<詳細不明> 幕間、某所にて。
王都の中心から暫し離れた立地。
そこに真白く荘厳な造りをした、神聖な建造物がある。
ここはニマ=ティオシス王国、その最も尊ばれる場所。
その最奥、やや広い一室でのこと。
「のぉ、ラム坊」
「なんだい、ニューちゃん」
色素を失った様な白髪の少女と、道化師姿の仮面の少年が言葉を交わしていた。
「分かっておろうな、今回の件」
「ああ、分かっているともさ。ニューちゃんの考えなら、なんでもボクにはお見通しなんだぜ?」
「…よう笑っておられるものじゃ」
「そりゃあ、そういうものだからね?」
「今ばかりは貴様が羨ましい事この上ないわぃ」
「アハハ、褒め言葉として受け取っておくよ!」
「お気楽な身分で、憎たらしいまであるのじゃ」
「そうしたのはニューちゃんだがらね、ボクを恨むのは筋違いって知ってる?」
「分かっておるから、殊更に頭が痛いんじゃが…」
「そいつは大変だ!治癒魔法が必要かい?」
「要らぬわ!貴様の所為じゃというのに、分かって言っておるな!?」
「さてね〜?」
体躯に見合わぬ大机で頭を抱える少女。
仮面の少年は、机に腰掛け笑うのみ。
「…はぁ。この時間は、いつまで続くのじゃろうな。ワシはそろそろお暇が欲しいというのにのぉ」
「そうなんだぁ〜お忙しくておかわいそう〜」
「思ってもない事を言うものではないわぃ」
「エヘヘ、バレちゃったかぁ」
「バレぬわけがないのも知っとるじゃろ、面白がりおってからに」
「一体何のことやら?」
「……ほんに、いつまで貴様の様なマヌケと居らねばならんのじゃ」
「うんうん、ニューちゃんってお馬鹿だもんね。分かんないよねえ」
「ワシの脳みそはマヌケと違って、ちゃ〜んと詰まっておるわぃな」
「なら分かってるでしょ〜?」
「…まぁの。終わるまでは終わらぬじゃろうな」
少女は突っ伏していた顔をヌッと上げる。
少年の態度は…依然変わりない。
「しかし、思っておったのとは違うのじゃ。彼の方のお考えは未だ分からんわぃ」
「でもこの方が面白いだろ?」
「…それも、そうかもしれんが」
「なんだよニューちゃん、ハンコウキってやつ?」
「年中反抗期の貴様が何を言うのじゃ、新手のギャグかの?」
「はぁ〜?センスねえなぁそれ」
「貴様に言われると余計に腹が立つのぉ?不思議じゃな?」
「あ!分かったぜ、コウネンキだ!」
「誰が更年期障害のババアじゃ!!まだまだ若くてピチピチじゃわ!!!」
少女はゼェゼェと息を荒げながら叫ぶ。
少年は楽しそうにケラケラと笑う。
「ワシは…ワシはこれでも、憂いておるのじゃよ」
「憂う?何をさ?おもしれーことしかないじゃんね?」
「ワシとした事が、マヌケに言うても無駄じゃったわぃ」
「あーめっちゃ分かるぅ〜その気持ちぃ〜」
「…この国の在り方、今後じゃよ」
「そんなん、何千年と変わってこなかったぜ?」
「変化はいつ訪れるか分からぬ。それが良い結果か、悪い結果かも知らぬのじゃ」
「そんなんいつものことだぜ?気にしてたらあっという間に老耄さ」
「そうかもしれ…今ワシの事を老耄と言いおったな?」
「だからぁ、それも考えすぎだぜ?ニャハハ」
少女は何となしに、窓の外を見やる。
少年は飽きたのか、手遊びを始める。
「ワシは常々思っておるよ、これで良いものかと」
「良いに決まってんじゃん?お国もな〜んも問題ないんだしさ」
「最良とは、思えんのじゃ」
「そこまでする意味あんの?」
「…それもそうじゃな。ワシはただ己のお務めを果たすのみじゃったわ」
「あまり気負うもんじゃないぜ?」
「マヌケにしては良い事を言うのじゃ」
「そろそろ撤回しろよ、そのマヌケっての」
「嫌じゃ、このアホンダラ」
「ハイハイ知ってたよ、言ってみただけさ」
少女は席を立ち、その身に纏う衣服を整える。
少年もそれを見て、机から腰を下ろす。
「まぁ今までもこれからも、長い付き合いになるんじゃ。アホだけは言わんでおいてやっても構わんかのぉ」
「ま、お手柔らかに頼むよ」
「これもお務め、仕方があるまいな」
「お務めじゃなくても手加減してほしいぜ?」
「嫌じゃな」
「あーうん知ってた」
部屋の扉が、幾度かノックされる。
「良い、入れ」
「はい、失礼致します」
入室した白服の男は、床に片膝を付く。
「教皇聖下、天啓を観たと言う者が」
「分かっておる。アトロポス公爵家の長男、アーロンじゃろう」
「はっ。仰る通りに御座います」
「直ぐに通せ」
「仰せのままに」
「ラム坊、王宮へ直ちに伝達じゃ」
「は〜いよ。そんじゃ、ボクはここで失礼するぜ」
「猊下におかれましても、御務めご苦労様で御座います」
「ハイハイ、キミもお疲れさん〜っと」
やがて部屋の中に残ったのは、少女ただ一人。
誰に宛てるでもなく、小さく呟く。
「…あの御子は、覚えておるかのぉ」
「何故にワシは、気掛かりなのじゃろうな」
その瞳は、眩く七色に輝いていた。
「直に夜明け、じゃと良いが」
本日更新の次話より、Ep.2に突入致します。
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引き続き最新話の更新は、カクヨムとなっております。
さらに先の展開が気になる方は、そちらもご注目下さい。




