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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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26/81

<第26話> お嬢様、昼食に向かいたいのですが。

さて、と。

私は着替え支度を無事に終え、これから家族全員が揃う食卓へと向かう。

洋服選びに関しては、ルリに手伝ってもらい、難を逃れた。

日本での会食であれば、そのくらいの心得はあるのだけれど…

西洋ファンタジー世界の洋服では、それは流石に難題であった。

これからそういった知識も学んでいかねば、そう思った次第である。




着替えが終わった頃。

コンコンコンと、また扉が鳴く。

今度は確かに、3回のノックだ。


「どうぞ」


そう返事をすると、一拍置いてから扉が開く。


「ロベリアお嬢様、失礼致します」


訪ねてきたのはセバスだった。

最初は怖そうだとも思った彼だが、今ではすっかり安心の種だ。


「お嬢様が昼食に参加されると伺いまして、お時間のお知らせとご案内に参りました」


流石だわ、まるで痒い所に手が届く…

爪の垢を煎じて、バトラーに飲ませてやりたい。


「ありがとう、丁度向かおうと思っていたところなの」


「それは良う御座いました」


「その…私一人で行くのも不安だったから、助かるわ」


嘘ではないけれど、流石に『食堂は何処か』とは聞けない。

またルリに聞くことも考えたけれど、それは少し難しそうだったから、助かったというのは本音だ。


「使用人の中には、未だ野次を飛ばす者もおりましょう。しかしご安心下さいませ、このセバスめが同行致します。好き勝手は言わせませぬぞ」


「頼もしいわ。貴方が居れば百人力ね」


「フォッフォ、このくらいはお安いご用ですとも」



そう話していると。

扉が今度はトントン、2回鳴いては開かれる。


「お嬢〜昼食っすよ〜?」


そう言って、バトラーが現れる。

それは見たセバスは、顔をしかめる。


「これ、バトラー!お嬢様に何足る態度を」


「ゲッ、ジジィ…」


「ムッ、その言葉遣いは何時になれば正されるのですか!()()が上司とは全く気恥ずかしい…」


…あらま。

偶然にも、この二人が鉢合わせてしまうとは。



セバスはやれやれといった様子で、首を横に数度振る。

気が滅入りそうだ。そんな雰囲気が出ている。


「お嬢様、()()()昼食の知らせを届けたのは、この男であったりしませんか?」


「えぇ、その()()()よ」


「…さぞ無礼だった事でしょう、申し訳御座いません。()()()()()私めの上司でして」


「いいえ、貴方が謝ることではないわ。()()()上司の失敗を部下が謝るなんて、そんな必要ないのよ」


「お前ら…さっきから黙って聞いてれば、俺に失礼じゃね?」


 「「貴方は黙らっしゃい!!!」」


「あ…うっす…」


ほとんど諦めた様な顔で、困り果てる私とセバス。

気迫に気押され、居心地が悪そうに不貞腐れるバトラー。

何とも言えない空間になってしまった。

せめてメイドの一人でもいれば、多少違ったかもしれない。

しかし彼女達は、ロベリア様を着飾る為のお買い物中だ。致し方ない。



思わず溜め息を吐きそうになったところで、思い止まる。

ここでまた()()バトラーに注意される様なことは、流石に癪というもの。


「…コホン」


うん。咳払いでやり過ごす。

ついでに話を進めなければ。


「それでバトラー、ご用件は?」


「そんなん、昼食に連れて行くに決まってるじゃないっすか」


「…ちゃんと行くと約束した覚えがあるけれど?」


「いやいや。直前に投げ出されたりでもしたら、旦那様がおっかないんすわ。悪魔がどうのって〜」


「私めには、貴殿の言動の方が不安ですぞ。悪魔等と」


「そんなのジジッ…セバスが気にすることじゃないっしょ」


「ジジ…?なんですかな?」


「ジジィなんて言ってないっすよ。全く。これっぽっちも」


ボロが出るにしても、出過ぎでしょう。

どれだけ相性が悪いんだ、この二人は。

これでは一向に話が進まない!!


「はいはい、それじゃあ行きましょう」


「お嬢、"はい"は1回が基本っすよ」


「そういう"はい"じゃないわよ」


「え?じゃあどういう?」


「この馬鹿者めが…お恥ずかしい事この上ない…」


はい。私とも相性が悪いらしいですね。

未だに言葉の意味が分からない、そんな顔をしている。

なんだか大きな犬みたいな人かも。直ぐ噛み付くけど。



「んじゃ、さっさと行きましょーよ。俺こう見えても忙しいんで、早くしてほしいんすわ」


コイツ…誰のせいだと思ってるんだ…?

いや絶対私のせいだと思ってるわ。十中八九そう。

だってそんな顔してるもの。もう顔に書いてあるってくらい。

こういうのをきっと、そういう風だ(顔に書いてある)と言うんだろう。


「…なんすかお嬢、俺ん顔見て」


「いえ、何でもな」


「あー惚れちゃいました?いやぁサーセン悪魔はちょっと」


「煩いわね駄犬が」


「え、駄犬…?犬じゃない…あ、駄目でもないっすよ!!」


いけないいけない、私としたことが。

うっかり強い口調が…でもちょっとロベリア様っぽくて格好良かったかも……


「…って、違う違う!犬なんてどうでもいいのよ」


「どうでもよくないっすから!」


「早く行かないと、お父様がお怒りになるんでしょう?」


「あ!!そっすね、そっちの方が大事っす。早く行ってください!」


行ってください…?

「連れて行く」のは、どこへ行ったのやら。



場の流れを切るように、セバスが一息、咳払いをする。


「…お嬢様、もう彼の相手は十分でしょう。私めがご案内いたします故」


「そうね、頼むわ」


その通り。これ以上時間を食われる訳にはいかない。


「あ、セバスが連れてってくれるんすか?」


「何の為に私が此処に居ると…いえ、また長くなりそうなのでやめましょう。私がお連れします。貴方は持ち場に戻ってください」


「うっす、頼みましたからね!」


「んじゃ。あく…お嬢っすね、さよなら〜」


そう言って、バトラーは足早に部屋を後にしていく。

セバスは頭を抱え、また首を横に振っている。

これは、悩みの種が尽きなそうだ。




「それではお嬢様、参りましょう」


そう言って私の方へと向き直した彼は、普段の凛々しい様子に戻っていた。

ここで私が心配しても、彼の言った通り、また長くなるだけだろう。

今はとりあえず、彼の言葉に甘えることにしよう。


「ええ、お願いね」


そうして、セバスに一歩ほど先導される形で、自室を出た。

庭に向かった日、掘り出し物探しをした日の廊下を通る。


しかしその先、2階は私にとって未知の領域。

昼食に向かうだけでこんなに手間取るなんて、思いもしなかった。

だけれど、案外悪くない日常に思う。

この先、お父様やお母様とも、そうで在れるだろうか。

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