秘密基地へようこそ その4
「8……7……6……5……」
みんなのカウントダウンの声が聞こえる
「4……3……2……1……」
唾をゴクリと飲む声が聞こえる。
「ゼロッ!!!」
と同時に、ベイルさんがリコイルロープを一気に引っ張る。
すると、「ブロロォーン!!」と発電機のエンジン音が気持ちよく吹き上がる。
その途端、繋がれたLEDランプがパッと点灯すると、
「「「「「ヤッター!!」」」」」とみんなの声が一斉に上がった。
私はついにこの世界に『電気』を持ってきたのだ。
ここまで来るのにいろいろ大変だったんですよ、ちょっと話を聞いてくれませんか?
あちらの世界の記憶が戻るにつれて私にはどうしてもやりたいことが一つあったのだ。
それはこの世界に電気を持ってくることだ。
もしかしたら、それは、この世界のどっかで既に発明されてるのかもしれないが、少なくとも、今現在私の住んいた街でも、そしてこのリュージュでも電気は発明されていない。
その上、街の明かりは、大半は松明とロウソク、そして一部は魔力のマナによって照らされている。
確かにナジームさんにお願いすれば明かりをつけてもらえるけど、それずーっとお願いするわけにもいかないじゃないですか。それに、LEDライトを電池で灯し続けるのもコスパ悪いし……そんなわけで、この廃屋だった倉庫を借りれると決まった時から私は発電機を購入したいと思ってた。
そして、発電機を購入するためにはまずガソリンです!!
そんなわけでガソリンをこちらの世界に持って来たかったのですが、流石にアニータさんの家の中にガソリンを置いておくわけにはいかないでしょう。かといって屋外に隠して置くってのもちょっとねー。
というわけで、この前からベイル達にお願いして、倉庫の脇に危険物を置いておく物置を作ってもらったのですよ。これで、ガソリンとかガスボンベとかを安心(?)して保管して置ける。まあ鍵はしっかり掛けますけどね。
そして、『グランド デポ』にあるガソリンスタンドでガソリンを購入する前にまずはガソリンの携行缶を買わなくてなならないのだ。
あちらの世界でもいろいろと法律が厳しくなっているので、ちゃんと『グランド デポ 東京幕張店』で20リットル入りの真っ赤なガソリン携行缶3,300円(デポポイント8%バック)とそれを運ぶための台車8,555円(耐荷重 250kg)を購入してから、台車を買ってゴロゴロと転がしながらグランドデポのガソリンスタンドで今日の朝購入したのですよ。
というわけで、残り時間は結構余ってましたけれど、そんなガソリン持ち運びながら店内で買い物何てできませんからさっさとこちらの世界に戻ってたのです。
そして、あらかじめ購入しておいた発電機にガソリンを入れて、それが今!!ということになります。
とりあえずエンジンが動いている間は900Wの電流が発生するらしいのですが、今のところLEDランプ以外は使う予定が無いために、余ったコンセントにはポータブルバッテリーを差し込んで、これは後でアニータさんの宿に持って行こうと思っている。なかなか賢いでしょ(ウフッ
そして何より、今日試したかったことは、これから始まるのだ。
私は電気の灯った倉庫の中に1リットルほど別容器に移したガソリンを持ってきて、慎重にエンジンオイルを1/50の比率になるようにまぜまぜする。
そして、そのエンジンオイルを混ぜ混ぜしたガソリンを、チェーンソーに注入したのだ!!
「ベイルさーん、準備完了ー!!」
すると、みんながわらわらと集まって来た。
「ほほーう、これがベイルの新しい武器の『チェーンソー』か」と新品のチェーンソーを見ながらエルウッドさん。
「ってか、見ただけで禍々しいオーラがでてんな、これ」とおっかなびっくりチェーンソーを指先でちょんちょん触るノエルさん。
「なるほど、これがサファイヤさんがおっしゃってた『チェーンソー』という武器ですか。確かにこれを使えるようになれれば、我がパーティーの戦力は大幅アップ間違いなしです」とナジームさん。
……まあ、正確には武器ではないのですが。
そして、「じゃあ、サファイヤちゃん、このチェーンソーの動かし方って、発電機と一緒でいいんだな?」と恐る恐るベイルさん。
「はい、ちゃんと周囲に人がいないか確認してから、エンジンをかけてくださいね」と私。
「じゃあ、とりあえず、いったん外に出ましょうか」
「「「「おうっ!」」」」
「では、よろしいですか?」
「「「「はい!」」」」とみんな。
「まず、ベイルさん、皮手袋、セーフティーゴーグルは大丈夫ですか?」
「ヨシッ!」と指さし確認のエルウッドさん。
「大丈夫だよ、サファイヤちゃん」
「では、まず最初に、パージャーポンプを5回ほど押してください」
「これでいいんだよな」とパージャーポンプを指さすベイルさん。
「はい」
キュッ、キュッ、キュッ、キュッ、キュッと5回しっかりとパージャーポンプを押すベイルさん。
「パージャーポンプ ヨシ!」とエルウッドさん。
これで、エンジンの中心にガソリンが行きました。
「はい」
「そうしたら、スイッチをオンにしてください」
「はい」といってスイッチを入れるベイルさん。
「スイッチ ヨーッシ!」とエルウッドさん。
「そうしましたら、次はチョークを引いてください」
チョークを握りこっくりと頷くベイルさん。
「チョーク ヨッシ!」とエルウッドさん。
では、次に歯がいきなり動くと危険ですのでブレーキをしっかりかけておいてください。
「わかった!!」と言ってベイルさんはチェーンソーのブレーキをしっかりと引いた。
「ブレーキ ヨーッシ!!」
「そうしましたら、足でしっかりとチェーンソーを地面に固定して、リコイルロープを一回ゆっくりと引いてください」
「固定 ヨーッシ!、リコイルロープ ヨーッシ!」
「ではリコイルロープをちょっと引いてテンションが掛かっているのを確かめてから、一回初爆を起こしてください」
「わかった」
デニスさんはそう言って、リコイルロープを引くと、一瞬ブロロンとエンジンがかかったのが確認できた。
「初爆 ヨーッシ!!」とエルウッドさん。
「では、チョークを戻して、リコイルロープを引いてエンジンをかけてください」
「オッケー」
そして、「エンジン 始動!!」とエルウッドさん。
それと同時にリコイルロープを引きチェーンソーのエンジンがブロローンと掛かった。
「ヨーッシ!!」と今日一番の大声でエルウッドさん。
さっきからヨシヨシヨシヨシうるせーなー、言っちゃ悪いけどあんた現場猫みたいだぞ、エルウッドさん。
ともかく、チェーンソーが無事始動したのだ。
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