。
その力は強力で、歴史上数多の厄災を解決した存在とも言う。
王国民が恐れる、"災厄の悪魔"を打ち払ったのも、他ならぬ聖女だ。
加えて、聖女が訪れた時代には、何かしらの困難が起こるともされている。
疫病の伝染、流行。
農地の不作による飢饉。
大規模な魔物の大量発生。
"災厄の悪魔"による大規模災害。
どれも国難と呼べる一大事。
それらを乗り越えてきたのは、聖女を筆頭とした王国民。
様々な偉業を為してきた歴代聖女は、ある意味 "伝説の勇者"とも言えるだろう。
そんな事態を、王族は当然無視出来ない。
どれはその下に着く、王侯貴族も同様なのだ。
ヴァイオラ王妃は語る。
「だからねぇ、ダリアとお話しして〜うちの息子と直ぐにでも婚約をって!」
「「す、直ぐですかお母様!?」」
その言葉には、ノワゼットとローレンスの2人も動揺が隠せていない。
「そうよぉ、何か問題あったかしら?」
「いえ…何も……」
王妃殿下は和やかながらも、有無を言わせぬ姿勢のご様子。
それには息子である両王子も逆らえないようだ。
ノワゼットは何かを考え込んでいる様だが、ローレンスもソワソワしている。
…まぁ私は2年後だと思ってたとは言え、王族との婚約の未来は見えていた。
少しくらいは心構えをしていた。
というか、警戒という意味での意識であれば、転生して直ぐからしていたくらいだ。
ノワゼットとローレンスに関しては、そういったものは持ち合わせていなかっただろう。
悪魔のような見目の令嬢と婚約。
普通ならば、王族にその様なお鉢が回ってくるなんて、想像もしないことだろう。
しかしそれは、天啓によって覆った。
さらには「直ぐに婚約を」ときた。
王子とはいえ2人は、まだ5歳と7歳の幼い子供だ。
私にはあまりにも性急に思える。
…性急、か。
もしや、天啓が降ったという宣言と同時に、婚約を宣言するつもりだろうか。
であれば急ぐ必要も納得出来るものがある。
聖女の再来が本当なのであれば、同時に国難も訪れる。
その対策の為にも、王宮と神殿から、天啓についての発表をする必要がありそうだ。
あまりその発表を遅らせるべきではない。
推察するに、現代でいうところの『緊急事態宣言』に匹敵するであろう事態だ。
それこそ早急に為さねばならないだろう。
「ねえねえ、おかあさま?」
と。唐突にアベルが言葉を発する。
「どうかしたの、アベル?」
アベルは首をコテンと傾げながら尋ねる。
「コンヤクって、なあに?」
…そうだった。
アベルはもうすぐ4歳といった年齢、まだこの話の意味も分からないだろう。
「それはね、アベル。結婚のお約束という意味なのよ。結婚は、やがて将来を共にする…人生が終わる時まで、パートナーとして、家族として、ずっとご一緒するというもの。お互いに支え合って、想い合うの。お父様とお母様と同じ関係ね」
「そっかぁ、じゃあ大切なことなんだね」
「えぇ、そうね。お姉様が結婚したお相手は、アベルのお兄様にもなるのよ」
チラリと、母は私を見る。
しかしその目には、アベルに語った想いが込められているとは思えなかった。
『政略結婚』
『我が家のものとして、せめて役に立て』
そんな意志を感じる。
どうしたものだろう。
筋書きに従うべきか。
破滅への道だと、抗うべきか。
私が悩み、黙っているうちに、話は進んでいく。
「では、ロベリア嬢はノワゼットの婚約者に」
「…はい、お母様」
ノワゼットは、確かにと言わんばかりに頷く。
しかし、その後。
「ちょっと待ったぁ!!!」
アベルの声が突然響く。
「ど、どうしたの。アベルちゃん…?」
これには王妃殿下も驚いた様だ。
私も含め、この場にいる全員がそうだが。
「ほんとーに、ノワゼットさまがコンヤクするの?」
「え、えぇ…。ダリアとも、そう話していたのだけれど…それがどうかして?」
アベルは仁王立ちで背に腕を回し、さらに大きな声で宣言する。
「ノワゼットさまがおにいさまになるのは、イヤ!!!!!」
その場にいる全員が、さらに困惑の表情を浮かべる。
ええ…?こんなイベントも、記憶にないんだけど…?
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