【01 長谷川涼とダメグラ】
・
・【01 長谷川涼とダメグラ】
・
何も無い真っ白い空間で、白い箱のようなイスに座る二人の男性。
はす向かいで対面している。
長谷川涼「始まりましたね」
と水色の髪の毛の男性、長谷川涼が喋り出すと、矢継ぎ早に黒髪ツンツンの男性が嫌な目つきで口を開いた。
ダメグラ「記念すべき最初の一言なのに、それでいいんだ?」
長谷川涼「スタートから喧嘩腰かよ」
ダメグラ「いやいや、涼がそれでいいんだったらそれでいいけども」
長谷川涼「いやもうやり直せないだろ」
ダメグラ「創作物だったら何度でもやり直せるだろ、改稿で」
長谷川涼「もうメタじゃん」
ダメグラ「いや文章上の存在とかじゃなくて、映像作品とかも全部そうじゃん。ドキュメンタリー以外は。いやドキュメンタリーもやり直しているだろうし」
長谷川涼「憶測で悪口言うの辞めろよ」
ダメグラ「ドキュメンタリーも相当やり直していると思う」
長谷川涼「偏見じゃん」
黒髪ツンツンの男性は溜息をついて、少し間をとってからまた喋り出した。
ダメグラ「閑話休題。最初の一言、凡庸丸出しのザクでいいんだな?」
長谷川涼「ザクは喋らないだろ」
ダメグラ「揚げ足取りはもういいんだ、それでいいんだなって話!」
長谷川涼「……というわけでメタメタにしてやんよ! スタートです!」
ダメグラ「ちょっと待てよ、司会みたいにすんなよ」
長谷川涼「いいじゃん別に。というか俺とダメグラだったら俺が司会者でしょ」
ダメグラ「それはまずこっちの説明しないと分からないことだろ」
長谷川涼「当事者間では分かってるんだからいいでしょ」
ダメグラ「まずは説明して、お伺いを立てるわけじゃない。読んでる方々に」
長谷川涼「誰も読まないでしょ、アップロードするかもまだ決めていないのに」
ダメグラ「こちらはテキスト・トーク番組『メタメタにしてやんよ』で、オレことダメグラと、オレの目の前にいる、髪の毛の色を水色にしているだけの凡人・長谷川涼の二人で不定期にやっていきます。今日は2024年1月23日!」
長谷川涼「元気に日付を言うな。何、司会してんだよ、俺でしょ」
ダメグラ「というわけでオレから説明していくと、この文章という形で記録しているマスター、まあ投稿した作者ですね、この投稿者が小説を書く以前からお笑い芸人のピンネタの台本を書いていて、オレはそのピンネタのシリーズモノである、ダメ人間の妄想シリーズの主人公でした」
長谷川涼「がっつり説明するんだな」
ダメグラ「で、オレはそこからこの、この投稿者の資料が集まる資料王国という場所にやって来て、いろいろ活動しているわけです」
長谷川涼「だいぶメタだなぁ」
ダメグラ「ありがとう」
長谷川涼「褒めてはいない、メタってありがちでもあるから」
ダメグラ「いやでもメタは高次という意味だからさ、高次元だなんてありがとう」
長谷川涼「そんな意味合いで言ってないし、じゃあ俺もそうなんだよってなるから。俺は、変なキャラクターが俺たち仲良し三人組の元にやって来るというギャグ漫画のキャラクターでした」
ダメグラ「涼もメタじゃん」
長谷川涼「ダメグラだけメタなんてことないでしょ、俺もバックボーンあるから」
ダメグラ「でもさ、涼のギャグ漫画は完成しなかったじゃん。対するオレは作品いっぱいあるからオレのほうが偉いよな」
長谷川涼「そんなことないわ、こっちの世界での関係性で言ったら、ダメグラがグチグチ言うヤツで俺がしっかり者じゃん」
ダメグラ「今まではな、でもこれは初回だから。ここから読者は知るわけだから」
長谷川涼「でも最初にまず喧嘩腰でやって来るヤツが司会者のはずないでしょ」
