降りやまない雨
本当に人魚がいて私の病を治せたら。そう思う反面、人魚なんていないと思う気持ちもあった。
数十分そうしてたと思う。そんな私に声をかける人がいた。
「あんた旅行者?こんな時に?まさか自殺なんてしないよな?」
立て続けの質問に私はびっくりして、オブジェのそばから後ずさりした。
「別にナンパとかと違うから。あんたが相当思いつめた顔してたから、心配で声をかけてみただけ。」
そして私より少し若そうな彼は、陽太と照れた様子で名乗った。
傘を叩く雨の音だけが、2人の間に流れた。
「詩織」
名前を思い出す様にゆっくりと、私は呟いた。
「そっか、でここで何してるの?」
陽太の質問に私は思い切って全てを話すことにした。他に宛もなかったから。
誰もいない海。陽太は私の話を真剣に聞いてくれた。
「今は身体大丈夫なの?」
心から心配してくれている様子だった。
「うん、今は大丈夫だよ」
はっきり言って一目惚れだった。しかし自分の何時とも知れない身体が悲しかった。
「とにかくここを離れよう。雨降り止みそうもないしさ。」
私は頷くと陽太の後をついて歩く。心臓の鼓動がいつもより早い。
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