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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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33/81

<第31話> お嬢様、これは"着せ替え人形"でしょうか…?

私は今、メイド達が買ってきた品々を着せ替えられている。

いやしかし、これは()()()()に入るのだろうか…?


 と、言いますのも。



あれから、彼女達が買ってきたものを見せてもらうことになった。

多くの箱や紙袋もあった。

一体メイド達はどんなものを選んで来たのかと、少々ワクワクしていた。


「ご覧くださいまし、素敵でしょう!?」


迫真の勢いでそう言ったローラだったが、彼女が見せた品々は、ある意味で()()()()()だった。



「全部、靴なのね」


そう。

10を超える数の箱から出てきたのは、()()()だったのだ。


「ええ!普段使いから社交の場まで、たっくさん選んで参りましたの!!」


ローラが楽しそうでなにより。

…しかし靴だけでこの数!?

服も合わせたら、どれだけの数を買ってきたのやら。



そんなわけで、私は靴を、あれよあれよと着せ替え…

いや、履き替えているに至る。

これでは()()()()()()というよりは、()()()()()()だ。

靴だけとは、こんなマニアックなお人形は多くはないことだろう。


「どうですお嬢様?素敵なお靴でしょう?」


ローラは、そんな()()()()()()でもご満悦らしい。

しかし私もまた、案外乗り気ではある。


「そうね。動きやすそうだし…それでいて、デザインが見事だわ」


「ええ、選ぶのに苦労致しましたわ。だってどれもオシャレでしたもの!」


見事だという言葉に、嘘偽りはない。

レースやリボンがふんだんにあしらわれており、留め具の細工といった細部まで凝っている。

繊細な刺繍が各所にあり、ベースの生地も光沢が美しい。

どの角度から見ても、眼を喜ばせてくれる品だ。

これを大量生産するには、それはそれで苦労するだろう。


「靴職人の一点モノかしら」


「流石はお嬢様ですわ!お目が高い!その通り、どれも王都で人気の工房による一点モノですわ」


「それならきっと手製よね。こんなに細部まで凝っているのだもの」


「よくお分かりで!今回ご用意したお靴はどれも、靴職人の逸品、"魔導靴(マギア・ポプツィア)"ですのよ」


「魔導靴…?」


聞いたことのない単語だ。

"魔導"と名に付く物なのだから、"魔道具"の類だろうか。


「あら、そちらはご存知ありませんでしたか。魔導靴は、腕の優れた一部の職人しか製作出来ない、憧れのお品ですものね」


よく分からないが、高価そうだということだけは分かる…。

それをこんなにたくさん…?

開けた箱全てが靴だったのに、全て…???


私がそうしていると、カミラから声が掛かる。


「お嬢様、実際に歩かれてみては如何でしょう?」



私はカミラの言葉を受け、数十分ぶりに席を立った。



実際に歩いてみると、少々靴が大きい様だ。

若干ブカブカとした、フィットしきっていない感覚がある。

そうして靴を見やる私に、カミラは言葉を投げかける。


「お嬢様、歩かれてみてどう思われましたか」


「えっと…残念だけれど、少しサイズが合っていないようね」


素直にそう答えると、ローラが自信に満ちた顔で語り始める。


「そう!お靴のサイズは、非常に大切な要素ですわお嬢様。しかしそれを解決してくれるのが、魔導靴ですのよ!!」


「と、言うと…?」


「そちらのお靴で、1度床を踏み鳴らしてくださいませ!」


「こ、こう…?」



私は片足を持ち上げ、そのまま床を踏み付ける。

靴はカツンと、靴裏が打ち鳴らされる。


すると、どうだろう。

硬かった靴の内面がスルッと、その形を滑らせ始める。

インソールを始めとして、内部のクッション材が動いているのだ。

足の表面を這う様に、確かめる様に。

実際に履いていなければ分からないであろう、小さな動きを見せる。

そして丁度居心地が良くなった所で、その動きを止めた。



「これって…!」


知らない、こんなもの、見たことも聞いたこともない。

まるで魔法のような、そんな動きだった。


「魔導靴は、いわば生活魔道具の一種ですわ。靴職人の技量が問われるものなので、憧れのお品になっているのですが、貴族の方であれば一般的ですわね」


「わ、わぁ…!ちょっと、モコって、した気がします…!」


「魔導靴は織り込まれた術式によって、履いているお方に合う様になっています。内部のクッション材が、術式によりその形を変える仕組みなのです。成長の早い幼い子供には、少しばかり大きいサイズで買い与え、術式で微調整する事もままございます」


「これが"魔導靴(マギア・ポプツィア)"…素敵だわ!」



そうだ、この世界は『魔法ファンタジー』なんだ。

プレイヤーとしてこの世界を見ていた時は、靴の機能性まで考えたりなんてしなかった。

こんな身近な場所にも、魔法的要素があるんだ…!!


