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一般人以上、勇者未満  作者: 紅月
第三章:カロン王国
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3-4

 次の日の朝。すぐさまミルフィアに向かって大会参加の旨を伝えると、その場にいた人たち全員に大笑いされた。いろいろ言われたが、一言にまとめると、おまえらみたいな下っ端が出たところで勝てないし、恥さらしだからやめておけ、との事だった。

 もちろんそれぞれに目的を持っている今の二人にはどこ吹く風。勝手に言っていろ、という感じにさっさとその場を後にして、レイスの館へと戻った。

 さて、特訓しようと決意したところ一つの問題が存在していた。

 それは特訓するための依頼を受けることができないということである。

 実力をつけるのならば、理論を学び、武術の方をなぞるのも大切だろうが、時間がない場合は実際の戦闘に参加するのが一番である。しかし、この国ではそういう状況になるような依頼はあまりない。あるにはあるが、長距離の移動の際の護衛が多く、大会の開始に間に合わない。

 これは、王国に魔物が現れない、ということが大きい。国内の移動では魔物と遭うことなどないのだ。遭ったとしたらそれはとてつもなく運がなかったというくらいである。そんな確率を相手に護衛を雇うということはほとんど無い。

 また日数的に、首都内でとなるとほとんどがお手伝いのような内容になる。それではとてもじゃないが実践とは呼べない。

 なので、二人はレイスに頼み、優明やルルの手伝いをすることを条件に邸の庭の使用を許可したのだった。優明は朝に仕事が集中しているため、その間の明華と優華の面倒を見ること。ルルからは夕方に買い物に行ってもらうことを頼まれているので、二人が特訓に使える時間はそんなに多くない。


「というわけで、現在の実力をチェックしたいと思う!!」

「わかりました!!」


 現在は昼食後。二人はニミウスの部屋で話し合っていた。すぐに実践に移るよりも、まずは互いの実力チェックをしておいた方が後々困ることが少ないだろう、というニミウスの意見にナギが従った形であった。

 まずはナギから。


「あたしは、魔法が得意です。というか体術はほとんどやっていません。体力もそこまでありません。

 使える属性は風と、水と、雷。あと氷です」

「でもそれって、前衛職としてはかなり理想的な属性の組み合わせだよな。しかも四属性か、珍しいな」

「でも、基本二つと派生が二つなので探せばわんさかいると思いますよ?」


 普通ならば四つの属性を持つというのは珍しいことなのだが基本と派生で四つならそこまで珍しくない、というのがナギの意見である。実際、魔法使いとしては多くもなければ少なくもない。普通から見るとすごくても、魔法使いから見ると普通、ということである。

 続いてはニミウス。


「俺は一応魔法も使えるけど、どっちかというと近接戦闘の方が得意で、武器は剣か拳。

 属性は炎と、地と、雷と闇」

「さっき、言ってたこと覚えてます?」

「え?」


 しばらく考えて、ナギの言っていることを理解するニミウス。


「そう言えば、俺も四属性使えるな……」

「しかも、そのうち一つは上位属性、しかも闇!! 人の身でどんだけレアな属性なのかわかってます?」


 ナギの言うことももっともで、四属性もちというのは探せば沢山いても、その中で上位属性持ちの人間は一気に少なくなる。さらにその中で闇属性となるとさらに珍しい。

 魔物の活動が盛んになっていて、上位の魔物が闇属性の魔法に長けるということを多くの人が知っているので闇属性を使える人はそのことを隠しているのが普通である。現にニミウスもしまった、という顔をしている。


「はあ。これを聞いたのがまだあたしでよかったですよ。他の人に聞かれていたらその場で魔物の手先だと言われて殺されても文句は言えませんよ?」

「……気をつけます」


 ナギはニミウスのことを聞いても何も言わなかった。魔王を倒しに行くという目標を掲げる彼女ならば迷わずニミウスに攻撃をしてきてもおかしくないと思えたのにそれをしてこなかった。


「ナギ。ひょっとして身近に闇属性を使える人がいた?」

「すごい考えですね。その通りですよ。一番の友達です。そろそろカロン(こっち)に着くはずなんですけど……」


 ニミウスが感で言ったことは当たっていたらしい。その友人を心配しているのかナギは少し不安そうな顔になった。

 その友達というのがどのような人物かはわからないが、闇属性を持っていたとなるとかなりつらい人生ではないだろうかと、ニミウスは思った。


「ちなみに、どんな人?」

「ああ、あたしの友達のことですか?

 そうですねえ……」


 ナギは少し悩むようにしてから言った。


「少し無愛想ですけど基本的にいい人ですよ。髪の毛は黒くて目が金色で、黒い服を着ているので暗いところだと目が異様に目立ちますね。

 知らない人が見れば怖いことこの上ないかと」


 ニミウスが首をかしげる。ニミウスはその特徴に当てはまる人物を偶然にも一人知っていたのだ。しかしその人物がナギの友人になるとは思えず、その考えを打ち消した。他人の空似だろうと。

 ナギはニミウスが首をかしげたのを不思議に思ったが何も言わなかった。

 話は少しそれたが、とりあえず口頭での実力チェックは終わったのでこれからどうしようか、ということになった。

 互いの実力は十寿の森で魔物と戦ったときにおおよそわかっている。今回のチェックは確認に過ぎない。じゃあ、これから訓練でもしようか、と立ち上がったところでナギが思い出したように言った。


「そうですよ。ここに来たら武器が欲しいって言ってたじゃないですか」


 そう、ナギは十寿の森で戦っていたときに、自分も武器が欲しいと言っていたのだ。


「なら買いに行くか」


 ルルに買い物ついでに武器を買いたいから早めに出掛けたい、と言うとルルは手早く買い物メモを作って、二人に渡した。


「誰の武器を買いに行かれるんですか?」

「あたしのです」


 ルルはいいところがあったか、としばらく考えていた。そしてルルはいくつかの武器屋の名前を挙げる。


「あとは、『ユイル』という店ですね。ナギさんが魔法を使う方なら行っておいて損はないと思いますよ」


 それぞれの店の地図を渡される。どうやら皇国とちがい、業種によって店が集まっているということはないらしい。

 二人はルルに礼を言って出掛けた。

「書いている最中に「魔法使いなんだから魔具みたいの持っててもいいのに、ナギは何にも持っていない」と愕然とした紅月がいました」

『だから武器を買いに行くの?』

「それもある」

『ということは別の目的もあるということ?』

「らしいよ? なんか「次だ……。次でやっとあいつが出せる」って不気味に笑ってたから」

『……聞かなかったことにしておくわ』

「紅月の手元にノートパソコンが転がり込んできたっていうし、次からはもちょっと更新速度が上がるといいね」

『ということで、また次回のあとがきで会いましょう』

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