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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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<第28話> お嬢様、家族へ思いを馳せます。

公爵閣下は、忌ものを見る目で言葉を紡ぎ始める。


「今度の茶会、くれぐれも面倒を起こさぬ様に」


「…はい」


それはそうだ。

王族との茶会、当然のこと…


「重要な話があるとの事だ。くれぐれもダリア達を邪魔する事のない様にしろ」


「そうよ。お姉様にしては珍しい事だもの。連れて行かないのが最善だけれど、そういう訳にもいかないらしくってね。大人しくしてて頂戴な」


「…? 了解致しました。公爵閣下、夫人」


お姉様ー

確か、夫人ことダリア嬢のお姉様は、ヴァイオラ王妃殿下だったはず。

二人は同じく大公殿下の娘であり、嫁入り後も仲が良いと話されていた気がする。

であれば今回の茶会の相手は、ヴァイオラ王妃殿下。

そして王妃殿下が、事前に『重要である』と前置きする話がされるのか…。


「以上だ、去れ」


公爵閣下は、突き放す様に言う。

夫人はアベルを抱き抱えようとしている様子で、こちらを見もしていない。

短いが、釘だけは刺しておきたかったのだろうか。

まぁ王族の重要案件なら、そのくらいはするものか。


「それでは、失礼致します」


私は再び礼をし、今度こそ、食堂を後にする。




食堂を出れば、セバスの姿があった。

彼は昼食の終わる頃合いを見て、私を待っていたのだそうだ。

言葉の裏も無く、ほとんど待っていないらしい。

本当に優秀だ。

そんな彼のおかげで、自室へ戻る道は、何も苦労せずに済んだ。



そうして戻った自室だが、今度は本当にやることがない。

セバスも送り届けた後は仕事に戻り、一人ベッドで休んでいるのみだ。



うん…一人きり…?

と、いうことは!!



「ルリ、お話ししましょう!」


そう、彼女と話すには絶好に機会だ。

それに聞きたいこともある。


(全くミヤビは…仕方がないわね)


そう声が聞こえ、視界には淡い紫の光が過ぎる。



「王妃殿下の"重要な話"に関して、ルリは何かご存知ですか?」


(さあ…?少なくとも、この時点であんな忠告受けたことは無かったわ)


「ご存知ない…?」


(忘れているだけかもしれないけどね。でもここ数百回は心当たりがないことよ)


「す、数百回ですか」


(それ以上前は覚えてない…というか、大体同じ展開だったからってだけ。人生が巻き戻されてまだ数日だから、心当たりがあれば覚えていそうなものなんだけどね)


「巻き戻って…」


(その様子じゃ、ミヤビも知らないのね)


「あっ、はい…一体何事かと」


彼女の言葉を聞き、再び自分の仮説を思い出す。

 『ゲームのプレイ回数分、ロベリア様はその人生を繰り返している』

ここ数百回と言われ、私は何回プレイしたかと、複雑な気持ちになる。


しかしゲームでこんなイベントがあった記憶は無いし、彼女も知らないと言う。

何が待ち受けているのだろう。



(てっきり、いつもの悪趣味な茶会をするだけだと思っていたのだけど)


「悪趣味?」


(まぁ有り体に言えば、夫人と王妃殿下のご姉妹で、よく愚痴会をしてたのよ。茶会って形でね)


「愚痴会ですか。感情のガス抜き…みたいなものでしょうか?よくある女子会みたいですね」


(たぶんね。それでお互いの子供を連れて行って、遊ばせておいてさ。遠くから私を嗤って終わるのよ)


「それはまた、思っていたより悪趣味な…よくあってほしくないです…」


(まあそれだけ、夫人はわたしのことがお嫌いなのよ)


「…」



なんとも言えない、感情になる。

胸がキュッと、締め付けられる様な…


(どうしたのよミヤビ?いつもの元気はどこ行ったの?)


「ルリこそ…ご両親に、何か、思われないのですか」


(う〜ん)


紫の光が、宙を一回転する。



(無いわよ、特に)


「え…?」


彼女はカラッとした様子で、その言葉を言い放った。

私にとって、意外な言葉だった。


(だってわたしってば、見た目は災厄の悪魔でしょ?実際に悪魔にもなっちゃうんだし、今更反論とか無いかなって。ノワゼットには思うところくらい…あるけど)


「それは…」



確かに、彼女の言う通りかもしれない。

それは『プレイヤーである私』が、誰より知っている。


彼女の見た目は、作中で登場する災厄の悪魔のスチルに酷似していた。

そしてどのルート、どんな展開を辿っても、彼女は悪魔と化す。

恋時が叶うことも決して無く。

いわば、それは『確定演出』なのだ。


だけれど、それでも、それでも私は…



「仮にも、お母様とお父様なのですよ?何も思わないわけが…」


(何も思わないってば。あー、むしろ悪魔になっちゃうのは申し訳ないかもね)


「いえっ、そういうことではなく!!」


(じゃあ何もないわ)


「その、呼び方とか」


(閣下と夫人?別に間違っていないし、気にするほどのことかしら?)


