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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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25/81

<第25話> お嬢様、噂をすれば何とやらです。

私とセバスは、暫しの間ティータイムを楽しんだ。

お互いに言葉を交わし、今では彼に対して、信頼という気持ちを覚えている。


…胸が温かい。

これはきっと、『嬉しい』という感情だろう。

体を包み込む様な、優しい温もりを感じる。


「お力になって見せましょう」と、友好関係を示してくれたセバス。

嬉しいのは、それだけではない。

ルリは「それだけあなたの言葉が、彼に響いた」と言った。

約束通りの一人きりの場ではなかったのに、わざわざ教えてくれた。

それが、それだけなんだけど、 …嬉しくて。

私、きっと上手くやれてるんだって思えてきて。

つい顔が綻んでしまう。

頑張ります。きっと、この調子で、ロベリア様をお幸せにしてみせます。

一人 胸の中、そう誓う。




歓談の後にセバスは、朝食とお茶を片付け、自分の仕事へと戻っていった。

私に世話役がついていないことを申し訳なく思っていた様だが、彼は執事長。

自分の仕事もしてもらわねばならない。

何かあれば呼ぶと約束し、持ち場に戻ってもらった。


残されたのは静寂。

部屋には私一人きりだし、今度こそルリと王子対策でも考えようか。

しかしどう切り出したものか。

また「堂々としろ」と言われて、終わりやしないか。

そんなことを思いながら、椅子に着いていた。

だが静寂は、そう長くは続かなかった。



トントン、そう扉が音を立てたのだ。

セバスが戻ってきたのだろうか?

問題ないと伝えたつもりだったのだけれど。


「どうぞ」


そう言葉を返すつもりだったのだが、その言葉を掻き消す様に、扉は音を立てながら勝手に開け放たれる。



その瞬間に気が付く。

聞こえてきた()()()()()2()()だった。


いつもセバスは3()()ノックする。

前世の知識で言うなら、ノック音が少ないのは、マナーに違反する。

あのセバスが、そんな初歩的なミスをするはずがない。

ましてや、部屋の主の返事も待たずに、扉を開けるなど。



私は緊張した面持ちで、扉の方を見やる。

一体誰が、何の用事で?



そこに姿を現したのは、上等な使用人服を着た男性だった。


セバスの外見は、初老を少し過ぎたくらいの厳格な印象を受ける男性。

それに対して現れたのは、三十路には見えるものの、ハツラツとした印象の男性。

同じ執事服だが、セバスより少しばかり上等そうに見える。

彼はもしかして、以前話に出ていた…


「…バトラー?」


そう言葉を投げ掛けられ、その男は鼻でフッと笑う。


「あー、そうっすけど?なんすか、物珍しいもの見るような顔して」


そう言って、嘲る様な表情を浮かべる。

言われずとも、言葉の端々と態度から分かる。


彼はセバスが以前話題に出していた、家令のバトラー。

何となく予想はしていたが、相対してハッキリした。

彼は()()()ロベリアを見下している。


「…はぁ」


つい私は、溜め息を零してしまう。


家令とは、簡潔に説明するなら、その屋敷の全使用人の長。

執事の上に執事長。

メイドの上にメイド長。

さらにその上、執事長やメイド長を統括する長だ。


なんだろう。

つい先程までセバスを相手にしていたせいか、より幻滅したというか。

全使用人のトップが、この態度とはね…。

これは使用人達が影響されるのも仕方がない。

まぁかくいうセバスも、初めて会った時は大差は無かったか。


「何考えてるか知りませんけど、人の顔見て溜め息とかやめてもらっていいすか。悪魔には分かんないかもしんないっすけど」


…いや、これはセバスよりも確実に酷い。

相手を見下していたとして、セバスは自身の毅然とした態度こそ崩さなかった。

だというのに、()()()()()()()か。

いやなんか、もうちょっとプライドとか無いんですかね。溜め息吐かれる以上の。もっと大切なもの犠牲にしてません…?


「何黙ってんすか?あー、分かりました分かりました。悪魔は喋れないんすか?それウケますね」


いや全然ウケないから。

あの完璧人間(しごでき)のセバスの上司が、こんなチャランポランなのかと失望しているところだから。

セバスは「頭が硬い奴」だって言ってたと思うのだけれど、その評価は大分甘いんじゃないかとすら思えてくる。


そういえば。

アベルがセバスを詰問した時、セバスはあれを「旦那様の真似事」と言ってたことを思い出す。

…あー、うん。なんかこの人なら叱られてそう。

なんとなくイメージ出来る気がします。悲しきかな、納得も出来る。


私は失望のあまり、掛けるべき言葉が見当たらない。

ついでに表情も。



私が暗い面持ちで押し黙っていると、彼は痺れを切らしたのか、より乱暴な口調で話し出す。


「何無視してんだよ、悪魔のクセに生意気なガキだな」


う〜ん、いい加減 私も腹が立ってきたかも?

どれだけロベリア様を侮辱すれば気が済むんだコイツは。

というか、ず〜っと悪魔悪魔って煩い。しつこい。

そろそろ『お前はオウムか!!』ってツッコミを入れてしまいかねない。


…黙っていても仕方がないか。

そう思いながら、私はようやく言葉のキャッチボールを試みることにした。


「悪魔なんて、この部屋には居ないのだけれど」


「はぁ〜?お前しか居ないだろうが」


「貴方がガキって呼んでいい人も居ないわ」


「だからお前だよ、悪魔のクソガキが」


そう言って、大きな舌打ちをする。

隠す素振りなんて一切無い。


もしかして、これ、会話として成立しているか怪しいのでは?

