表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔堕ちの聖女様 〜転生お嬢様が推しの未来を切り拓いて魅せます〜  作者: 鰐之川 犬太郎
Ep.1 お嬢様、異世界転生致しました。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/81

<第16話>お嬢様と、メイド三人衆ですの。

「ちょっと!そんなに急かさないでったら!!」


そう言う私をお構いなしに、メイド三人衆はグイグイ押して来る。


「このローラ、お嬢様のお髪の手入れをしてみたかったのです…!楽しみでなりませんわ!」


いやはや、全く聞いてくれる様子がない。

三人揃って、ここまで乗り気だとは…!?

こうなったら『乗りかかった船』という慣用句を思い出す。

今がまさにその時なのかもしれない、覚悟を決めよう。うん。




メイドたちに背を押されながら、自室から廊下に出る。

私を部屋から追い出すと、三人揃って後から着いてくる。


今度はジェシーが先頭に立ち、忙しなく隣の部屋の方へと向かう。

そしてその扉のノブを持ち、こちらを伺う。

私の背は、カミラにしっかりガードされているので、私に進む以外の選択肢はない。


「逃げも何もしないったら… それで、そこの部屋が…そうなの?」


そう言って周囲を見ると、メイドたちはパァッと明るい顔を浮かべる。

そしてその笑顔で、ウンウンと大きく縦に首を振る。

その中でもカミラは、より一層自信がある様子で胸を張り、言葉をかけてくる。


「セバス殿とは何があったのか、お話で伺いました。彼は大変考え込んだ様子で、お嬢様のためにと動いていらっしゃいました。そのうちの一つが、こちらのお部屋の準備でございます」


