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悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

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<第莠悟香話> 關ス荳九☆る、漆黒。

私は白い花瓶を抱え、自室に向かっていた。

今の感情を、うまく表現できる言葉を知らない。

強いていうのであれば、それは”絶望”。


まさか、ロベリア様こそが聖女だったなんて。

神託をどうしてやろうとか、考えていなかったわけじゃない。

だけど、まさかだよ、自分が真の聖女だったなんて。

それは想定外だった。


だって、あまりにも報われないじゃないか。

救われないじゃないか。

一途に想っていた相手に悪魔だと蔑まれ。

その相手の心を射止めたのは、偽の聖女で。

王族は聖女と婚姻を結ぶ慣わしなら、彼女は想い人と結ばれるはずだった。


なんで?どうしてそんなことが?


感情の整理が追いつかない。


フラつく足で、自室へと向かう。



自室に到着し、扉を開けようとした時、丁度出てきたカミラと衝突してしまった。

私は花瓶を抱え、受け身も取ることなく、床に倒れ込んだ。

それに驚いたメイドたちが、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

…でも、あぁ、今は少し、起きていたくなくて。

私はそのまま、遠のく意識を、抵抗することもなく手放した。




目が覚めた時、そこは暗闇だった。

私が死んで、ロベリアと初めて会った時の場所と似ている。


ただ顔を臥し目を瞑り、膝を抱えて蹲っていた。


そうしていると、映画のテープが回るような音が聞こえてきた。

カラカラ、カラカラと。


目を開けると、床が明るくなっていることに気付いた。

そのまま顔を上げると、私の目の前には、映像が投影されていた。



「待ってよリア!」


「そう仰るなら、捕まえてご覧になって!ノワゼット!」


そう言って、ノワゼットがロベリアの背を追っている。

背格好からして、まどプリの本編、魔導学院高等部生の二人だ。

二人とも熱のこもった声でお互いの名前を呼んでいる。

あのノワゼットが、ロベリアを「リア」と愛称で呼んでいる。

あんなに必死に追いかけるだなんて、ノワゼットはロベリアに対して、それだけ胸を焦がす様な想いを抱えているのだろう。

それをコロコロと笑ってかわす、ロベリア。



やがてノワゼットが追いつき、後ろからロベリアを抱きしめる。


「今度こそ捕まえたよ、俺のリア」


「あら、もう捕まってしまったわ」


「そんなに残念がるなよ。それとも、俺とこうしているのが嫌だって言うのか?」


「嫌なわけないじゃない、私だけの王子様なんだから」


そんなことを言って、笑い合う二人。

なんて甘酸っぱい青春なのだろう。


「リアの髪は綺麗だ、瞳も。どんな輝きも吸い込んでしまいそうな色だよ」


「それじゃあノワゼットが吸い込まれてしまうわ!」


「そうかもね、いつか吸い込まれていなくなってしまうかも」


「そんなの嫌よ!ひとりにしないでノワゼット」


「冗談に決まってるだろう、俺がリアをひとりにするなんてことあり得ないんだから」


「女神様に誓っても?」


「ああ、女神様に誓うさ。だから泣かないで、大切なリア」


ロベリアの容姿を褒めるノワゼット。

置いていかないでとしおらしく泣いてしまうロベリア。

女神に誓って、彼と彼女は一生を共にするのだろう。



「ふざけないでちょうだい!!」


ロベリアの大声が響く。


途端に空間は暗闇に支配され、彼女らの幸せな姿も消えて…


「私、あんな幸せ望んでないわ」


怒気に満ちた声は続く。


私は、その方向を見る。


そこには、悪魔となった姿のロベリアがいた。



「…わるい夢かな?」


私は彼女に対して、そう呟いて、頭を傾げる。

そんな私に彼女は、怒りをぶつけるかのように声をぶつける。


「そうよ、悪い夢だわ。あんなもの、いらないんだから」


その言葉に、私は彼女に掴みかかる。


「…あんなものじゃない、いらなくなんかない!!」


私は自分の感情が噴出するのを、止める手立ては持っていなかった。

だからそのまま、彼女にぶつけた。


「ロベリアは幸せになるんだ!ノワゼットと結ばれて、誰よりも愛されるの!!」


「そうじゃないと、そうじゃないと…おかしいの…!」


私は掴みかかった手を緩め、そのまま膝をついた。


「私は、ロベリアは、幸せにならなきゃ。だって、本物の聖女なんだもん。だからっ」


「ロベリアはノワゼットと結ばれなきゃ…」


パンと、平手の高い音が響く。


私は、ロベリアに、平手打ちされていた。

それを理解するのに、数秒は要した。


彼女は重い口を開く。


「あなたは私よ、ロベリア・レイラ・クロートーなのよ」


「でもね」


「あなたはミヤビでも、あるじゃない」


彼女に向き直る。

ロベリアは、確かに怒った表情ではあった。

だがそれよりも、辛く苦しそうな顔で私を見つめていた。


「ロベリア、様…」


「いい、ミヤビ?しっかり聞いて」


そう言われ、私は黙って首を縦に振った。


「あなたはあの、『悪役令嬢ロベリア』なのよ。もっと好きなようにしたらいいじゃない」


「でもあなたはミヤビでもあるんだから、ノワゼット以外を選んだっていいの」


「ねぇミヤビ、もっと好きなように生きたっていいの。それが悪役令嬢なんでしょう?」


「あなたが見てきたロベリアじゃない、私は、あなたが何にも囚われずに幸せになるのを見たいのよ」


そう言って、ロベリア様は私の方を突き飛ばす。

まるでビルから落下するように、私は堕ちていく。

ロベリア様は、そんな私を見ていた。




そして最後に言った。


「どうか私にも、縛られないで」


その顔は、ひどく悲しそうな笑顔だった。


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