キャッチボール…?

ドッヂボールの間違いじゃないの、これ。


「はぁ…」


「だからその溜め息やめろっつってんだろ」


「あー、はい。溜め息は失礼よね。ごめんなさいね」


なんだこれ…本当に面倒臭い人だ…

セバスが恋しい……


「それで、何か御用なの?」


「用も無しに、こんなとこ好き好んでくるかよ。家令なんだぞ俺は」


あまりの横暴さに失念していた。

そうだ、彼は()()()()家令だ。

もしかして重要な要件だったりする…?


「やっと本題かよ、長ぇんだよ」


貴方のせいでね。


「…?今なんか言ったか?」


「いえ、何も」


心の中では言ったけど。


「旦那様が昼食に呼べっつーから来たんだよ」


「昼食に…?」


「そうだよ、文句でもあんのか?」


「いえ、文句なんて無いわ」


ロベリア様のお父様が、ロベリア様を昼食に…?

確かロベリア様は、ご両親から快く思われていなかったはず。

ゲームでもそうだったし、アベルもそう言っていた。

セバスとの話でお父様の話題は上がったけど、これが噂をすれば…ってやつなのかしら。

まさかこんな急に会う、しかも呼び出されることになるとは。


「坊ちゃんの駄々だとよ。なんでも『お姉様と一緒じゃなきゃ食べない』らしい。そんで、実際に朝食もすっぽかしてな。困った旦那様はそれを聞くしか無かったってわけ」


「アベルが…」


随分と無茶な駄々を捏ねたのね…。

しかし朝食を食べていないとは、これは行かない訳にもいくまい。


 が。


「お父様は誰を昼食に呼べと?」


「はあ?だからお前だよ」


「お前…はて、誰のことでしょう?」


私は頬杖を付き、とぼけてみせる。


「あぁ…?」


そう、一見私が不利に見えるこの状況。

実は私が優位なのだ。

この屋敷の主人ことお父様に、私を連れてこいと命じられた目の前の男は、どうにかして私を昼食に参加させなければならない。

私が脱走でもして参加しないものなら、お叱りを受けることだろう。

ならばこの際、お前呼びとか悪魔呼びくらいは、解消してやる腹づもりという訳だ。


「どうしましょう、私はお出掛けしようと思っておりましたのに〜」


わざとらしく言って見せれば、バトラーは途端状況を理解する。

今の私は簡素な室内着。

とてもお父様の前に出せる姿ではない。

仮に強引に引きずって行ったとしても、場にそぐわない格好。

そんな方法を取るのなら、少しくらい暴れてやるつもりだし、そうなってはいよいよお父様のご機嫌が恐ろしいことだろう。

彼は最低でも私に着替えをさせた上で、昼食に参加させなければならないのだ。


「おい、昼食が…」


「誰のです?」


「お前、いや、悪魔…」


「どちらも心当たりがありませんねぇ」


「は…?」


「では私は関係ない様なので、失礼したいなと」


「……チクショウ!俺の負けだよ、ったく…」


おやおや。思っていたよりも根負けするのが早かった。

もう少しくらい粘ってやろうと思っていたのに。

しかし降参宣言とは、これは一周回って潔いかもしれない。


「お嬢、旦那様が昼食にお呼びだ。着替えて参加してくれ」


彼はぶっきらぼうに、面倒臭さを隠さずに言う。


「あら、もっと早く私だと言ってくだされば宜しかったのに!」


「こんのクソガキ…小賢しい……」


「クソガキ…?小賢しい…?えっと昼食はぁ〜」


「すんません何でもないっす」


「あら、そう?」


「うっす…あ、はい……」


ここまでくると逆に面白い。

だが時刻は、もう昼食の頃合いまで迫ってきている。

アベルが朝食を取っていないのなら、早められる可能性だってある。

我が弟の為だ、早めに向かわねば。


「では昼食へ向かう準備をしようかしら」


そう言って、ようやっと席を立つ。


「…本当(マジ)っすよね?」


…何やら疑心暗鬼の様子だ。

両手を分かりやすく捏ねている。

揶揄いすぎて、思わぬ弊害が出てしまった。


「もう本当に!貴方ってばしつこい!!」


「だ、だってこれが嘘だったら叱られんの俺っすもん!!」


「行くったら行くから、出ていって頂戴!!」


最終的に、ギャーギャー喚く彼の背を押し、部屋から追い出す羽目になった。

今度からは揶揄うのは程々にしよう…。




しかし。ロベリア様のご家族の食卓、かぁ。

私は初めてご両親にお会いする訳だけれど、大丈夫だろうか…?


 うーん。悩んでも仕方がない。

『行く』しかないだろう。

一応約束もしたことだし、私は小さな腹を括る。

元よりロベリア様のご両親が気になってはいたのだ。

折角向こうからお呼び出しがきたのだから、この絶好の機会を逃すという手はない。


しかし、お食事にはどんなお洋服を着ていけば…?

…しくじった。バトラーに聞いておくべきだったかも。

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