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一寿に生まれて二寿で言葉を覚えて、三寿で友達を得ては四寿で勉学を共にする。五寿でさらに成長し、六寿で生涯の伴侶を得て七寿で子供を得て、八寿で子を育て、九寿で子に看取られて十寿へと向かう。
「こんな話、と言うよりも伝承の方が近いですかね? まあ、どっちでもいいんですけど、とにかくこんな話があの辺にはあったんです。」
そう説明しているのは龍望ではなく、救世主一行を足止めさせたきっかけとなる人物、ナギである。本人はまさか、救世主を足止めしたなんて思ってもいないだろう。
「あった、てのはどういう意味だ?」
尋ねるのは当然ながら彼女の旅の道連れ仲間、ニミウスである。彼らはメグミたちがカロンに向けて再出発した頃には国境を越えてカロンに入っていた。森で出会った男が結構な距離を飛ばしてくれたのだ。
現在はちょっとした丘を登っている最中である。この辺は起伏のあるところが多いが、道は整備されており道沿いにいくつも店があるため通る人は多い。
「昔はあの森を囲むようにして九つの村があったそうですが、今は四寿の村しか無いんです。」
話自体が残っていても、それを覚えている世代がもういないとのことらしい。ナギも古い本を見て知っていただけらしい。何があって、他の村が消えてしまったのかもよくわかっていないらしい。ナギは四寿の村についた時点で記憶に引っかかるものがあったそうだがきちんと思い出したのはついさっきのことで、思い出したように急に話しはじめたのだった。
「かなり昔のことだそうで、あたしが見た本には神の怒りに触れたのではないかと。」
「神?」
「ええ、十寿の森には魂を守る神がいて周りの村はその神を信仰していたそうです。ですが光信仰の神がそれは邪神でありそれを信仰する民は災厄を世界に与えると言ったそうで、制裁を行ったとか。」
「なんか神が絡んでるわりにはどろどろとした話だよな。」
ニミウスの感想にナギも同意する。神というのはもっと器の広い存在だと思っているのだろう。だが、ナギの話が本当だとしたら。
「じゃあ、あの森にいたあの人は……。」
「おそらく十寿の森の神なのでしょう。」
あの男がいなかったらナギたちはあの森で、魔物たちに食い殺されていただろう。感謝してもたりないくらいだ。
丘を登りきったところで強い風が追い風となってナギたちを追い越していく。まるで急げと言わんばかりに。
「ナーギーちゃーん。」
「おにいちゃーん。置いてっちゃうよー?」
前方からかけられた声をうけて、二人は駆け足で丘を降りていった。
「『勇者未満』のPV25000越え!!」
『『世界は』のPVも1500を超えたわね。』
「というわけで今回はそんなことを記念しつつの同時投稿だよ!!」
『興味があったらぜひ『世界は』も読んで欲しいわ。』
「さて、アピールも終わったところで今回の話でもしようか。」
『紅月が書いてないだけというか説明しきれそうになかったから書かなかっただけだけど、皇国の首都から王国へはそこまで遠くないそうよ。』
「どのくらい?」
『徒歩なら五日から一週間。馬車なら遅くとも二日あれば国境を越えることができるそうよ。』
「と言われても、あんまりピンとこないんだよね。」
『それは紅月も一緒のようよ。必死に計算してたから。』
「まぁ、最後の方は面倒になってたんだけどね。ああ、そういえば。」
『なに?』
「二章ってこれで終わりじゃない?」
『ああ、そうね。』
「ここまで読んでくださった方に感謝しつつ今回はここまでってことで。」
『これからもよろしくお願いします。』