クォーターエルフの憂鬱 その4
「ねえねえ、ノエルさん、見てください見てください、コレ」といって私は『グランド デポ』で新しく始めたサービスの『レンタルガレージ』のチラシを見せる。
「なんだい、コレ?」とノエルさん。
「ノエルさん、ちょっとコレ、見に行きましょう!!」と私。
「へっ、見に行くってどこに?」
「こっちこっち」私はノエルさんの手を引っ張って、『グランド デポ』の第二駐車場の場所に向かう。
……五分後、
時間がもったいないので駆け足でやって来た。私達は第二駐車場の隣にある『デポ ガレージ』の前にいる。なるほど、コンテナの大きさはいろいろあるんだ。
「な……なんだい、これは、サファイヤちゃん?」とまだそれが一体何だか分からない様子のノエルさん。
「これはレンタルガレージっていう、レンタルできる物置兼作業場みたいなものなのですよ」と興奮を抑えきれない私。
「う、うん……」とまだ要領が得ないノエルさん。
「だ・か・ら、ここ見てくださいここ」と私はチラシをノエルさんに見せる。
「私書箱サービス、宅配ボックス付き?」
「はい、ですから、ここを借りれば、この場所で荷物が受け取れるようになるんですよ!!」
「ええっ、ってことはだ!!」
やっと私の言いたいことが伝わったのだろう。目を真ん丸にしてノエルさん。
「はい、ここのレンタルガレージを借りれば、あの『コンパウンドボウ』は手に入りますよ!!」
「マジかー、サファイヤちゃんスゲーや、やったー」と気が付いたらレンタルガレージの前で二人して抱き合ってはしゃいでた。
と、思わず我に返って恥ずかしさから固まる二人。
「あのゴメンね」とノエルさん。「いえ、私こそ」
すると、通りかかった老夫婦のおばあちゃんが「若いっていいですねー」と言って横を歩いているおじいさんの手を握った。
「「ただいまー!!」」と私とノエルさんは時間になったので秘密基地に帰って来た。
「おう、お帰り、サファイヤ、どうだったか?」と倉庫の掃除をしながらエルウッドさん。
「なんかすげー弓、買うんだってー?」と筋トレをしながらベイルさん。
「ますます、私達のパーティーの戦力が上がりますねー」と難しそうな本を読みながらナジームさん。
「はい、やっと、その弓が買えそうなところまで来ました」と私。
「なんだよー、まだ買えてねーのかよー」とエルウッドさん。
「すまんな、エルウッド、手に入れるにはちょっといろいろ手続きが大変なんだよ、今度の武器は」とすまなさそうにノエルさん。
「あー、いい、いい、いい」と掌を上下に振るエルウッドさん。「予定よりも大分早く先に進んでるし、お前のその新しい武器が手に入るまで、ちょっと俺達も羽を休ませてもらおうと思ってたところなんだよ」
「あー……なんか、悪いな、エルウッド」
「気にすんな、気にすんな、こっちこそ、いい休みがもらえたんだから」と、なんだか途端にリーダーらしい立ち振る舞いをするエルウッドさん。いや、それとも、パーティーの中で一番仲のいいノエルさんだからかな?今度時間があった時、二人の出会ったお話でも聞かせてもらおう。
と、その前に、「はーい、みなさんーお土産買ってきましたよー」と今回は大盤振る舞いで『グランド デポ 東京幕張店』特製のデポ寿司セットの『夢』、6人前でお値段6,480円なり!!
「やっほーい!!」とジャンプして喜ぶエルウッドさん。そして、「これ毎日食べられるんなら、この先ずーっと休んでてもいいぞー」と。
いやいや、流石にそれやったらあっという間に破産です。
「いいんですかね、こんな毎日ご馳走いただいても」と申し訳なさそうにナジームさん。いえいえ、ナジームさんにそう言っていただけるだけでサファイヤ感激でございます。
「いやー、この寿司っての、体にもいいんだろ。これ食べた次の日は体の調子がいいんだよなー。わりいな、サファイヤちゃん」とベイルさん。
「あーそうだそうだ、もし足りなかったらいなり寿司も買ってきたんで、よかったらどうぞ」と私。
すると、「ハイお茶!」と何も言わなくとも、エルウッドさんがお茶を持ってきてくれた。
ふっふっふしめしめ、エルウッドさんお茶入れ係り計画は着々と進行しております。
…………一週間後、
その後、何度かの『グランド デポ』での書類のやり取りと、『コンパウンドボウ』の販売元とのメールのやり取りを終え、ついに、ノエルさん念願の『コンパウンドボウ』の受け取りを済ませることができたのだ。しかもタイミングよく宅配業者さんにも直接会えた。
私とノエルさんはレンタルガレージの中で組み立て方法のDVDをみながらなんとか組み上げる。
そしてついに21世紀のこちら側の世界の技術粋を集めて作られたチートウェポン『コンパウンドボウ(レーザーポインター付き)』が私達の手に入った。
もちろんここでは試し打ちなんかできないからすぐに『グランド デポ』を解いて、あちらの世界の倉庫に戻る。そして早速みんなに見せた。
「うわ……写真で見た以上に実物はえっぐいな」とエルウッドさん。
「こ……これ、いったい、どうやって打つんだよ」とあまりの複雑な仕組みに見てるだけで頭がこんがらがっちゃったベイルさん。
「これは……見ただけで、相当な武器だと分かりますね」といたく感心した様子のナジームさん。
「ってか、なんだこれ、なんでこんなにいろんな部品が付いてるの?」と首を傾げながらエルウッドさん。
では、早速試し打ちに参りましょう!!
というわけで、前回のナジームさんと同じようにみんなでぞろぞろと倉庫裏へやって来た。
とりあえず、30m先の木を狙って打ってみると……「スコーン!」と小気味いい音を立ててど真ん中に突き刺さる矢。
けれども矢が木に命中したことよりも、この『コンパウンドボウ』の複雑な動きに注目する。
「なんだこの長い棒は」とエルウッドさん。
「これはスタビライザーといって、これがあると弓を引いたときにバランスが取れて安定するんだよ」
「はへー、あっちの世界の弓はすげーんだなー」とベイルさん。
「なるほど、弓を引ききると、一旦この滑車のカムが回って引っ張る力が要らなくなるのですね」とナジームさん。
「おまえ、見ただけでよくわかったなー。そうなんだよ、そのおかげで標準を合わせたまま今までの弓よりも安定して狙い続けられるんだよ」と感心した様子のノエルさん。
「このボタンは何よ?」とエルウッドさん。
「これはレーザーポインターと言ってこのボタンを押すとレーザー光線が出て的に命中させる時の目印にするんだよ」
「へっ、じゃあ、俺が持っているアレをこれに付けてるのか」
そういや、エルウッドさんもレーザーポインター持ってたな。やっぱ、男の人にはレーザー光線って魅力があるのかな?どうなんでしょうかね、ナジームさん?
「じゃあ、これ、ちょっと見てろよ」とノエルさんはエルウッドさんを自分の後ろに立たせて拡大鏡スコープをのぞかせる。「ここ、この中心にレーザーポインターが当たってるの見えるか?」
「おう、分かる分かる」
と、次の瞬間、ピシュッ!と矢を放つと、そのレーザーポインターに矢が刺さる。
「うわっ、すっげーなーオイ!!」とノエルさん以上に喜ぶエルウッドさん。
なんかこの二人のやり取りを見て、なんとなくだけど二人の仲の良さが私にも分かるような気がした。
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