<第18話> お嬢様、掘り出し物を探します。
私+メイド三人衆は、その日のティータイムを早々に切り上げた。
それは何故か?
そう!私たちはこのお屋敷内から、掘り出し物を発掘する権利を得たからだ。
皆動きやすい服装に整え、三角巾を口に巻いた、完全武装でそれに挑戦する。
待っていてね、未だ見ぬお宝さん!!
ーというわけで、メイドたちの案内を元に、私はめぼしいものがありそうな部屋を探る。
木箱が積み上げられた部屋が近くには多いのだが、そこから大広間の方へ向かうと、家具や調度品がしまわれている部屋があるのだとか。
うーむ、どんな家具を狙うべきか。それすら悩ましい。
…だって自室には、必要最低限の家具しかないからね!!
しばらく歩いていった先で、ジェシーが声を上げる。
「お、お嬢様。こちらのお部屋はいかがでしょうか…?」
その部屋の中を見てみれば、大小様々なソファーが並んでいた。
なるほど、ソファー。
「ナイスよジェシー、少し見てみましょう!」
「は、はい!!」
私たちは先ず、その部屋から探索を始める事にした。
が。
とにかく埃っぽいのだ。
三角巾の簡易マスクがなかったら、今頃むせ込んで探索どころじゃなかっただろう。
さらには破けたもの、カビが生えているものまである。
本当にお宝は眠っているのだろうか…?
そうしているうちに、カミラが声を上げる。
「ここはどうにも、ハズレ部屋のようでございます。家具の管理が行き届いていないものが多く、管理が杜撰なものが多い可能性が高いかと」
それに対して、ジェシーは少し項垂れる。
「そんなぁ…」
「また次を探しましょう。今は一旦掘り出し物よりも、新品に近いものを狙った方がいいのではないかと思うの」
そう意見すると、ローラが手を上げる。
「それなら心当たりがあるかもしれませんわ!少し前に、お2階で使われていた家具をしまったお部屋がございましたのよ」
ふむ、これは有意義な情報かもしれない。
「ではそちらに向かってみましょう、案内は任せるわね」
「はい!お任せ下さいまし!」
ローラは軽やかな足取りで、その部屋へと案内を始める。
そこはかなり大広間に近い位置にあった。
部屋を覗いて見ると…先程よりもずっと埃っぽさが薄い!
これは新品があるかもしれない。
そう思った矢先だった、カミラから注意が飛んだのだ。
「この部屋はいけませんね、他のお部屋から探しましょう」
「カミラ、どうして?」
「お嬢様であればご存知ないでしょうね。ここは基本的に季節で入れ替えを行う家具を、一旦しまっておくお部屋なのでございます。ですので、こちらから持ち出した場合、なんらかのトラブルになることも最悪想定されます」
「そう…ならここは避けたいわね」
「それよりも、ローラ?」
カミラに名前を呼ばれたローラは、ギクリと肩を震わせる。
「お嬢様が知らないのは無理もありません。しかしお屋敷、お部屋の管理をする使用人がお部屋の中を把握していないとは…お恥ずかしいことですよ、以後気を付けなさい」
「はぁい…」
今度はローラまで意気消沈してしまった。
「…誰にだって失敗はあるもの、次に生かしましょう!次よ!」
「それでは…」
カミラが声をかけてくる。
「今度は私がお部屋を選んでみましょうか」
これは年の功パワーで解決できるパターンでは?
「是非お願いするわ」
私は即答していた。
そしてカミラの案内で到着した部屋は、物が雑多に押し込められたような部屋だった。
大小様々な家具があちこちにある。
私たちは今度こそと息巻き、部屋を漁り始める。
「これは…!!」
結果としては、なかなかの収穫だった。
何と言っても、4人がけのダイニングテーブルが発掘されたのだ。
もちろんダイニングチェアもセットで。
自室は物こそないが、広さはそれなりにある。
このテーブルやチェアも容易に収まるサイズ感なので、とても都合が良い。
その他にも、二人掛けソファー、ベッドのサイドテーブル、ベッドランプなどなど。
さらには私は遠慮したのだが、メイド三人衆の強い推しで、天蓋付きベッドまで。
大きいものや埃を被ったものもあるので、運び出しと運び入れは後日ということになった。
これを大収穫と言わずして、何と言おうか。
掘り出し物こそなかったが…
「ヒゥ、ヒグッ…」
一瞬、何かの音が聞こえた気がする。
音というか、啜り泣く声…みたいな。
でもどこか奇妙な音。
私はそこで立ち止まる。
しかしメイドたちは、何も気が付いていない様子だ。
おかしいな、結構ハッキリ聞こえたはずなのだけれど…。
「ちょっと、みんな…?」
そう呼び止めると、三人とも全員不思議そうな顔を浮かべていた。
「ど、どうか致しましたか?お嬢様…」
心配そうな顔までされている。
これでは不安にさせてしまうだけかもしれない。
「その、忘れ物しちゃったから…一度戻ってくるわ。三人は先に部屋に戻って、セバスに報告するための書類をお願いできるかしら?大丈夫、すぐに戻るから!」
そう言い切り、声の聞こえた方向に走っていく。
あの声は、木箱のある部屋の方から聞こえた。
一体誰が、正体は?
木箱が積み上がる部屋のうち一つ、そこから未だに聞こえ続けている。
子供がメソメソと泣くように、その声か音かを響かせている。
部屋に入ってみれば、部屋の奥の木箱の中から、それは聞こえてきていた。
私はその木箱を、慎重に開ける。
木箱の中にあったのは、一輪挿しの花瓶だった。
陶器で出来ている、真っ白で美しいものだ。
しかしその花瓶の周囲には、黒い帯のような光が纏わりついていた。