「そ、そんなはずは…」


(なによ、いつにも増して必死じゃない)


「へ…?」



そう言われ、自分の語気が強まっていたことに気が付く。

あれ、どうして。えっと。


「普通、家族って、お互いに慈しんだりするもので…決して蔑んだり、そんなこと…」



 しない? 本当に?



ふと頭を、言葉が過ぎる。


『お前は一体誰に似たんだ、醜女が』

『見た目は醜いんだから、心くらい磨きなさい』


これは。私の、小鳥遊 雅(前世の私)の、両親の言葉だ。


親子関係が立証されて以後は、多く言われたものではない。

会話自体が減ったからだ。

まるで、目を逸らすかの様に。



(…ヤビ)


(ミヤビ!!)


ルリが名前を呼ぶ声に、ハッとする。

視界に光を探せば、紫色の光が、フワフワと動き回っている。


(あなたってば、急に何か考え込んで、そのまま黙っちゃうんだから…なんだか怖い顔してたわよ?)


「怖い顔、ですか?」


(うーん、怖がってる顔…の方が近いかしら?)


「…怖がってる顔」



言われた言葉を、考える。


怖がってる、私が。

一体、何を…?



(ミヤビって優しいけど、鈍感なのね)


「…はい!?」


突然の言葉に、思わず姿勢が正される。


(あなたが言いたいことは、大体分かったわよ)


(わたしが両親に対して、何かしらの感情を持っていることを期待したんでしょ。実際はそうじゃなかったけど)


「え、ええ。まぁ…そうですが」


(仲良し家族、には程遠いものね。そうなってほしい〜とか、そうじゃなくて悔しい〜とか?そんな感じかしら、期待されてたのって)


「てっきり、ご不満だとかはお持ちではないかとばかり」


(それはミヤビ、あなた視点だわ。私はこの関係が当然だと思っていたし、これ以上も望んでない)


「そう、ですか…」


…そっか。

ロベリア様には、必要、ないのか。

それもそうだ、彼女は孤高の花で…



光はまた、クルリと宙を舞う。


(でもね)


彼女は、優しく、私への言葉の続きを紡ぐ。



(そんな自分が居たら、ちょっと良いかもって思うわ)


(それも、ミヤビなら尚更ね)


「え、と…それはどういう…?」


(ミヤビは、こんな私の幸せを願ってくれたわ。そんなあなたが、わたしに仲良し家族をって望むのなら、それが叶うのも見てみたくなったの)


(今のあなたはわたし。でもね)


(あなたの感性を、大切にしてあげなさいよ)


「私の…望み…感性……」


その言葉達は、静かに私の心に染み渡っていた。


(ねえミヤビ。たまにはあなたのこと教えて頂戴よ。例えばあなたは、どんな家族が居たの?)


ー優しい優しい、私の光。




気付けば私は、彼女の言葉のままに、前世の家族のことを話していた。


両親は美男美女で。

その娘の私は醜くて。

どうしてこんなに醜いだのと言われて。

両親に似ても似つかないって。

そのせいで母は、不貞まで疑われて。

でも科学の知識と力で、不貞はないって証明されて。

両親は喧嘩しなくなったけど、私だけ避けられて。

他人の前以外では、"父"や"母"と呼んでも返事も無くて。

まるで私だけ家族じゃないみたいで。

もしロベリア様も、そうだったら悲しいって。

ロベリア様は、ご家族とも仲良くあってほしいんだって。

何の憂いも無く、幸せであってほしいんだって。


思いの丈を、どっと吐き出していた。


それをルリは、否定もせず、ただ静かに聞いてくれた。

時折相槌を返しながら、受け入れる様に聞いてくれた。

終いには溢れ出してしまった涙にも、彼女は何も言わなかった。


私は久しぶりに自分の前世を思い返し、それを手当たり次第に口にした。

やがて口を動かしただけなのに、疲れ果て、眠ってしまう程に。

ほとんど初めて、彼女に前世と思いの丈を語ったのだった。

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