<第50話> お嬢様、思いがけない急展開です。
「そういえばなんだけど」
それまでの流れを切る様に、ノワゼットが口を挟む。
「もうすぐお母様たちが、僕ら4人を呼ぶんじゃないかって思うんだよね」
「…?4人全員、ですか?」
ノワゼットやアベルを呼ぶだけなら分かるけど、私も?
「うん、君も」
どうやら疑問が顔に出ていたらしい。
これは淑女として直していかなければ…
「あぁ。"天啓"の話かい?」
「…ローレンス様、今なんと仰いましたの?」
「き、聞いてないの?その、えっと、天啓が降ったって話…?」
えぇ!?いや、全く聞いてない!!!
そもそも、ゲームに今そんな展開はなかった!!!!!
小難しい顔をする私と、それを真似るアベル。
「どういうことですの?ローレンス様、ノワゼット様」
「ぼくもわかんない〜」
「そうか、聞いてなかったのか…」
ノワゼットとローレンスは、お互いの顔を見合わせる。
どうやら私達は既に天啓について、伝え聞いているものだと思っていたらしい。
ローレンスは少し考え込んだ後、ノワゼットに尋ねる。
「ノワゼット、僕らってその話をお父様やお母様から聞いたんだったかな?」
「いや、天啓を聴いたから… あっ!!」
「…うん。僕らが天啓を聴いて、そう思っていただけだね。これは伝わらないのも通りだよ」
アベルはよく分からない様で、小首を傾げている。
「まぁ気にしないでくれ、そんな都合よく呼び出される訳が」
「王子殿下、王妃殿下がお呼びです」
「「ん…?」」
どこからともなく、使用人が現れる。
流石は王宮の使用人、近付かれている事に全く気付かなかった。
いや、王宮勤めは関係ないか…?忍者かな?
あの。ちょ、ちょっと待ってほしい。
突然色々起こるものだから、混乱してきたかも。
「王子殿下って…僕だけかな?それとも兄様も?」
「失礼致しました、両王子殿下でございます」
「ぼ、僕も行っては、アベルとロベリア嬢だけ残して行ってしまうけど…」
「ご両名が構わなければ、4名で来てほしいと申しつかっております」
私、ローレンス、ノワゼットの3人は固唾を飲み、目で会話していた。
「「「これ絶対さっきの話、関係あるよね?」」」
一方アベルは、何がなんやら。
キョトンと、また首を傾げているのだった。
ーそんなわけで。
王妃殿下からのお言葉となれば、理由もなく断るわけにはいかない。
情報を集め、状況を再確認する為にも、私達は母の元へ向かった。
アベルは「おねえさまが行くならぼくも行く」らしく、ついて来ている。
「よく来てくれたわね、みんな偉いわぁ」
そう言って、ヴァイオラ殿下は私達を迎える。
…と言ったものの、私が視界に入っているかは怪しいが。
「今日は大切なお話があるのよ〜。ね、ダリア」
「そうね、とても大切な話だわ」
朱を纏い、和かな王妃殿下。
蒼を纏い、冷淡な公爵夫人。
とても対照的だが、美しい御二人だ。
思わず目を奪われそうな魅力、 "社交界の華"と歌われるのも合点がいく。
…って。違う違う、そうじゃない!
大切な話?って??
天啓に関する話なら、確かに大切だけれど…。
それを私たちが聞く意味ってあるの?
「えっとねぇ、それは大切ねってダリアと話してて〜」
「…お姉様。一応、内容を順序立てて話されては?」
「あ、ごめんなさいねぇ。そうよね、内容を知らなきゃ分かるものも分からないわよねぇ?」
見た目だけでなく、話し振りまで正反対な御二人だなぁ。
そんなことを思っていたのも、束の間。
「1ヶ月くらい前に、聖女様再来の天啓が降ったのよ〜」
…は?1ヶ月前???
に、聖女再来ですって??????
いや、そんなはずは…
「これはノワゼット達も知ってるわよねぇ?」
「「はい、お母様」」
ノワゼットとローレンスは、揃って返事をする。
いやいや、ちょっと待って。待ってよ。
「だから、ダリアと今後のことをね、お話ししてたのよ〜?」
…そんな、バカな。
つい口が開く。腰を下げ、軽く礼の姿勢を取る。
「…王妃殿下、途中で口を挟むご無礼、どうか御許しください」
「え〜と。いいわ、どうかしたのぉ?」
「"聖女再来"とは、確かなお話でいらっしゃいますか?」
これは私の、ロベリア様の今後に関わるお話。
決して間違いがあってはならない。
「王族はみんな聴いたわぁ、お父様も聴いたみたい。神殿側にも確認が取れたわ。今回観たのはアトロポス家のご長男と教皇聖下みたいなの〜」
周囲を見れば、ノワゼットとローレンスが頷いている。
「聴いた内容は『聖女の再来、近し』よねぇ」
「神殿側は『神聖系統魔導の行使』を観たのだったかしら、お姉様」
「そうよぉ、違いないって教皇聖下からお言葉も頂いているんだからぁ」
「…ご返答、ありがとうございました」
「いいわよ、このくらい〜」
…どうなっている?
アトロポス家の長男が、聖女再来の天啓を授かる。
それはゲーム本編でも語られたから、知っている。
でも、でも違う。
その内容は、ゲームと違わないけど。
聖女再来の天啓はおよそ2年後のはずだ。
ロベリア様が6歳になる以前に天啓が降るだなんて、そんなの聞いていない。
ノワゼット様と婚約されたのは、天啓が降って直ぐのこと。
だから婚約する7歳より以前、2年も前なんて有り得ない。
全く以って知らない展開。
何が、どうして変わった…?
私はルリの存在を思い出し、ハッとする。
彼女なら何か、知っているかもしれない。
そっと小声で、尋ねてみる。
「…ルリ、天啓がこの時期に来たことは?」
(ない、ないわ。何万回以上で、たったの一度もね。わたしもわたしで、驚いてるところなのよ)
何が、起きているの。
この世界に来て、たったの2ヶ月も経たないくらいで。
今ですら先が見えないのに、見えていた未来すら、変わるなんて。
…まさか。
私がこの世界に来たことで、物語に変化が生じている…?
一体これから、何が待ち受けているっていうの!?
お読み頂き、ありがとうございます。
物語が動き始め、Ep.1はやがて閉幕。
幕間エピソードを挟みつつ、Ep.2へと進んで参ります。
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