その後ろから、ローラも会話に参加してくる。


「そうですわ。とっても素敵になりましたから、損はさせませんのよ」


「ジェシー!扉を開いて差し上げて!」


ローラがそう声を大にすると、ジェシーがそれにうなづく。


「お、お嬢様!こちらです…っと」


そうして開かれた扉の先には、昨日とはまるで違う光景が広がっていた。



そこにあったのは、床一面タイル張りの部屋。

壁も、大量の荷物がなくなったことで、漆喰の壁が露わになっている。

そして入り口側には大きな仕切り板があり、それ以上はここからでは見えない。

それでも、昨日まで埃を被っていた部屋だとは到底思えない。


この部屋の変わりように驚いていると、メイド三人衆がまた背を押してくる。


「お嬢様、その、段差にはお気をつけて…」


「ささ、お早く中に入って下さいませ」


「中はもっと素敵ですのよ!」


かけてくる言葉は三者三様。

これまた、性格まで全然違う三人が集められたみたいだ。

彼女らの思い思いの言葉を受けて、私は中に入ることにする。


私は前世で名のある企業の令嬢ではあったが、こんな何人にも囲まれて、お風呂の世話をされたことはない。

未知の世界、初めての経験だ。

しかし『公爵令嬢』として生きていくには、これは避けて通れない道だろう。

ロベリアはそうでなかったと今なら確かに思うが、一般的な令嬢は日常の一部であるものだろう。

であれば、慣れておくのも悪くないだろう。

私は心の片隅の羞恥心にそう言い訳をして、それっぽい方向に舵を切る。



入り口と仕切り板の間を縫うように、部屋の中に入る。

そこには立派な陶器製のバスタブがあった。

成人男性でも余るような大きなサイズ。

それでいて、表面はつるりとしていて、その存在だけで高級感を感じさせられる。

その上、バスタブの足などの意匠も非常に凝ったものだ。

まさか私のために、こんな豪奢なものが用意されるとは思わなかった。

それともこの家では、この程度安いものなのだろうか…。


だがその中から、一つの違和感を感じる。

この部屋の床には、排水口のようなものがある。

それに反して、吸水口が見当たらないのだ。

バスタブに蛇口のようなものは付いていないし、壁にシャワーのようなものもない。

いったいどこから給水を…



私の考えごとに対して、お構いなし。

そんな様子でメイドたちは、私の周りを忙しなく移動する。


一体何をしているのかと見てみれば、各々違った準備をしているようだ。


ジェシーは、窓際の壁を探り。

カミラは、バスタブの下を拭き。

ローラは…特に何もせず、私の側で二人と私のことを見やっている。


ローラの方を見れば、彼女は私にニコニコと笑みを返す。

全く何もしないでいるというのも居心地が悪く、私は彼女に笑みで応えていた。


そうこうしている間に、準備が整ったのか、カミラとジェシーが集まってくる。

そしてローラに、「少し離れるように」と促される。

私はその指示に従って、壁際の方へと後退する。


まずはカミラが、バスタブの方へと近付いていく。

そしてバスタブの側に屈んだかと思うと、懐から何か取り出した。

あれは…チョークだろうか。

彼女はそれを持ち、バスタブの下に何かを描いていく。

その手先を目で追って見れば、魔法陣のようなものを、素早く繊細に描き上げていた。

魔法陣を描き終えると、カミラは何かを呟き始める。

聞き取れこそしないが、これはおそらく〝祝詞詠唱(ティポス・スペル)〟…つまりは『魔術』だ。

部屋に効果を及ぼすものだろうか。

しかし、彼女が魔法陣を描いたのは、バスタブの下だ。

であれば、変化が起こるのはバスタブ…?

そう思った私は、バスタブを注視していた。

…特に何かの変化は感じない。勘違いだったのか。

そう思い始めた頃、カミラの言葉が止まる。

するとバスタブの底から、フツフツと水が湧いてきたのだ。

やがてその水位は上がり、バスタブにちょうど良いくらいまでの大量の水が現れた。


私はカミラの魔術に関心を持っていた。

しかし次の出番はと言わんばかりに、ローラがバスタブへ歩を進める。

そしてバスタブの水の中に、スッと手を潜らせる。

今度はいったい何が見られるだろうか。

私の心は、魔導の世界に揺らされていた。

ローラがその赤い瞳を閉じ、一瞬何かを呟いたのが分かった。

今回は〝略式詠唱(アティポス・スペル)〟 による『魔法』だろう。

数瞬の後、バスタブの水面に、泡が浮かび始める。

その横から、カミラが何かを放り入れた。

徐々に水面に上がってくる泡は増えていき、次第に熱気を発し始める。

そして気付けば、ボコボコと音を立てる水は、泡をも纏い始めていた。

ものの二分もあったかという短い時間の中で、そうして泡風呂が完成していた。

きっと途中でカミラが投げ入れたのは、この泡を完成させるための石鹸かバスソルトか。

ローラがその手を中心として水を急速に温め、その最中に混ぜ合わせることで、効率よく泡風呂を作り上げたのだろう。


それが終わる頃には、部屋にはそれなりの熱気がこもっていた。

すると窓際から、コンコンと音がした。

振り向いてみてみれば、ジェシーが木琴のバチのような物で、壁の何かを叩いていた。

壁に設置されたあれは…換気扇にとてもよく似ていた。

だがそれを回すためのスイッチ、紐の類は見当たらない。

ジェシーには、何らかを詠唱した様子はなかった。

しかし、()()()()()()()()()()()()()という行動を起こしていた。

…であれば、あれは『魔道具』だろうか。

『魔道具』は一般的に魔術が組み込まれた道具で、所定の操作をすることで活用できるのだと、ゲームの紹介で読んだ。

あれはきっと生活魔道具、暮らしを豊かにするためのごく一般的なものだろう。

とは言っても、制作工程が多いことから、安くはない物のはずだ。

これも公爵家パワー、だろうか。




そうこう考えていた私に、側からカミラの声がかけられる。


「さぁお嬢様、お召し物はこのカミラがお預かりしますからね」


「…へ?」


その間にもジェシーとローラが、私ににじり寄るように迫ってきていた。


「し、失礼致します!!」


「「さぁお覚悟ですわ、お嬢様!!」」


そう言って二人は私の着衣を取り上げていったのだった。

覚悟をしていたつもりだったが、これは案外恥ずかしい…!

慣れるには、まだまだ時間がかかるかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