秘密基地へようこそ その5
エンジンがボンボンかかっているチェーンソーを持ちながらベイルさん。
「えーっと、じゃあ、この後って」
「はい、とりあえず、練習もかねて、この倉庫の裏手にあるあの邪魔な木、切っちゃいましょうか」と私。
「オッケー、サファイヤちゃん、じゃあ行くぞー」
ベイルさんはそう言うと、てきぱきと倉庫の裏手に生えていた2m程の木の枝を切り始めた。
やっぱ、チェーンソーってすごいなー。この前普通のノコギリで切った時にはあんなに時間がかかったのが嘘みたいだ。
スパンスパンと小気味よく枝を切り落とすベイルさん。すると、あっという間に木の幹も切り始めた。
「はへー、すっげーなー、チェーンソーって」と感心しきりのノエルさん。
「いやー、確かにこれを武器として使えるようになれば、私達パーティーの戦力も一気に上がりますね」とうんうんと頷きながらナジームさん。
そして、さっきからナジームさんが枝打ちしているのをむずむずしながら見ている見ているエルウッドさん。
「なあ、サファイヤ、あれ、俺にもできないかなー」とそわそわした様子で聞いて来た。
私はにっこり笑って「ああん!指切り落としたって知んねーからな」とドスを聞かせて脅してやったら、とっても静かになりました(ウフッ
そんなことをしている間に、「おーい、サファイヤちゃん、さっきの木全部切っちゃったけど、どーするー?」とベイルさん。
あらあら、流石はベイルさん。こういう事は得意なのかしら。今度ちょっと、一緒にこの廃屋のリフォーム計画を話し合いませんか?
そんな感じであっという間に倉庫の周りの邪魔な木を全て切り倒したベイルさん。
チェーンソーの扱いにも慣れたということで、最後の方にはエルウッドさんに教えて、うちのリーダーも念願かなってチェーンソーを動かせましたとさ……ってか、あんなへっぴり腰じゃあ、おっかなくって、絶対に一人じゃ貸せやしませんからね!!
すると、せっかくなんでって、切り倒した木材を集め、てきぱきと斧で薪を作るベイルさん。
ある程度の大きさにカットしたら、後はしばらく乾燥させて、アニータさんの宿にあげればいいかな。
……翌日、
「くらえ、チェーンソーロンド(輪舞)!!」と言ってベイルさんがコマのようにクルクル回りファイヤーウルフの集団に襲い掛かってゆく。
「あーあーあーあー、ちょっとは手加減しろよーデニスー」とドン引きした顔でノエルさん。
「モンスターとはいえ、流石にちょっと……同情します」と目の前で十字を切るナジームさん。もしもし、あなた確か僧侶でしたよね。
「なーなー、サファイヤ、サファイヤー、アレ俺にも、一本買ってくんねかなー?」と思い上がりも甚だしい、ちっとはテメーの分を弁えろって感じのエルウッドさん。
あんたは魔法使い!戦士でも武道家でも何でもないの。
体力的には一般ピーポーとどっこいどっこいの黒魔法使い。
あんなもん振り回してたら、ものの1ターンでギックリ腰になって使い物にならなくなるでしょ!!
さらに……「挽肉にしてくれるわぁぁぁ!!」といつもの決めセリフを言って、ホントに有言実行する我らがパーティーの大黒柱。とどまるところを知りません。
でも……アレを渡した私が言うのも何なんだけどさ、流石にちょっとオーバーキルが過ぎませんことベイルさん。可哀そうにほら、後ろの方のファイヤーウルフ、服従の格好になってお腹を上に向けてますよ?
「はっはっはっは、口ほどにもない奴らめー」と今度はぶんぶんとチェーンソーを振り回し、残りのモンスター達を撫で切りにする。
あんなに上手にチェーンソーを扱えるのは、私の知ってる限りだと、最近巷で大人気の「チェーンソー○ン」さんか、13日のジェイソンさんくらいですね。サファイヤびっくし……
「おれ、ちょっと、気分悪くなってきたかも」と口元を抑えよろよろと岩場の影に行ってしまったノエルさん。大丈夫ですかー。
「わたしもちょっと、席を外します」と言って、青ざめた顔をしたナジームさんもどっかに行ってしまった……
残った私とエルウッドさんだけがベイルさんの大虐殺の目撃者となっている……ウッ、私もちょっと席を外そうかな。
すると……「なぁ、サファイヤ、なんか今日さ、ハンバーガー食いたくなんね?」とエルウッドさん。
お前、マジか………と思ったその時、♪ピロリロリンとレベルアップの音が聞こえた。
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