この世界のことは、設定資料で大抵知っているものだと思っていた。

しかしこんな些細なところにも、知らないことがあるなんて。


ー 私、本当にまどプリの世界に居るんだ!


知らない魔道の存在に、思わず胸が高鳴る。

物語に出てきた魔術の詠唱は、ほとんどを覚えている。

けれど、魔道具の類はほとんど知らない。

世界観も好きだった私にとって、これは嬉しい発見だ。



「とっても気に入ったわ、素敵ねこの靴!」


「でも…」


懸念点が、少しだけあったりした。



「ど、どうしたんですか?お嬢様…」


「いえ。とっても素敵なお品なのだけれど、これでは公の場には向かないかと思って…」


そう言いながら、私は靴の踵を持ち上げる。



メイド三人衆が買ってきてくれた、多くの魔導靴。

そのどれを見ても、1つ外見的な共通点があった。


それは、高いヒールの靴が一切無いこと。

どれもぺたんこ靴、と言っても過言ではない。


直近は茶会だが、パーティなんかに参加することになったら?

当然服装は洋装、ドレスになることは想像に易い。

ドレスに合わせるのであれば、多少はヒールの高さがある靴を合わせた方が良いだろう。

ぺたんこ靴では、少々違和感が出てしまいそうだ。



「だから、残念だけれど普段使いになるかなって…」


「ー 甘いですわ、お嬢様!」


声の方を見れば、ローラはさらに自信満々。

腕まで組んでいる。


「魔導靴の術式は、主に2つ備わっておりますのよ!」


「術式が、2つ…?」


「ええ。1つ目は先程の床を踏み鳴らす動作による、サイズの微調整」


「今度は踵だけを、2回鳴らしてみてくださいまし」


そう言って、彼女は笑う。


2つ目の術式…いったい今度はどんな風だろう。

この胸に、ワクワクが収まらなそうになる。



私は靴の踵を、2度打ち鳴らす。

…が、何も変化は感じられない。

どういうことだろう、今回は魔術が成立していないのだろうか…?


そう思いながら、足を地に下ろす。

すると少しばかり、踵の位置が高い場所で止まった。


確かに地を踏んでいる感覚はある。

どういうことか、私は靴を見る。

すると、ヒールが少しばかり、その背を伸ばしていた。


「これが…2つ目の魔術?」


ローラはフフンと鼻を鳴らしながら、口を開く。


「そうですわ!貴族のご婦人方にも重宝されるのは、この術式の存在が大きいのです!」


「踵のみを打ち鳴らす動作は、ヒールの高さを変える術式が組み込まれていますわ。ですのでパーティに出席した際に、足が疲れた場合や休憩の時間に、フラットなお靴に出来ますの。何足と持ち込む必要もありませんし、気に入ったお靴で、より楽に出席できるのですわ!」


凄い。まるで童話のお姫様の様だ。

声高らかに話すローラの言葉に、ジェシーも目を輝かせて聞き入っている。


「詳しいのね、ローラ」


「ええ。辺境貴族ですが、これでも子爵家の娘ですの。オシャレに憧れて王都に参りましたから、その辺りは詳しい自信がございますの」


「す、すごいです。ローラさん…」


「えっへん」


そう言って胸を張るローラは、この場の誰より楽しそうで、生き生きとしていた。

彼女に教わるオシャレは、きっと楽しいだろう。そう思った。




「ですのでお嬢様。お気に召したお靴がありましたら、そちらで社交の場に出れば良いのですわ!」


「お靴のご予定を伺えましたら、私共で丁度になる様にお手入れも致しますよ」


「お、お任せください…!」


この3人は、このクロートー公爵家の使用人。

成程。これは頼りになりそうだ。

買い物で選ぶ品も確か。知識もある。

これからの生活で、彼女達から多くを教わることになるだろう。


「よろしく頼むわね、3人共」


「「「はい」」」

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