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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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<第38話> お嬢様、幼馴染と向き合いたいのです。

「ロベリア嬢?いつもと様子が…」

「その、ロ、ベリア嬢…無理を言わなくても…」


困惑する、両王子殿下。

それもそうだろう。

今まで蔑ろにしてきた人間を急に好んでいるといえば、混乱もしよう。


しかし私は、幸せになりたい。ならねばならない。

そんな人間の人生で、明るくない人間関係を抱えたくはない。

私なりに、2人と向き合いたい。

誠実で、信頼出来る関係になりたい。


例えそれが、この先の運命を左右せずとも。




「私は思ったのです。幼馴染である、お2人を大切にしたいと。私の身を案じてくださる方々ですもの、当然のことです」


これは、私としての素直な気持ち。

ロベリア様はそう思われないかもしれないが、私はそう思うのだ。


というか正直に言うならば、ノワゼットは敬遠したいまである。

大好きなロベリア様が悪魔になる理由がある人物、避けたいのも通りというもの。

しかし数少ない幼馴染。

加えて王族を、語れる理由も無しに蔑ろには出来ない。


しかしながらローレンスを嫌う理由を、私は持たない。

庭園で見た彼は、私を苦手としていながらも、優しい人だった。

無理に話題に引き込もうとは考えないが、あえて蚊帳の外にしたり、嫌う理由は見当たらない。


…ロベリア様のお考えとは、正反対かもしれない。

ならばせめて、この2人。両人と仲良くしたいと思う。

2人と向き合って、それに誠実でありたい。

私という片一方がそう思っていても仕方がない。

それを態度で示していかねばなるまい。


それに今後のことを考えるのであれば、王族と懇意の方が何かと有利にもなるだろう。

ノワゼットと仲良くなるのは少しばかり不安だが、険悪な方が不安でもある。

それ以外の不安要素もなく、むしろ良い点の方が多く思い付く。

仲良くしないという手はないだろう。


…これでは一見、打算的か。

仕方がないじゃない。

ロベリア様はきっとそう考えないと思うと…

 このくらいの言い訳はしないと、不安なの。

自分に自信を持つというのは、やはり難しい。

私もロベリア様のように、自信を持てる日が来るといいのだけれど…。



「ロベリア嬢…?」


「はい、どうなさいましたかノワゼット様」


ついローレンスに目線を向けていた状態から、ノワゼットの方へと向き直る。

 と。

目の前に、ノワゼットの顔がある。

あまりに至近距離で、手を翳していて…


動揺した私は、彼の手を振り払ってしまう。

ノワゼットはそれに一瞬顔を曇らせるも、笑顔に戻って言葉を掛けてくる。


「…どうしたの?キミらしくないね」


「申し訳ございません、その、驚いてしまって…」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のに、かい?」


「その、お顔が近かったものですから…」


私は恥ずかしいとでも言う様に、袖で顔を隠す。

驚いたのは本当、嘘じゃない。

実際に、至近距離に整った顔が唐突に現れたのだ。

イケメン相乗効果とでも呼ぶべきか、なかなかに破壊力があった。

その驚きのままに、手を振り払ってしまったのも、また本当のことである。


「そっか、嫌われたのかと思ったよ」


「とんでもございません!その様なことは…」



「だよね」


そう言う彼の声のトーンは、暗く落ち込んでいた。

ハッとして顔を見れば、やはり目が笑っていない。


「ロベリア嬢は()()()()()()()()()()()()()()()()()もんね?」


「え、と。はい…」


あの記憶の濁流の中。

幼いロベリア様はそう仰っていた。

きっと、私が転生する前にも言ったのだろう。


「キミは僕を、裏切らないよね?」


そう言って、彼は笑う。


「そんなこと、大切な幼馴染に出来ませんわ!」


「…そうかい」


表情は、変わらない。



「すみません、私、何かご不快なことをしてしまいましたか…?」


一瞬だけだった、と思う。

ノワゼットはその言葉に、ピクリと反応した。


一際目が鋭く、刺す様な視線になった気がした。


しかし、それは刹那。



ノワゼットはくるりと後ろを振り向き、言葉を溢す。


「…そろそろ帰る時間かな」


私はそれに言葉を返した。


「そうですか。また会える機会をお待ちしてー」


その言葉は遮られた。

他でもない、ノワゼットに。



「ロベリア嬢、()()()()()()()()()んだね」



「…ご公務に支障を出すわけにもいきませんので」


彼はフワリと振り返って、言葉を続ける。

まるでそれを遮ることを許さないかのように、淡々と。


「今日のキミはいつもと違う。これまでと違う。別れを残念がらない、泣きもしない。この僕の手を振り払うのにね。一体どうしてだろうロベリア嬢。今日は変だ、おかしいよ。挙句兄さんと話をすれば、名前も呼んで、邪険にもしないどころか、大切な幼馴染だと言う。ついこの間までのワガママはどこへ行ったのかな?やけに聞き分けが良いお嬢様になったんだね。邪魔だって、嫌いだって言ってなかった?おかしいね、いつも『ノワゼット様だけ』って言ってたのに。嘘だったのかなぁ。心境の変化?いや、まるで」


「人が変わったみたいだ」


真紅の瞳が、私を射る。

最後の言葉が、突き刺さる。

刹那のことではない。

私を推し量るように、ジィッと、その目を逸らさない。


「キミ、本当に()()()()()()()かな?」


 …咄嗟のことで、返す言葉は、見つからない。




「帰ろう、兄さん」


静寂を断ち切る様に、彼はその言葉を放つ。


「え、ちょっ、ノワゼット…!」


突然のことに動揺するローレンスを意にも介さず、出口へと歩みを進めていく。


「どうしたのノワゼット…ちょっと!待って!!」


「今日は突然邪魔して悪かったね。それじゃあ、また。」


「その、ごめんね。ま、また、またね!」


彼らはそうして、立ち去っていく。

部屋の外からは、見送りがどうのという声が聞こえてくる。


私の額に、一筋の汗が流れる。

…見抜かれた? いや、まさか。

なんだこの妙な圧は。


その場に立ち尽くしていることしか、出来なかった。


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