降りやまない雨
陽太が連れて来てくれたのは屋根のある
パーラーだった。
陽太が注文すると、おばさんがどんぶり
2つと飲み物を持って来てくれた。
「何これ?」
それは細めのうどんのような麺類だった。
「これはこの地方のそばだよ。こんな日は
身体温めないと。」
そう言って麺をズルズルすする。私も同じように食べてみた。
「美味しい。」
私が食べたうどんともそばとも違う、独特の味がしてとても美味しかった。
「うどん?」
「そばだよ」
私が聞くと陽太がすかさず答えた。
ここだけは譲れないという意地のようなものを
感じ、少し怖かった。
「で、これからどうする気?」
陽太はまたこの地方独特のお茶を飲みながら聞いてきた。
「何も考えてない。」
正直に答える。本当に何も考えずにただ海に来て、陽太と出会ったのである。
これからのことは地元の人に聞くしかなかった。その点では陽太と知り合えたのは幸運だった。
「何か人魚のこと聞いたことない?」
「ない」
私から聞いてみるが、素っ気ない一言だった。
「普通、人魚なんて子供のおとぎ話にしか出て来ないよ。」
至極全うな返事だった。少し期待したのだけれど。
「ま、この地方の年寄りは物知りだから聞いてみると何か分かるかも。」
そう言ってにかっと笑う。また胸がときめく。
陽太は何か不思議な魅力があった。
とりあえず年寄りから人魚の伝承を聞こうという話になった。
屋根の外の雨はまだ降りやまない。
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