お金が無いの! その7
…………そのまた翌日、
あんぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああああああああ……
バナナウ〇コぱくぱくもぐもぐwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
お金が無いの、お金が無いの、お金が無いの!
昨日まで仮想通貨に預けていたはずのお金がないのぉぉぉぉぉー、おっ、おっ、おっう、おっう……
ここはいつもの『グランド デポ 東京幕張店』内にある『サバンナコーヒー』
エルウッドさんには先に買い物に行ってもらって、私一人でノートPCを立ち上げて仮想通貨の残高を見てみたら、あら不思議。昨日まで黒かった数字が今見たら、なぜか赤い数字で13万8千円になっていた。アレレー、不思議だなー。
ついでにメールを立ち上げると、仮想通貨の取引所からメールが来ていて、「証拠金が不足しております。本日12:00までにご入金が無い場合強制措置になります」と……サファイヤ困っちゃう(四度目)
大丈夫、大丈夫、まだ慌てるような時間じゃなわわわあわわあわ……
一旦深呼吸よサファイヤ。だって私には小豆という力強い味方があるじゃない。とりあえず、仮想通貨の損失分を小豆で補填すれば、まだ、大丈夫。諦めたらそこで試合終了ですよ。
私は安西Tの名言で自分の心を奮い立たせる。絶対大丈夫だよ(ハート)
私は自分の心を落ち着かせて、小豆相場の残高をチェックしたら…………2万5千円(死んだ目)
サファイヤ、こまっちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……(五度目)
えっ、えっ、えっ、確か……いま、お口座には12万円くらい入ってたはずで……オサイフフフフには……2万円はいっててててててててて、えっと、えっと、えっと、今手持ちの現金で証拠金の不足分を入金すると……えっと、えっと、えっと、手持ちには……2千円なり。
おごえぇぇぇぇぇぇぇ……初老のおじいさんの寝起きのように嘔吐いてしまった私。こらっ、サファイヤ、お下品だぞ!(テヘペロ)オロロロロロロロロロロロロロ。
「大丈夫ですか客様」
私の異常な様子に近くにいた店員さんが心配してくれた。
「あっ、はい、大丈夫です」
私は涙を流しながらにっこりスマイル。
「そ……そうですか」と幾分引き気味の笑顔で足早に去っていった店員さん。あんまり関わりたくないと思われてしまったのかもしれない。
大丈夫、大丈夫よサファイヤ。勝負事は常に最悪を想定していればどうにか立ち回れると、この『レモン協同組合の愉快な仲間たち』にも書いてあったじゃない。
こんなこともあろうかと、そういう想定もしていたのだ。だからこれも想定内だから大丈夫!!
私はお財布から『ブラックデポカード』を取り出すと、カードをひっくり返し、禁断の呪文を唱える。
『デポクレジットー!!』テレレレッテテー♪
どこからともなくドラ〇もんの秘密道具を出すときのファンファーレが聞こえた。
この『デポクレジット』を使えば、今なら年利18.2%で最大100万円まで審査なしで即日融資ができるのだー、スゴーイ!!サファイヤ困っちゃうぅぅぅぅぅぅぅ(六度目)
「止めとけ!」
どこからともなくエルウッドさんの声が聞こえた。
ふと気が付くと、気配を消して私の背後になっていたエルウッドさん。そういうドッキリは趣味が悪いぞ(コラッ!)
「止めとけ!」
尚もエルウッドさんはそう言うと、私の正面に移動して今まで見たことの無いようなおっかない顔でまた言った「もう止めとけ!」と。
「なっ、なっ、なっ、何を言ってるんですか、全然大丈夫ですよ、まだまだこれからですって」私はエルウッドさんに懇願するかのように釈明をする。
「たったの三日で80万以上溶かして、大丈夫もへったくれもねーだろ!」とエルウッドさん。
「なっ、なんでその事知ってるんですかっ!!」と思わず口が滑ってしまった私。
あっと思ったときには遅かった。
「やっぱそうか……」と言って頭を押さえてため息をつくエルウッドさん。
あっ、あっ、墓穴掘った?私、今?
それでも私は必死に抵抗する。
「だっ、大丈夫ですよ、エルウッドさん、こういう事もあろうかと思って、お金借りる用意してましたから。こっちの世界ではクレジットっていうんですよ。みんなやってるから安心してください」と私。
すると……「そんな、涙と鼻水垂らして気付かない人間の言っていることなんか信用出来るわけねーだろ!!」とエルウッドさん。そして、エルウッドさんは店員さんからおしぼりをもらうと私に渡してくれた。
暖かいおしぼりを顔に当てた瞬間、私の中の何かが切れてしまって、涙がポロポロと止まらなくなってしまった。
「毎月10万入るのなら、それでどうにかすればいいじゃねーかよ。とりあえず、その仮想通貨とか先物取引とかいうのはもう止めとけ」とエルウッドさん。
でも、私はエルウッドさんのその提案を首を振って必死に拒否する。
「だめです、エルウッドさん、だめなんです。このお金払ってしまったら『デポ吉』君、返さなくちゃならないんです」と私。
エルウッドさんは、はぁ……と深いため息をついてから、「俺はな、サファイヤ。ナジームと違って、仮想通貨とか先物取引とかそういうのにはからっきしだけれどよ……バクチで穴開けてケツに火が付いた人間がどうなるのかは嫌って程見てきたんだよ。前の職場でな」とエルウッドさん。
「でも……、でも……」私は子供のように必死にだだをこねる。
「もう、終いだサファイヤ。今ならまだやり直せる」とエルウッドさん。
「嫌です。もうやり直せません。だって、『デポ吉』くん、やっと私の事覚えてくれて、「おはようございます。サファイヤさん、今日もいい天気ですね」って言ってくれるようになってくれたんですよ」
私はどうにかそう言うと、おしぼりを顔に当てて泣き出してしまった。
「ふぅ……」エルウッドさんのため息が聞こえる。
それから私は一体どれくらいの間泣いていたのだろう。知らない人が見たら別れ話を拗らせたカップルにしか見えないな……なんて冷静に思えるようになったくらいの時間は経っていた。
すると……バサッと私の前に何かが置かれた。
私はおしぼりの間からその何かを見てみると……福沢先生と目が合ってしまった。よくよく見ると、私の前には10枚はくだらないお札が置かれていた。
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