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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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<第37話> お嬢様と、幼馴染。

「…ア嬢!ロベリア嬢!!」


肩を掴み、揺さぶられる感覚に、ハッとする。


「ノワゼット…様…?」


「急に膝をついたものだから、驚いたよ。大丈夫かい?」


「はい、問題ありません…お手を煩わせ、申し訳ございません」


「そうか、君も席に着くといい」


「はい…そうさせて頂きます」




私は膝を着き、その体勢を崩したいた。

しかしそれは束の間だったようで、「まだ体調が優れない」と解釈されているようだ。



ー あの時私が見たのは、きっとロベリア様の記憶だ。

今より幼い頃や、今と変わらない頃。

最後の方は、少しばかり髪が長かったように思う。

…とすれば、今より少し先も含まれるのだろう。


最期はどうであれ、きっとノワゼット王子は、ロベリア様の希望だった。

ここ最近のことを思い返せば、それも当然に思う。

彼女に対等に、優しい言葉を掛けるものは、他に居ないとほぼ確信出来るからだ。


元々好意的だったガードナーも居るには居る。

あの日、アベルが連れ立ってくれなければ、出会い、話すこともなかっただろう。

だがそんな出会いがあったとて、彼は使用人。対等というわけにもいかない。


私はお屋敷の1階の隅に追いやられ、そこから出ることも自由ではない。

2階に立ち入ることさえ非難され、お屋敷の敷地の外など問題外。

かろうじて出られるのが庭。その程度だ。


友達なんて、居る気配はない。

ロベリア様の言動から推察しても、居ないと考える方が妥当だ。


そんな彼女に手を差し伸べたのは、ノワゼット1人だった。

…そういうわけなのだろう。

情報の量は多くとも、質としては僅かだった。

だからこそ、それをなんとなく感じた。



しかし、節々から違和感は感じる。

口にすることこそ出来ないが、微かな違和感を。



「本当に大丈夫かい?まだ寝ていた方が良いのでは…」


ノワゼットはそう語る。

一見すると、彼は私を慮っている風だ。

しかし私にはそう聞こえない。

まるで「()()()()()()」と言っているように感じる。


加えて言えば、肩を揺さぶった際の事。

肩を握る力が強く、今でも少し痛む。

それに目の前で倒れた人間を、あんなに激しく揺さぶっていいものとも思えない。


…噛み合わない。何かが。



「ノワゼット、僕らが来たから彼女は応対に出向いたんだよ。」

「…そんなつもりではなかったんだけど。ごめん、ね、ロベリア嬢」


引き攣った笑みで、ローレンスはそう語る。

全く彼の言った通りで、彼らが来なければ私はおそらく自室に居た。

ここに連れ出されることも、あの情景を見ることも、なかったのだと思う。



「あまり気にしないでください、2人とも。私は大丈夫ですから」


そう言って笑って見せるが、2人とも表情が曇っている。

困ったものだ。何か、話を変えるか…。


「えっと…ローレンス様は、そんなつもりではなかったと仰いましたが、そちらはどういう意味なのですか?」


私が話を振ると、彼は慌てた様子で話し始める。


「その、倒れたと、聞いたものだから…ノワゼットが、心配、して…公爵閣下か、夫人に容態を、伺えないかと…」


なるほど。しかしお父様はお留守。

お母様は支度をしているとは伺っているけれど…

大方、その話自体に乗り気でないところもあるのだろう。

アベルはどうだろう、姿が見当たらないが。

お父様とご一緒で留守なのかもしれない、居たら来ていそうだし。

そもそも、応対に出すには幼すぎるというのもあるか。

私も幼くはあるけれど、幼馴染として数年を過ごしてはいるってところなのかな。



「お父様とお母様は所用で。申し訳ない限りですわ」


「そ、そんなこと…」


ローレンスが何か、言葉を紡ぐ最中。

それを遮る様に、ノワゼットは口を挟む。


「そうだったんだね。でも君が元気そうで何よりだよ」


「はい、ありがとうございます」


ノワゼットの表情を伺うが、曇っている様子はもうなかった。

ただ、笑顔を浮かべているはずなのに、まるで目が笑っていない様には感じる。

ゲームのノワゼットには無かった印象だ。

なんだか、直感的なものなのだけれど、嫌な感じがする。

プレイヤーの私が知らない何かがある、そんな気がするのだ。



だがそんな気持ちを、表面化させるわけにもいかない。


「幼馴染の2人が心配してお屋敷まで来てくださるなんて、とても嬉しいですわ」


ノワゼットの眉がピクリ、と動く。


「僕が、ではないんだね」


小さな声でよく聞き取れなかった。

僕…までは聞こえたのだけれど。肝心なところが聞き取れなかった気がする。


ローレンスはというと、何やらまごついている。


「えっと、その、心配したのは…ノワゼット、で。僕は一緒に、来ただけっていうか…」


「ローレンス様は違うのですか?」


「いや、違わない…けど…僕も、心配…だったし…」


「そのお気持ち、嬉しいですわ」


私はそう言って、微笑む。

ノワゼットとローレンスは、驚いた様な表情を浮かべている。


「私はお2人共、幼馴染として好いておりますもの。これで嬉しくなかったのなら、なんというのでしょう」




…2人の疑問は、驚きは、今なら分かるよ。


今までロベリアは、ローレンスに対して好意的な言動なんてしてこなかった。

でも私は、彼が良い人だって知っている。

アベルとも仲良くしてくれていて、そんな優しい彼を、蔑ろにしようだなんて思わない。


もうここには、ローレンス第一王子を蔑ろにする公爵令嬢は、存在しないのです。

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