表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラストサマー 降りやまない雨  作者: 永山満樹
6/8

降りやまない雨


 「どこから行ってみる?」


 私は少し考え、その漁師の話を聞いてみたいと思った。


 「そっか、じゃあ聞いた住所に行ってみるか?」


 陽太は嫌な顔もせずそう言ってくれた。


 「ねぇ、どうして陽太はこんなに良くしてくれるの?」


 突然の質問に陽太はびっくりした顔をした。


 「普通、そんな事情を聞いてほっとけないだろ」


 そう言って照れた表情を見せた。その表情を見てますます気持ちが膨らんでいった。しかし、この想いは知られる訳にはいかなかった。


 その漁師の家は割とすぐに見つかった。中からお酒の匂いがプンプンしている。どうやら今もお酒を飲んでいる様子だった。


 「どうする?飲んでるみたいだけど」


 そう言って陽太が苦笑する。


 「陽太お願い」


 陽太の背中を押す。私はその後ろに隠れるようにして、家の中に入っていった。


 「お邪魔します。」


 そう声をかけ中に入ると、老人がテレビを見ながらお酒を飲んでいた。

 最初鋭い視線を向けられたが。私達を見る、何故か笑顔になった。


 「おお、兄ちゃん久しぶりだな。元気だったか?」


 どうやら陽太の知り合いの様だった。


 「知り合い?」

 「今日は歩いて来たのかい?」


 私が陽太に聞いた時に、老人は意味ありげにそう言って笑った。


 「まあいい。どうだ酒でも飲むか?」

 「今日は遠慮しとくよ。それより人魚と会った時の話を聞きたいそうだよ。」


 そう言って陽太は私に話題をふる。私はまた細かく事情を話した。

 お酒を飲んではいたが、意識ははっきりしているらしく。真剣に聞いてくれた。

 老人は陽太に視線を移しながら、私の話しに相づちを打つ。


 「誰も信じてないが、わしは昔若い男の人魚と酒を飲んだことがあるんじゃ。」


 「男の人魚?」

 「そうじゃ、只の海水浴の客かと思ったら、なんと魚の胴体を見せよった。わしは間違いなく人魚と出会ったんじゃ。」


 少し興奮気味に老人はそう語った。


 「どこで人魚と会えたんですか?」


 私は男の人魚というのが気になりはしたが。本当に人魚が居るということに衝撃を受けた。


 「どこで?どこでかが良く思い出せないんじゃ、すまんのう。」


 申し訳なさそうに老人は謝った。


 「そんな、沖か浜かだけでも思い出して頂けませんか?」


 しつこく聞く私を陽太が止めた。


 「お嬢さん、本当に申し訳ない。そんな事情ならユタに話してみるといい。」


 老人はそう言って見送ってくれた。

良ければ いいね、ブックマーク、評価


宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