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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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<第44話> お嬢様、合戦には武器がご入用では?

「お嬢様。バトラー殿とのお話で、お悩みは解消されましたか?」


「…正直まだまだね」


勘付かれていたとは。

流石は歴戦のメイド、カミラだ。目敏い。


「フッフッフ…このローラ、妙案がございましてよ!」


「妙案…?」


「はい!私にお任せくださいまし!!」


ローラまで気付いていたの…!?

しかし"妙案"とは、一体…。




私は一先ず、ローラの意見を聞いてみることにした。

だが。


「あの、ローラ?」


「はぁい!なんでしょうお嬢様!」


「…何故私の髪を解いているの?」


「イヤですわお嬢様、オシャレに決まってるじゃありませんの!!」


「オシャレ…???」


そう。

ローラは上機嫌で、私の髪の手入れを始めた。

鏡台の前に座らされた私は、それを見ていることしか出来ない。

一体どうしたらこんなことに。



「オシャレと悩み、何が関係あるのです?」


「そ!れ!は!」


「はっ、恋のお悩み…」


「その通りですわジェシー!恋のお悩みには、まずはお支度をしなくてはなりませんことよ!!」


そっちかぁ〜!!

そっちの悩みだと思われていたのかぁ〜!!!

それは、そう思われていても仕方がないか…。


ちらっと鏡越しにカミラを見やるが、彼女は穏やかに微笑んでいるだけ。

どうやら助け舟を出してくれるつもりはない様子だ。



「それでローラ、まずは髪の手入れから…ってこと?」


「その通りです!お嬢様のお髪は綺麗ですもの、活かさない手はございませんわ!!」


そう言いながら、ローラは楽しそうに、髪に櫛を通していく。

確かにロベリア様のお髪は美しい。

転生して初めての日は、実はもう少しボロボロだった。

それもそうだ、使用人用のスペースでどうにかやり過ごしていた程度の手入れしかされていなかったんだから。


しかしメイド三人衆が来てからというもの、湯浴みでのサービスは至れり尽くせり。

この世界にも、入浴剤や保湿剤の類はある様だ。

少し聞いてみた所、魔術的研究で生まれた品らしい。

魔術の研究には、錬金術的な側面があり、生活用品にもその知識は反映されているのだとか。


それらをふんだんに使われ、今では櫛を通すだけで、さらさらツヤツヤ。

綺麗に輝いてさえ見えて、キューティクル抜群。



…でも、それなら()()は無いのだろうか?


「ねえ、ローラ」


「はい、お嬢様。どうかしまして?」


「その、髪の毛を染めたりする薬剤って無いの?」


「髪の毛を、染める…ですか?」


「そう、髪の毛の色を変える物とか方法よ」


ここは魔法ファンタジー世界。

それに加えて錬金術による科学的知識もあるのなら、そのくらい無いのだろうか?

ふと、そう思い至った次第だ。


もしそれが可能なら、「悪魔の様だ」と言われる容姿を変えることが出来る。



「…ローラ?」


今まで早かった返事が、まるで返ってこない。

どうかしたのだろうか?


「お嬢様、そちらは難しいですわ」


()()()()ではなく、()()()?」


「えぇ。一般常識として…難しいのですわ」



「お嬢様は、女神様のお話はご存じですの?」


「それは、勿論…建国神話でしょう?」


「そうですわ」


無の土地に女神:ニマが降り立ち、原初の人間を創った。

その建国神話に、何の関係が?



ローラはゆっくりと、口を開く。


「私達は、女神様に愛され、その寵愛を受けて生まれて参りました。その最たる力であり証が、"魔力(マナ)"ですわ」


「人の見目は、その"魔力の保有量"で変化しますの。例えばお嬢様は、闇属性の適性と魔力保有量が高く、紫紺や黒といった色をお持ちですわね」


「女神様が与えてくださったその色を、我々の手で変えてしまうことは、時として女神様への冒涜とも受け取られますの。折角頂いた寵愛の色を手放し、変えてしまうなど」


「女神様が与えてくださった色を偽ってはならない。それは女神様に誠実ではない。技術的には可能ですが、その様な暗黙の了承があるのです」



「なるほど、ね…」



この世界の人々にとって、女神:ニマは母でもある…みたいな感じだろうか。

私も前世では、両親に整形手術は止められたっけ。

似た様な理由だ。

 「見た目を偽るのは相手に不誠実」

 「見目で相手を騙すのか」

そんな感じだったかな。


この世界では女神信仰は厚く、最も尊ばれる存在。

その相手が与えたものを捨て、偽るのであればそれは誠実ではない。

たぶん、そんな感じ。

相手は両親を超えて、神様という超上位存在。

そして一般論でもあるというのだから、従う他ないだろう。

これに抗って「女神様を冒涜した!やはり悪魔だ!」みたいな展開に悪化もしかねない。

郷に入っては郷に従え、ってやつだろうか。



「ありがとう、それは知らなかったの。出来そうなのに、しないのが不思議だなって思っただけ」


「そうでしたのね」


「だって私の両親なら、『悪魔の髪だ!色を変えてしまえ!』って言い出してもおかしくないでしょう?」


指で小さな角を作り、冗談めかしてそう言ってみる。

するとローラはくすくすと笑う。


「公爵家というお立場もありますから、しがらみが無ければそうおっしゃっていたかもしれませんわね。でもそうご心配せずとも大丈夫ですわ、お嬢様」


「…?大丈夫?」


「えぇ。私はお嬢様に、ご自身の見目に自信を持って頂きたいですわ!お髪もお肌も綺麗ですし、お顔も整ってらして、ほとんど唯一無二のものですのよ?」


「唯一無二…」


「もう闇属性の適性持ちの方はめっきり減ってしまいましたし、お嬢様ほど多くの魔力を保有する方もいらっしゃらないでしょう。ですから唯一無二なのですわ!」


「何だか、そう言われると格好いい…」


「そうでしょう?この紫色の輝きは、お嬢様のものだけなのですわ!」


そう語るローラの言葉には、他意というものを感じない。

純粋にそう語っている様に感じるのだ。



「それに、です。お髪の扱いに関してはこのローラ、他のお方に負ける気も致しませんのよ?」


「そうなの?」


「えぇ。私には火属性の魔法適性がありますの。ですからお髪を温めて、素敵な形にメイクアップ出来るのですわ!ヘアカタログも流行をよく見ておりますし、魔道具では難しい髪型にだって出来ますのよ?」


「それは素敵…!!」


「そうでしょうそうでしょう?私も楽しいですわ」


オシャレを語るローラは、本当に楽しそうで。

聞いているだけの私でも、心が躍り出しそうになってしまう。


私もロベリア様の見目の美しさにはとても憧れた。

そんな彼女が見目だけで「災厄の悪魔だ」と言われることには、胸が痛んだ。

でもローラは、「唯一無二の輝き」だと言ってくれた。

嬉しい。そんな彼女が語るオシャレだからこそ、心も躍るのかもしれない。




「この輝きは、お嬢様だけのもの。とびっきりの"()()"ですわ!」


「"武器"?」


「そうですわ、お嬢様。美しさは女性の武器。自分に自信を与え、鼓舞し、時には相手を魅了もしてしまうのですわ」


そう言って彼女は鏡越しに、茶目っ気たっぷりにウインクをしてみせる。


「この武器。活かさない手は、ございませんでしょう?」

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