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一般人以上、勇者未満  作者: 紅月
第二章:もう一つの魔王討伐隊
13/37

2-5

「だー、もうきりがねぇ!!」


 ジェフが横に薙いだ剣に斬られた魔物が鮮血を飛ばし崩れ落ちる。四寿の村の人たちに頼まれてやってきた森。その名も四寿の森。狼のような魔物がいついているこの森に飛び込んでいったという(馬鹿)を探しているものの見つかるわけもなく、救世主御一行の面子は魔物に襲われていた。

 魔物に襲われているとは言えどそこまで強くない魔物に苦戦する筈もないのだが、数が半端なかった。実際にはそんなものは発見されてはいないのだが、その辺に魔物がわいてくるポイントでもあるのかと思ってしまうほどに、その数が減っているという印象が全くない。


「まったく、雑魚のくせに数ばかりいてムカつきますわ。《風よ》!!」


 仲間(ハンナ)の攻撃にあわせてミールが動く。この辺のコンビネーションはさすがと言えるだろう。風の刃が襲い、あるものはいきたえ、あるものは命あれども体勢を崩したりしているなかをミールが小刀を構え駆け回る。


「でも、この数はやっぱり異常ですね。」


 龍望が呟く。回復魔法に特化している彼は他のみんなほど戦えるわけではないがそんなことを言っている場合ではないようで、魔物の数を減らすことに専念している。

 龍望の後ろ、一番魔物から遠いところにいるのはメグミだ。


「皆さん、下がってください。」

「わかりましたわ。《風よ》」


 メグミの声を聞いてハンナの突風で魔物を牽制しながら全員が下がる。


「《神が授けし十字架は魔を貫き光の洗礼を与えん その身に光宿し闇打ち払え 聖なる十字架(クロス=クロス)》!!」


 メグミの詠唱が終わると同時に空が、白く染まる。森が瞬く。

 空から降ってきた無数の光る十字架が彼女たちに迫っていた魔物に突き刺さる。突き刺さって魔物を塵へと変えていく。それを見てメグミはほっとしたような笑顔を浮かべた。


「成功、ですね。」

聖なる十字架(クロス=クロス)………。」

「すごいですー。一瞬でしたよ―。」


 呆然とする龍望に対してミールはメグミに抱きついて騒いでいる。

 あたりは魔物がいなくなったことで静かになっている。森には一切の影響が出ていない。


「一応わたくしも使えますが、あんなにも高密度、高威力なのは初めて見ましたわ。」


 さすがは救世主様ですわね、というハンナにメグミは照れたように苦笑する。魔法は空気中の魔属粒子に干渉することで発動させるが、上位属性とされる光属性は基本、派生とは違い魔属粒子に干渉せず発動させる。それがとても難しいのだ。

 一応、全部の属性|(闇をのぞく)を使えるハンナだが、光属性はあまり得意とは言えず、使える(・・・)というレベルでしかなく、戦闘中に使えるものではないらしい。一応ではあるが周りにもう敵がいないかを確認する。森に被害は出ていないが、魔物は消え去っている。おそらく光に浄化されたのだろう。


「闇に堕ちしものに光の戒めを。」


 ハンナはそう言って手を組み黙祷する。


「ハンナさんは何をしているんですか?」

「メグミは初めて見るの―?

 光信仰ってわかるー?あれはね―、それ独特のものなんだよー。」

「どうしてですか?」

「えー、あー、それは―………。龍望ー。」


 メグミに説明しようとしたものの度忘れしてしまったミールはジェフを治療している龍望を呼んだ。ジェフの傷はかすり傷がほとんどでミールが声をかけたときにはもう治療は終わっていた。


「ああ、あれですか。

 光信仰ーヨシュネア信仰とも言われますがーでは魔物とは闇に堕ちた人間であると言われているそうです。あの言葉の意味は『闇に堕ちた馬鹿な人間は神から罰を与えられて反省しろ』というものですよ。」

「へぇ。」

「そんな乱暴なものではありませんわ。『闇に誘われ、堕ちた魂よ。神の御心のもと清めの戒めをその魂に刻め。』と言っているのです。」


 大して変わりませんよ。

 いいえ、清めの戒めは罰ではありませんわ。

 龍望の乱暴な解釈に腹を立てたのか、ハンナが食ってかかっている。ずっと続きそうな勢いではあったが、森の向こう、奥のほうから突如、威圧感を感じて押し黙る。


「おかしいですよ。だって、さっき魔物は消滅したはずなのに・・・。」


 光の魔法は魔物を倒すのではなく、消滅させる。それこそ跡形もなく。なのに、この森にはまだ、何かがいると言うのだ。魔物が住み着いて(・・・・・・・・)誰もいないはずの(・・・・・・・・)この森に。まさかとは思うが、先日、四寿の村の少年を助けた二人組みによるものなのだろうか。少年と約束した以上、一応確認しないといけない。意を決して彼らは進みだした。メグミによる魔法に恐れをなしたのか、はたまた、もうこの森に魔物はいないのか、彼らが襲われることは威圧感のもとにつくまではなかった。

 そこは広場。実は広場、と言うほどの広さはないのだけども、これまで木の根などによって不安定になっていた足場が、ここでは平らな地面になっていた。不思議な空間である。森特有の暗い感じがありながらも光が射していて、清らかな感じがする。


「ここはー、なんなんでしょー?」

「空気がいいのは間違いないぜ?」


 ジェフが大きく深呼吸をしている。


「確かに、きれいです。でも、きれいすぎますね。」


 龍望の言葉にジェフは首をかしげる。


「それの何がいけねえんだ?」

「きれいすぎる、ということはここには魔物ではない何かがいるということですわ。」


 全く、という感じに肩をすくめてハンナが説明した。きれいすぎる空気。魔物には作ることはできないし、人にしてもメグミほどの光属性の使い手でないとできないだろう。

 空気がきれいであるというのは、清められているということで、それは魔属粒子すら清められていることを意味する。清められた魔属粒子はなにもしなくても魔物に対して協力な結界になる。

 いったい、誰がこんなところにいるのだろうか、そう思ったのが誰かはわからないが、答えが帰ってきた。というかやってきた。


「何故、ここまで来た?」


 それが言葉を発するだけで地面に叩きつけられるような威圧感に襲われる。すぐに理解できた、これは人ではないと。

「魔属粒子って光属性の影響を受けないのに清めることができるの?」

『その辺のことは二章の章末でやるそうよ。』

「それにしても前回の次回予告もどきは達成できたと言えるのかな?」

『一応できたんじゃないかしら。紅月はさほど気にしてないみたいよ。』

「あー、ちょっとした連絡です。今回から少しタイトルが変わっています。」

『あらすじもね。単純に紅月のミスなのだけど。』

「活動報告のいいネタだって言ってたから詳しく知りたい人はそっちまで。」

『内容に大きな変化はないわよね。』

「てか、改稿しようと思っても紅月にその暇がないし。」

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