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一般人以上、勇者未満  作者: 紅月
第一章:逃走者たち
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1-1 不運と人生の先輩からの忠告と追いかけっこから

 三ヶ月前、救世主を召喚した国、ヴァダリア皇国。国は、救世主を召喚した際に国の内外を問わずお触れを出した。曰く


異世界より召喚した救世主とともに魔王を倒すたびに出てほしい。

三ヵ月後、皇国首都にある皇宮にて審査会を開く。


というもので、この世界には不慣れな救世主の手助け、及び戦闘における共闘といったことができる人材がほしいということだ。

 ある者は救世主と戦うことを夢見て、またある者は魔王を倒すという栄光に酔いしれ、またある者は報酬と皇国内での確固たる地位を求めて首都へとむかった。この物語の主人公である”彼”もまた目的を持って救世主とともに旅をするべく首都へやってきた一人だった。お触れのせいか、もともと首都に住んでいなかったような姿の―鎧を着ていたり、剣を持っていたり―人が首都に入ってすぐの大通りに多くいる。

 首都は皇宮を中心とした円に近い形をしており、回りをぐるりと砦で囲まれている。砦自体は昔からあるもので、北と、南には首都に入るための門がある。門から皇宮へは大通りがあり、大通りもまた、皇宮を中心として東西南北に四本ある。それぞれの四本を繋ぐようにたくさんの路地も存在している。大通りから外れても適当に歩いていればいずれかの大通りに出るので迷う人はほとんどいないという。

 首都、なだけに貧民街はないが、貴族が住む貴族街はあり、首都の西側がそこだ。そのためか、西の大通りにある店が扱っている商品は他の大通りのものとは質が違うらしい。とは言っても、それに手を出せるのはそれなりのお金が必要なため、平民が手に入れるのにはかなり骨が折れるのだが。

 その大通りではもともとある店とは別にマジックアイテムや武器、防具などを取扱う露店も出ている。大通りではないがある程度の太さのある道でも、薄暗い路地でも然りだ。

 かつてないほどの賑わい。

 それが人類の危機である魔王による魔族の侵攻であるというのが残念ではあるが、だが、いま、この賑わいは、否、騒がしさはそれだけではなかった。

 お触れに寄せられてやってきた猛者たちとは別に皇国兵が神経質に二、三人でグループを作り巡回している。


 何でも、皇宮に泥棒が入ったそうだ。

 容姿は黒髪、黒目で、この国ではさほど珍しくもない普通の見た目だ。髪が長かったことから女ではないかと言われている。ちなみに、何を盗んで行ったのかは国民には知らされていない。そもそも、泥棒の話も公にはされていないのだが、そこは、まあ壁に耳あり、扉に目ありで、まことしやかにささやかれている。

 皇国兵のひとつのグループが首都の入り口である門で容疑者が通ったかどうかを確認しているが門番は入ってくるやつばかりで、出て行った者などはいないと答える。そこにフードマントをかぶった一団がやってきた。門番が名前と顔を確認し、通過を許可した。その光景を裏路地の方から見ている影が一人分。

 舞台に登る役者が、そろった。

 さぁ、第一幕の始まりだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「これこれ、そこの若者よ。」


 彼は老婆に声をかけられた。

 顔にはしわがより、腰を曲げ、ひとつに束ねたそれなりの長さがある髪の毛は真っ白だ。声をかけられた若者は振り向き、声の主が自分よりもずっと背の低い相手だと分かると身をかがめ、目線を老婆に合わせる。


「なんだ、ばーさん。」

「おぬしは救世主様に会いに来たのであろう?」

「まぁ、そうだけど。」

「ふむ、おぬしの顔に出会いの相が浮かんでおる。おぬし、ここからしばらく行ったところにある酒場『熊酒』に行くといい。そこで、入り口から三つ目のカウンター席に座るとよかろう。」


 そこで若者は腕を組み、考える。

 世の中にはいろいろなものを『視る』ことができる人たちがいるが、そういう人たちには総じて、雰囲気があるといわれている。老婆の見た目はどう見てもそういう雰囲気のある占い師のものではないし、老婆自身からもそういう雰囲気は感じない。半信半疑どころか無信全疑といったところだろうか。


「いいことが起こるのか?」

「少なくともおぬしの望みへの足がかりにはなるじゃろうて。ああ、そんなに怖い顔をするでない。わしはおぬしの望みなどは知らん。ただ、そうなるだろうことが分かるだけじゃ。」


 若者が自分の望み、と聞いて顔を変えたのを見て老婆があせる。


「ふーん。変わったばーさんだな。ま、いいよ。審査会までまだ日があって暇してたし、ちょっくら行ってみるよ。年長者の意見は聞けって言うのは昔からよく言うしな。」

「うむ、達者での。」


 このときのその若者は確かに暇つぶしのつもりだった。

 しばらく行くと『熊酒』に到着する。

 彼はこの国の言葉が読めるわけではないがかわいくデフォルメされた熊が蜂蜜の入った壷ではなく、酒瓶を抱えほろ酔いになっている看板を見ればここで間違いないことが分かるだろう。老婆に言われたように店に入りカウンター席の入り口から三つ目に座り、適当な注文をする。そこに声をかけられる。


