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一般人以上、勇者未満  作者: 紅月
第三章:カロン王国
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3-16

相当久しぶりの投稿になりました。

なので今回は簡単にあらすじを書いておきます。


 ヴァダリアに召喚された勇者が旅立つ頃、ナギとニミウス。二人の人間がヴァダリアで出会った。二人はどちらも追われる身であり、ミルフィアに登録した後隣国であるカロンを目指す。

 たまたま出会った優明、優華、明華とともに首都エリクシナに住むエンテンシア男爵の屋敷でお世話になることになった。特にクエストを受けるでもなく二人は軽い気持ちでミルフィアの大会に参加することにした。

 大会直前、ミルフィアの練習場で練習していた二人はある女性に声をかけられた。


このあらすじは次回更新時に消滅すると思います。

 彼女たちはそのチーム名を『蒼空の獅子』と言った。全員が風属性を『纏い』まで使えるのだとも言った。

「普段はこの国の山の方で活動しているんです。あのあたりは魔物が意外と多くいますから、厳しいですけど稼ぎにも腕を磨くにもいい場所なんです」

「本当は皇国の方にいった方が稼ぎがいいのかも知れないけど、俺たちの実力を考えると、なあ?」

「誰かさんが特攻して無駄な怪我を増やしてるからなー」

「言うじゃねーの。いっつも俺の後ろにいるだけのリーベル君」

「お前が特攻したせいで隊列崩れた時のフォローは俺がやってるんだけどねえ、ジノフ」

「やるかあ!!」

「かかってごっ」

 自身のチームについて説明を始めた彼女の言葉に割り込んだ二人。そんな喧嘩を始めそうな勢いの『蒼空の獅子』のメンバー二人に雷が落とされた。落とした人物はニミウスに説明していた女性とは別の女性。雰囲気はどことなくナギに似ているような感じがするが、ナギよりも大人の女性である。切れ長の瞳は茶色。

「すまない。このバカどもが迷惑をかけそうになった。ワタシは『蒼空の獅子』で魔術師をしている。リッテナーヴァ・キュイフェだ」

 そう言って差し出された手をニミウスは握り返した。リッテナーヴァはすらりと背が高い。それに加えて、中性的な顔立ちとスレンダーな体型。男装の麗人と言うのがしっくりくる。声を聞いてみなければ男性だと思ったかもしれなかった。

「ニミウスです」

 ニミウスも名乗り、ナギも名乗る。家名を名乗らなかったことを不思議に思われたようだったが、二人は聞かれないのをいいことに黙っていた。

 『蒼空の獅子』の残りの面子も名乗る。喧嘩を始めようとしていたのがリーベル・ジェクソンとジノフ・アネイス。リーダーはニミウスに声をかけた彼女、エテノーラ・アインライ。以上四名で『蒼空の獅子』のメンバーだそうだ。四人という人数は少ないと思われがちだが別に珍しくはない。むしろ十人を越える人数でチームを組んでいる方が珍しいのだ。

 ミルフィアは一つのチームに依頼を独占されることを避けるために、一つのチームが同時に受けることのできる依頼の数に制限をかけている。チーム同士が依頼達成のために組むことはあれど、それらが一つのチームになることはない。一般的に前衛二人、後衛二人、回復役一人の五人チームが基本とされているが、後衛と回復役を兼ねることが多いので四人チームも多い。現在この場にいるチームのほとんどがそういう構成だろう。

「ところでどうしてあたしたちに声を?」

 ナギが出した疑問に四人は答えなかった。否、彼らが唖然としているのを見るに言葉が出なかったのだろう。

「あの、あなた方は『黒と銀』ですよね?」

 慣れない呼び名ではあったが二人は素直に頷いた。

 『黒と銀』というのはエントリーするときに受付の人からチーム名の登録を求められたときにその場で決めたもので、二人の髪の色に由来している。

 二人揃って咄嗟に気のきいた名前を思いつけなかったのだから仕方がない。チームメンバーに変更があればチーム名の変更ができるが今は結構気に入っているしメンバーが変わる予定もない。

 なんにせよ、この呼び名はナギとニミウス、二人のことを指している。そんな二人を見てジノフが呆れたようにため息をついた。

「ひょっとして、対戦表見てないのか?」

「対戦表?」

 ナギが首をかしげる。なにも知らないと言うようなその態度にリーベルが大笑いした。何がおかしいのかを聞くよりも先にリッテナーヴァが教えてくれた。

 彼らがナギたちと一回戦に戦うチームなのだそうだ。

「対戦表はミルフィアの掲示板に貼ってありますから見ておくといいですよ」

 笑いをこらえるリーベルをたしなめながらエテノーラが教えてくれた。エテノーラは初戦の相手が自分たちであることも二人に教えてくれた。

「それで、あなた方の腕前を知りたくて声をかけたんです」

「でもよ、遠目に見てたけどお前ら絶対弱いだろ。大会直前に纏いの練習してるやつなんて初めて見た。わざわざ手合せを願い出る必要なんてなかったんじゃないの? ノーラ」

 今のはさすがに言い過ぎだと判断したのか迷わずジノフがリーベルの頭をたたいた。リーベルの方はなんでそんなことをされたのかわからなかったのか頭を抱えている。

 ナギはその言葉にむっとしたが何も言い返さず、強く杖を握りしめた。

 はじめはお金を手に入れるつもりだったけれど、それはエントリーしたその日にルルに嫌になるくらいに説明してとんでもないことをしてしまったと思ったのだ。エントリーしているのは星三(トリプル)以上ばかり。たまに星二(ダブル)も出るそうだがそういう時は大会で一定数勝利することをランクアップの条件にしてある依頼を受けるときだけだそうだ。

 ここ数日付き合ってもらっていたがニミウスは強いことをナギは知っている。武術は当然だが魔法の使い方も自分以上。それに周りにいる人たちもだ。魔法と武術、どちらかが劣ったとしてもどちらもできる人ばかりだ。リーベルの言葉はそれを自覚していたナギにとってはつらい言葉だった。

 一方、ニミウスの方は特に何も思わなかった。自分たち、否、ナギが弱いことなんて最初からわかりきっている。自分はまだいい。この辺に今集まっている人くらいのレベルには達しているつもりだから、どうでもよかった。

 でも、今、努力しているナギを侮辱するような発言は許せなかった。それは昔、自分の師匠にきつく言われたことでもあった。

「そうか。そうだよなー」

 ニミウスの軽い返事を聞き、それが不快感の表れだと気付いたエテノーラがあわてて謝る。今のは全面的にリーベルに非があるのは誰に見ても明らかだった。

「す、すみません!! 私の方からもきつく叱っておきます」

「少なくともあんたらには勝つよ。絶対に負けたくなくなった。試合いつだっけ? あ、いいや。上で聞くし、行くぞナギ」

「え、あの。え?」

 もともと持ってきていた荷物は自身の武器だけだったので二人はあっという間に『蒼空の獅子』のメンバーから離れていく。

 残されたエテノーラはおろおろし、ジノフは面白そうにかつ挑発的に笑い、リーベルはまだたたかれた理由を考えていた。

 リッテナーヴァは笑いをこらえているような微妙な真顔をしながらエテノーラの肩をたたいた。

「いつもいつも、大変だな……」

「それもこれも、あなたのせいじゃないですか!! リーベル!!」

「ええ!? 俺?」

「まーまー、ノーラ。あいつらが俺らに勝てるとは思えないんだから気にしないでおこうぜ、な?」

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