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一般人以上、勇者未満  作者: 紅月
第三章:カロン王国
19/37

3-3

 信じられないという口調でニミウスは宿がなかったとルルに言うと、ルルはわかっていたかのように(実際わかっていたのだろうが)部屋を用意してありますと二人を部屋に案内した。


「ナギさんはこの隣の部屋になります。食事は先に済ませてしまいましたので今夜はこれだけになりますが……」


 食事は同じ部屋で食べていただけますかと言われて出されたのはパンと具のないスープ。明日の分は明日にならないと作らないらしい。


「いえ、お構いなく。あたしたちの方が迷惑をかけているのですし、ありがたいくらいです」


 ナギは迷惑をかけているせいか小さくなっている。


「どうして宿が取れなかったんだかわかりますか?」


 ルルの質問に二人は首を振る。その顔は全くわからないと言っている。

 意地悪く笑うとルルは少し自慢げに説明をしてくれる。


「この時期はミルフィアが行う闘技大会があるんですよ」


 あっ、という顔をしているニミウスとぽかんとしているナギの顔のギャップが面白くて気を良くしたのか、それとも続けるつもりだったのか説明を続ける。


「毎年、皇国と王国で交互に開かれていますが今年は王国で行われるんですよ」

「ああ!! そういえば一年おきに周りがざわついていましたね!!」


 ナギもその闘技大会の期間のことを思い出したらしく手を合わせて空雅が言ってましたね、と言っている。


「おい、見たことがないのか?」

「だってそういうのを見に行く暇が無かったんですから仕方ないじゃないですか」


 カロンに入るまでの旅の間にだいぶ庶民らしくなっていたのでナギが貴族の娘であると考えていたことを忘れていたが、この発言によってそれを思い出す。


(あ、そっか。貴族の娘がそんなところに行っていたとなると外聞に響くから行かせてもらえなかったのか)

「ニミウスさんは見たことがあるんですか?」

「まあ、何度か」


 ニミウスが一人で勝手な結論を出して、見たことがあるとおざなりに言うとナギは不機嫌そうに頬を膨らませた。おそらく自分が見ていないのにニミウスは見たことがあるというのが気に入らなかったのだろう。

 ルルはそんなナギのことを気にせずに、今年は救世主様の一行からも出場するそうだと言った。

 ナギがありえないことを聞いたというような顔をしたが、ニミウスはそれを聞いて興奮し気付いていない。


「本当か?」

「ええ、いつもならそろそろ始まっていてもいい頃なのですが、まだ始まらないのは救世主様たちの到着が遅いからだと噂されています」


 ニミウスは考えた。もしもこの大会で救世主一行に実力を認めてもらえたならば、彼らの仲間になることが可能ではないかと、諦めきっていた可能性が再び目の前にぶら下がったのではないかと。


「ところでルルさん」

「何でしょうか」

「参加に条件とかはあるのでしょうか。それに優勝したら何かもらえるのでしょうか」

「ミルフィアに所属しているなら誰でもできたと思います。細かい条件はなかったかと。あと優勝したら五百ギリアムが賞金として」

「出ましょう!!」


 ルルの言葉をさえぎって大声で出場を表明するナギ。路銀自体はナギの手持ちがかなりの額として残っているがあるに越したことはないということらしい。

 ルルはこの二人がミルフィアに所属していると知って驚いたようだ。おそらく、ナギみたいな娘が出るという方が驚きだったろうが……。


「ミルフィアに所属してらしたんですか」

「そうです。まだ一度も依頼は受けていませんが……」


 皇国領内にいた頃は国境を越えることに、王国領内に入ってからは優華と明華に付き合っていてほとんど、というか全く依頼を受けていない。

 もし大会に出るとしたら、実力は出場チームの中で最下位に位置づけられるだろうし、優勝も不可能に近いだろう。そんなことも気にせずにナギは五百ギリアム手に入れますよと意気込んでいる。

 不可能だとわかってもらうためにルルはニミウスに説得してもらおうとするが、ルルは気付いていなかった。ニミウスも自身の目的のために大会参加に意気込んでいたことに。


「よし、それじゃあ明日から特訓でもするか!!」

「もちろんです!! 悔しいですが今のあたしではニミウスさんの足を引っ張ってしまいますからね」

「あ、実力わかってらしたんですね」


 ルルの少々手厳しい突っ込みも二人には届いておらず騒ぎあっている。これ以上騒がれると、邸の中の他の人に迷惑がかかると思ったルルがナギを部屋から引きずり出すまでにそう時間はかからなかった。

 引きずり出されたナギは何で邪魔をしたのかと不機嫌であった。だがルルの言い分を聞いてもっともだと納得していた。


「では、そちらがナギさんの部屋になりますから」


 そう言って去って行こうとしたルルをナギが呼び止めた。


「なんでしょう?」

「別に無理してそんな言葉遣いにしなくてもいいんですよ」

「私が無理をしているように見えましたか?」

「見えませんけど……感、ですかね。子供の頃からそういう風に無理して丁寧な言葉遣いをする人たちを見ていたのでそう思っただけです。違っていたらすいません」


 それを聞くとルルはそうですかとだけ言って廊下を歩いていった。

「さて、ミルフィアが主催の大会に出ることになりました」

『救世主も出るなんて、暇ねえ』

「実際、王国の方は魔物の被害があんまりないらしいし、気楽なんだろうね。知らないけど」

『じゃあ気になることの話をしましょう』

「何?」

『ルルって子の口調って実際どうなの?』

「ああー、何でも設定はあるらしいよ。使われるかわからないけど」

『蛇足ね』

「そんなこと言わない。紅月の中ではどうやって話の中で出していこうか悩んでるんだから」

『そう、じゃあもう言わないわ』

「それではまた次回、お会いしましょう」

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