エースの矜持 その8
――翌日、朝一番に『グランド・デポ』のサバンナコーヒーに行くと、シンさん達ご一行がモーニングコーヒを嗜んでおられました。
「おはようございまーっす」
「やあ、おはよう、みなさん、昨日はお疲れで」とシンさん。するとみんなは大テーブルに移動してそれぞれご挨拶。まぁ、あんまりのんびりしている時間は無いんですけれどね。
こっちに着くなりすぐにシンさんにスマホで連絡して待ち合わせしていたのだ。
「じゃあ、サファイヤさん、確かに2万マニーの金貨お預かりしました」と恭しく頭を下げるシンさん。
「いえいえ、本当にいいんですか?ハードデポよりも換金率よくしてくれて」と私。
実は最近、いちいちハードデポで金を交換するよりもこうやって直接シンさんに金の換金をお願いしてもらっているのだ。
「じゃあ、口座に振り込んでおきましたね」とシンさん。うわっ仕事速っ!!
スマホのアプリを立ち上げてみると私の口座に205万円のお金が振り込まれていた。
「確かに振り込まれました」とスマホの画面をシンさんに見せると、みんなニッコリ。すいませんね、5万円も色付けてもらって。
「じゃあ、行ってらっしゃーい」とシンさん。
「いってきまーす」と私達。
その場でサバンナブレンドを一気に呷ると、1階の太陽光パネルコーナーに早足に向かって行った。
――1時間後、
購入した太陽光パネルを、駐車場横にあるレンタルガレージに台車で運ぶ私達。全部が終わる頃には残り時間30分を切っていた。私は、エルウッドさんに『ピッツァマン デポ』でテイクアウトをお願いする。
今日のお昼は秘密基地でピザとしゃれ込もう。確かテイクアウト2枚目無料のキャンペーンやってたはず……と、その時、『天からの啓示』に通知のマークがついていることに気が付いた。そういや、昨日から来てたわね。
私はようやく一段落ついたついでに、その通知をプッシュ。
すると……ピロリロリーン♪と新しいスキルを獲得した音が出た。んっ?『同行』の人数が増えたお知らせか?
しかし、通知を見てみると、『同行』の人数も増えたこともそうだが、新たなスキル、『蔵(warehouse)』というものだった。
はてさてなんだべ?
運営さんに説明のヘルプを求めてみると、「この度は『蔵(warehouse)』の獲得おめでとうございます。この『蔵(warehouse)』は『グランド デポ』を発動させること無く、蔵一つ分のエリアだけ、こちらとあちらの世界が通じる魔法でございます」
「というと?」
「つまり、一回一回荷物を運ぶたびに『グランド デポ』を唱えなくても、例えばこちらのレンタルガレージの一角を『蔵(warehouse)』と設定しておけば、あちらの秘密基地の一角とも常時繋がっている状態になります」
「あらやだ便利」思わず口に出てしまった。
実は最近、デカ物の商品を購入することが多くなり、そのたびにベイルさんにお願いして『同行』で持ってきてもらっていたのだ。
「あれ……ってことは、蔵に冷蔵庫を置いておけばあちらでも使えたり?」
「はいできますよ」
「ちなみにその蔵の大きさって?」
「それはサファイヤ様の魔力に応じてその範囲も変わります。ちなみに今だと2m×2mですので畳2畳分くらいですかね」
「ほほーう、そりゃ便利だ。ってことは、この太陽光パネルも……」
「はい、蔵の場所を指定しておけば、いちいち持ち運ばなくてもあちらの世界から直接もってこれるようになります」
「わーお、便利!!ですって!!」と運営さんの説明を一緒に聞いていたみんなにも話す。
「ほほーう、そりゃ便利だ」と、おそらく一番この魔法の恩恵があるであろうベイルさんが喜んでいる。
「ってことは、買い物してこの貸倉庫に入れておくだけで向こうからもいつでも物を持ち出せるんだ」とノエルさん。
「これは、思ってた以上に便利なスキルですねー」と感心したようにナジームさん。
「ちなみに使う魔力ってどのくらいですか?」と私。そりゃ、『グランド デポ』唱えた時と変わらなかったら微妙じゃないですか……ねぇー。
「はい、1MPで24時間効力が持続します」
「あらやだお得」
「しかも、サブスクリプション契約していただければ、1カ月20MPで永続的に使用可能となります」
「ほほーう、ちなみに『蔵(warehouse)』の中に置いてあるアイテムって私以外持ってこれるの?」
「はい、蔵の中に入ればどなたでもこちらにあるアイテムをあちらの世界に持って行けますよ」と。
「あらやだ便利」
「だったら、『蔵(warehouse)』のサブスク契約しちゃったら?」とノエルさん。
「うんうん、これ使えれば、工事の時めっちゃ便利になるわ」とベイルさん。
「毎日唱えるのも、サファイヤさん居なかったら不便ですしねー、それに一月あたり10MPお得っていいですよね」
「ちなみに今ですと最初の一か月分はMP無料になります」
「入ります!!」と私。
と、その時、貸しガレージの扉が開き「おう、ウインターカニカニクラブってカニ3倍盛りでよかったんだっけー?」と両手一杯にピザの箱を抱えたエルウッドさんがやって来た。