ダメグラ「高圧的ということはオレが上の立場ってことなんじゃないか?」
長谷川涼「その理論、昨日から考えていたのか?」
ダメグラ「そういう印象操作は良くないぞ、この番組はマスターが今日思いついた、いわば思いつきじゃん。急にやることになったんだから、そういう嘘ツッコミはマジで良くないぞ」
長谷川涼「まあそうだけどもさ」
ダメグラ「というかさ、今はえっと、三人称になってる?」
長谷川涼「三人称じゃない?」
二人はどこか宙をキョロキョロ見上げてから、また視線を落とし、見合った。
ダメグラ「どっちかの一人称にして、主人公決めようぜ」
長谷川涼「マジで?」
ダメグラ「マジで。初心者は一人称のほうが視点がブレなくて書きやすいんだってさ」
長谷川涼「マスターは小説書き始めて、もう七年なんだから初心者ではないぞ」
ダメグラ「実績はアレじゃん」
長谷川涼「それはそうだけども」
ダメグラ「今のところ長編はマックスが四次落選じゃん」
長谷川涼「そう言うと選考のほうが長く感じるな。四次もあるんだっていう」
ダメグラ「コンテストの悪口は良くないぞ」
長谷川涼「そんなつもりでは言ってないわ」
ダメグラ「短編は一応次点の賞? マスター、合ってる?」
マスター「合ってます。ただ短編は大賞以外、最終選考落選みたいなもんですよね。すごいモノがもらえたわけじゃないです」
ダメグラ「いやモノもらったのにその言い草、コンテストの悪口は良くないぞ」
長谷川涼「マスターにも言うんだ、その流れ」
ダメグラ「転売しろ」
長谷川涼「絶対ダメだわ、マスターの名前入りの賞品だったからバレるし」
ダメグラ「というわけで初心者なので一人称にしようぜ、そしてオレが主人公をやる」
長谷川涼「逆にこれで三人称に慣れるというのもありなんじゃないかな」
ダメグラ「いいや、マスターは一人称の小説しか書いていないから、もうそれでいい」
長谷川涼「じゃあ一人称にするとして、主人公は俺がやるよ」
ダメグラ「何でだよ、オレがやるよ」
長谷川涼「まあ言い合いになるだろうから投票で決めようぜ」
ダメグラ「投票って何?」
長谷川涼「マスターのツイッターの投票機能でやればいいじゃん」
ダメグラ「誰も投票しないだろ」
長谷川涼「名前だけ出して、直感で押してくださいってやれば、どっちかは押してくれるんじゃないの?」
ダメグラ「マスターは誕生日ポストの『いいね』が7だぞ」
長谷川涼「じゃあ7人は押してくれるじゃん、すごい多いじゃん」
ダメグラ「いや誕生日で7人なんだから、そんな意味不明な投票はゼロだろ」
長谷川涼「でもそれ以外の決め方無くない?」
アゴに手を当てて悩んでいる風を醸し出すダメグラがまた口を開いた。
ダメグラ「……じゃあ自己紹介の文、考えよう。一行アピールはアリにしよう。何かオレの名前、名前だけだとダメっぽいからさ」
長谷川涼「まあダメ人間グランプリ優勝、略してダメグラだからな」
ダメグラ「待てよ、一行アピール、それぞれのほうを考えないか?」
長谷川涼「絶対蹴落とし合いになるじゃん、殺伐とし過ぎだろ」
ダメグラ「いやだから涼は正攻法でオレのこと紹介してくれたらいいから」
長谷川涼「何だよそれ、ダメグラの紹介文見てから、こっちも変えたいわ」
ダメグラ「それはナシ。よしっ、今から投票機能使ってやるか!」
長谷川涼「めちゃくちゃ怖いんだけども」
ダメグラ「じゃあとりまマスターはXのログインに移動な」
長谷川涼「というかダメグラ、ちゃんとXをXって言うんだな、ポストって言ってたし、ツイートじゃなくて」
ダメグラ「アップデートしてるから」
長谷川涼「価値観みたいに言うな、あんなスタートから喧嘩腰のヤツ、絶対ダメだろ」