「お兄さん、変わった、というか珍しい格好をしてますね。」

「ん? ああ、おかげでこの国じゃあ少し目立つかな。」


 相手は若者よりも先に店に入っていた少女だった。年のころは若者よりも若い。肩よりも長い髪を片方によせ、高い位置で結んでいる。着ている服はこの国の国民ならば誰もが着ているような伝統衣装のようなもので、黒髪、黒目というこの国ではいたって普通の容姿の少女。ただ、彼女のつり目と、その目に宿る強い意思は若者に強い印象を与えた。

 対する若者の見た目は銀の髪に青い瞳。彼の昔の友人曰く「月色の髪と深海色の瞳」らしい。この国では多くはないがそれなりにいるような見た目ではあるが、黒髪、黒目の人口が圧倒的に多いこの国では彼の見た目は結構目立つ。だが今はお触れのせいか他にも自分のような、とはいかないものの目立つ容姿をしている者はいるので、彼の少し異質な容姿も割と溶け込んでいると思う。

 注文した品が若者の前に置かれる。ただの水割りだが彼はそれを一気にあおるでもなくちびちびと飲む。それを見た少女は、若者が暇だと思ったのか、いろいろ話しかけてきては若者の返事を待つと言ったアプローチを始めた。若者も実際、暇だったので少女の話に相槌を打ちながら水割りを飲む。

 平穏な暇つぶしの時間。少女はしゃべるだけしゃべり、若者は相槌を打って時間を過ごす。


「お兄さん、この国の人ではないみたいですし、救世主様に会いにこられたんですか?」

「ああ。」

「魔王を倒すためにですか?」

「倒す、と言うか……。まぁ倒す、で間違ってはいないんだけどな。」

「? よく分かりませんが……お兄さんは強いんですよね!!」

「何でそんなことを言うんだ?」

「だって、今のこのご時世に、一人でここに来るなんてすごいことですよ?国が出したお触れのせいか、救世主に強力な助っ人がつかないようにとこの首都に向かってくる人たちには魔族が襲撃をかけている、と噂で聞いてますよ?

 ここにたどり着くまでにいくつもの鎧を着た死体を見たって言う人がいっぱいいるみたいですよ。それとも実は連れがいらっしゃるのですか?」

「いや、いないが……。」

「ならやっぱり強いんですね。すごいです!!」


 実際、若者は首都につくまでに魔族に襲われた思い出でもあるのか、少し遠い目をしている。少女は若者の返答を受けて尊敬の念がこもったような目で若者を見つめ話を続ける。

若者からも、彼女に質問する。


「お前は、旅人なのか?」

「いえいえ、生まれも育ちもこの首都です。ですが、旅に出たい、とは思っています。魔族が徘徊していて多少怖いですが、今がちょうどその時ではないかと思っています。」

「救世主の審査会に出てはみないのか?」

「あたしのような未熟者が出ても結果は分かっていますから。」


 そう言った少女の荷物はおそらく術のかけてあるものなのだろう。彼女の持つ肩掛けのバッグはどう見ても容量的にありえない量が入っていると思わされる程の大きさをしている。そういうバッグは結構高い値段で取引されている。

 予想以上に盛り上がる会話。そしてある程度の時間がたつと別れて、それだけで終わりのはずだった。そこに”彼ら”がやってこない限りは。

 少女が席を立とうとしたとき、彼ら―フードマントを着た一団―はやってきた。そして、カウンター席ですっかり空になったグラスをいじっている若者を指差した。


「見つけたぜ!! この裏切り者!!」

「なんで、ここに―――。」

「はっ、おまえのやりたいことを知ってたらここに来ることくらい予想できらぁ!!」


 あせる若者と、その若者を囲むように移動する一団。なぜか少女も一緒に囲まれる。若者ははじけるように立ち上がり、少女も不穏な空気を感じ立ち上がる。


「すみません。あたしはこの人と話していただけで貴方たちに囲まれる理由が分からないんですが。」

「おまえはこいつと話をしたんだろ?仲間じゃないのか?」

「ちがいますよ。こちらのお兄さんとは先ほど出会ったばかりです。」


 少女の至極まっとうな意見を彼らの一人が理不尽とも言える理論で叩き潰す。そして、都合の悪いことは連鎖する。

「約十日ぶりの更新です」

『更新する側にとっては十日は割りと短かったみたいだけど更新を待っていた皆さんとしてはどうなんでしょうね?』

「紅月は2日間くらい更新してないと「まだ更新しないのー」って言うよ?」

『なら、この十日間は読者にとっては長かったのかしら?』

「紅月曰く不定期更新だとはじめに言ってあるからいいんだって」

『さて、話は変わるけど今回は王道ファンタジーものなのかしら?』

「紅月の中では一応ストーリーができてるけど、流れだけを見たら王道かもしれないけど設定は王道かと問われたら分からないみたいだよ?」

『でも、早速主人公がピンチになってるみたいじゃない』

「そこはほら、次の話で助かるんじゃないの?」

『王道ね』

「それにこの話って主人公二人いるし」

『ネタばれじゃない』

「そして紅月がテスト終わってテンション上がっているのでこのあともう一話投稿します」

『話を書き上げるまでにどれくらい時間がかかるかは分からないけど。

感想、メッセージ、アドバイスなどお待ちしております。

あと、失踪の方のキャラ紹介がいるかどうか、というアンケートの回答もお待ちしております』

「それではまたあとで」

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